連載 BIM未来図 久米設計(上)

BIM軸に設計知への価値づくり 
今年度中にユーザー率7割へ

 久米設計がBIMを軸に成長戦略のかじを切った。経営の重点テーマに「クライアントのための価値創造」を掲げる井上宏社長は、1932年の創設から94年もの長きに渡って培ってきた「設計知」を核にしながら、新たな「価値」を生み出すための手段としてBIMの活用を明確に位置付ける。将来を見据えた『BIM VISION』も策定し、力強い一歩を踏み出した。同社はどうBIMと向き合おうとしているか。目線の先を追った。

 2025年4月の就任に合わせ、井上社長は社内に設計知を浸透させるための組織として設計推進本部を新設した。本部は設計支援、設計情報、研修企画、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)、パートナーリレーションの6室にイノベーションラボを加えた七つの機能で構成し、BIM推進についてはDX室が核となり、設計支援室やGX室などと連携しながら社内横断でBIMデータ活用を後押しする枠組みを形づくった。

 「あえて推進機能を一つに集約することで、組織横断でより迅速な対応が図れる体制に切り替えた。設計品質などの基礎固めとともに、未来に向けた取り組みも含めて幅広く展開する。設計の最前線に立つ設計本部と密接に連携しながら、BIMを軸に設計知としての情報を付加していく役割を設計推進本部が担っていく」と強調する。

 今年2月には、全社員に向けたBIM VISIONのオンライン説明会も開催した。冒頭、井上社長は「設計知を核に新たな価値を生み出していく必要性と、それを実現するためのBIMの重要性」について語り、「設計図面を描くことはクライアントのために価値を形にすることであり、それを実現する手段としてBIMが欠かせない」と呼び掛けた。

 オートデスクのBIMソフト『Revit』を全面導入する同社では、これまでプロジェクトの導入件数でBIMの浸透度合いを見定めてきたが、設計担当ごとにBIM活用状況にレベル差があり、実態を明確に表すことができなかった。設計者を自らBIMを扱う「ユーザー」として位置付け、一定のスキルをクリアしたユーザー数をカウントすることで組織としてのBIM対応力を指し示す枠組みに切り替えた。

 意匠設計、構造設計、設備設計、コスト積算などの部署ごとにBIMのスキルマップを定義し、それに対して設計者がどこまで対応できているかを3段階のレベルで定義した。BIM設計フローへの理解やRevit操作など基本的なスキルに加え、専門分野のモデル作成や属性情報の扱いなど専門的なスキルまで幅広く項目を設定し、役職ごとにどこまで習得すべきかを明確に定めた。

 同社は3段階のうちレベル2に達していれば、BIMを使って支障なく業務を進められると位置付けており、その水準をクリアしたユーザー(設計者)数を組織としての目標に位置付けた。現在、レベル2をクリアした設計本部の意匠設計者は4割、全社では3割程度にとどまる。これを26年度中には7割まで引き上げ、27年度以降にはユーザー率100%を目指す計画を立てる。

 VISION策定の中心的役割を担ったDX室の古川智之室長は「BIMを使った設計が当たり前にできる組織を目指している。設計の在り方を次のステージに引き上げるためにも、BIMは設計者としての最低限の基礎になる」と強調する。社内ではBIMの浸透に呼応するように、BIMデータ活用を軸にした価値創造の取り組みが一斉に動き出そうとしている。

この記事は建設通信新聞からの転載です

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