BIM未来図 船場(下)

ROE向上としてのオフィス投資 
BIM+AIの価値高める

 船場の小田切潤社長は、マーケットの変化をしっかりと捉えている。「近年は急速な人材流動化の流れを受け、企業による働く場への投資が伸びている。米国では在宅勤務を取りやめる企業も増え、大手企業のM&A(企業の合併・買収)投資と同様、人的資本への投資としてのオフィス空間への投資は今後さらに高まりを見せるだろう」と予測する。

(左から)船場の大倉氏、小田切氏、神戸氏

 さらに「オフィス投資は一般的にCAPEX(資本的支出)の比率がSG&A(販管費)より多く、P/L(損益計算書)負担では減価償却費が主となるため、大手上場企業が日々求められるROE(自己資本利益率)の向上を推進することも期待できる」とも考えている。内装分野の国内マーケット規模は1兆8000億円といわれる中で、グローバル展開も含め市場を開拓するためには「BIMをどう生かし切るかが問われる」と焦点を絞り込む。

 その軸に位置付けるのが「BIM+AI(人工知能)」という両者の関係性だ。

 例えば、あるクリエーターはBIM+AIを使っても70点の成果しか生むことができず、残り30点は人によるデザイン力が必要とし、別のクリエーターは人とAIの相乗効果で130点の成果を生むことができると考えている。「われわれは内装のプロフェッショナルであり、30点分を埋めるデザイン力だけでなく、130点の成果まで持っていくクリエイション力も持たなければならない。BIM+AIを使いこなす中で、価値としての本質をどう高めるかが重要になってくる」

 社内では「BIM Level 5(BIMレベル5)」からの逆算したBIM経営が打ち出されたことで、社員が自らの仕事や役割を改めて見つめ直し、価値創造に向けてどのように取り組むべきかを考える意識が広がり始めている。最前線に立つBIM CONNECT本部の大倉佑介戦略企画部部長は「パートナー企業と連携する中でも、関係者がBIMによる価値を意識するようになり、BIMを基盤にAIを補完的に活用する提案も出始めている」と明かす。

 2024年に発足したBIM CONNECT本部は、BIMで各部門をつなぐ役割として活動してきた。本部長の神戸暁上席執行役員は「これまでは社内への浸透がミッションであったが、これからは顧客、AI、そして経営戦略とのつながりが役割の中心になってくる」と先を見据えている。

8月に改装した船場の東京オフィス

 同社が掲げるBIMレベル5への道筋は、AIとのBIMデータ連携によって専門家同士が密接に結び付く「共創の拡張化」(レベル4)を通過点に、顧客やエンドユーザーの誰もが空間づくりに参画できる「空間の解放」(レベル5)を到達点に位置付けている。「われわれはプラットフォーマーとして内装業界を先導し、新たな空間提供の価値を生み出していく」と思いを込める。

 小田切氏はBIMレベル5から逆算したBIM経営の狙いについて、こう明かす。「一見するとBIMを軸にした生産改革のように思うかもしれないが、実はクリエーティブ(設計)の部分が軸になり、BIMが設計のディスラプション(破壊的イノベーション)を生むための改革になる。AIとの結び付きが強まれば生産プロセスを通じたインテグレーション(統合・連携)が実現し、ロボットを活用した施工自動化などにもつながり、業界自体のディスラプションにもつながっていく」

 BIMレベル5への道筋は、まさに業界自体の価値創造を強く意識したものだ。同社のBIMはレベル3からレベル4に足を踏み入れようとしている。「われわれだけでは成立しない。顧客やパートナー企業などの各ステークホルダーとともに進化していくことが大切になってくる」。世界でも類を見ないBIM経営を軸にした同社の挑戦は、顧客やパートナー企業を引き連れた日本の内装業界を包み込む改革でもある。

記事は建設通信新聞からの転載です

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