全国ビルメンテナンス協会が、BIMモデルと保全情報データベースを融合した国内初の維持管理・運用システムを構築した。設計段階から適正な建物管理を見据えた投資判断を検討できる「メンテナンス指向のデザイン」を実現した。協会は2029年までにあらゆる建物用途にDBの対象範囲を拡大し、維持管理・運用BIMの普及に乗り出す。

システムは、建物維持管理の人手不足を解消する手段として、協会内に設置した維持管理・運用BIM活用WG(座長・杉田洋広島工大教授)が2年間かけて構築した。協会が入居するビルメンテナンス会館(東京都荒川区)をBIMモデル化し、独自に構築した保全DBコードと、建築BIM標準情報活用協会の建設資機材コードを融合することで、設計した設備が建物運用時にどのような点検が行われるかを詳細にシミュレーションできる。
この考え方は、WG座長の杉田氏が提唱する「メンテナンス指向のデザイン」を具現化したものとなり、BIMと保全情報を組み合わせることで設計を進めながら維持管理の最適解を導くフロントローディングが実現する。建物の点検内容や進め方はメンテナンス会社ごとに異なるため、各社の点検手法を集約し、協会標準としてまとめ上げたことも成果の1つになる。
協会が17日にビルメンテナンス協会内で開いた成果説明会には、会場を埋め尽くす120人が詰めかけた。会員企業のほか、維持管理BIMに取り組むゼネコンや設計事務所なども参加した。説明会の冒頭にあいさつした佐々木浩二会長は「建物維持管理では深刻な人材不足となり、この現状を打開するためにWGを発足した。国内初の試みを公表できることは協会にとっても将来に向けた大きな一歩になる」と思いを込めた。

杉田氏は「設計時に更新コスト(修繕費用)はある程度計算できるが、建物を維持管理に必要な点検コストは正確に予測できなかった。メンテナンス会社から貴重な情報を開示してもらい、保全情報データベースを構築できたことで、維持管理・運用BIMとの連携が実現できた。今回の成果は会館をモチーフにしたものとなるが、29年までにあらゆる建物を対象とした保全情報データベースの構築を完了することで適用範囲をさらに拡大していく」と説明した。
維持管理・運用モデルと保全情報データベースを融合したシステムはBIMソフトがなくても自由に閲覧でき、点検員が設備機器に貼ったマーカーをスマートフォンなどで読み取り、画面上で点検カ所に誘導される仕掛けも開発済み。熟練の点検員でなくても一定程度の業務をこなせることから、人手不足解消のツールとしても期待されている。
協会は、今回の成果をスタートラインに位置付けており、今後は標準化とスマート化を推し進め、維持管理・運用BIMマネージャーなど専門人材の育成や、新たな資格制度の確立に加え、協会独自の運用ガイドラインも策定する計画だ。
会館の維持管理・運用モデルと保全情報データベースは一般公開中。申し込みはこちら
