連載 BIM未来図 久米設計(下)

設計知の価値をAIで進化させる 
眠っているナレッジの共有

 久米設計は、AI(人工知能)を使ったBIMデータ活用の検証にも着手した。今年2月に策定したBIM VISIONではBIMを使いこなす設計者の習熟度向上とともに、設計活動を通してBIMデータ活用の幅を広げていく方針も明確に位置付けた。井上宏社長は「これからBIMを通じてさまざまなデータやノウハウが蓄積していく。積み上げた設計知の価値を、AIを使ってどう進化させるかが重要になってくる」と強調する。

(左から)矢永氏、鈴木氏、井上氏、横山氏、古川氏

 建築設計AIプラットフォームを提供するTektome(東京都渋谷区)とは、過去ナレッジからの設計データベース構築とBIMモデルをAIで自動チェックする検証に着手している。DX室の古川智之室長は「われわれの設計知を有効活用していく流れを作っていく中で着目しているのが、設計をアシストしてくれるAIであり、それは業務の自動化にもつながっていく」と手応えをつかむ。

 過去にさかのぼって設計図書やデザインレビューで指摘した不具合などの情報が蓄積されているが、そのままでは活用が難しい。データベースとして体系的に整備し、設計者に見える化をしてフィードバックすることが設計技術の基盤づくりに重要になってきている。Tektomeとの連携によって「眠っているナレッジを吸い上げ、皆で共有できれば、設計品質は格段に高まる。AIがアシストしてくれる形で設計知を常にブラッシュアップしていく枠組みを実現したい」と考えている。

TektomeとはBIMモデルをAIで自動チェックする検証に着手

 BIMモデルのAI活用の事例では、例えば本社ビルのBIMモデルから方位別に外部ガラスの総面積を算出してほしいと指示を出すと、AIが自動でプログラムを作成し、どういうステップでBIMモデルを解析すればいいかを自ら判断して結果を指し示す。過去の設計を題材としたAI活用だけでなく、設計中のプロジェクトを題材に、法規チェックや環境負荷検証も含めたさまざまなシミュレーションを実現する可能性を秘めている。

 これまではアドイン開発やプログラミングツールを使って緻密なプログラムを組む必要があったテーマでも、AIが質問の意図をくみ取り、答えを示してくれることから、BIMデータの解析や設計シミュレーションへの対応が劇的に変化する期待もある。「われわれにとって重要になるのは過去の図面も含め、AIがきちんと料理できる下地をつくることであり、良質な設計知のデータベースを構築し続けていくことだ」と付け加える。

 社内では、設計者をBIMユーザーに位置付けてRevit活用の浸透度合いを引き上げている。古川氏は「BIMが必須になったことで、日々の設計活動によってRevitデータが着実に蓄積されており、われわれが目指す価値創出に向けたさまざまなチャレンジができるようになった」と強調する。

 同社は、1932年の創業から94年にわたって蓄積してきた「設計知」を生かす手段としてBIMへの対応強化に乗り出した。井上社長は「われわれが提供する建築の価値を引き上げるためにも、BIMを軸にしたコンピュテーショナルデザインを導入する効果は大きい。何よりもBIMによって組織が一つの方向性に向かった」と実感している。今年2月に策定したBIM VISIONのスローガンには「新しい創造の力」を掲げた。同社ではBIMをきっかけとした価値創造の流れが、組織全体を包み込み始めた。

この記事は建設通信新聞からの転載です

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