連載 BIM未来図 久米設計(中)

設計資産として指摘事項をDB化 
構想時から環境性能検討へ

 久米設計の設計推進本部ではDX室が先導する形で、BIMデータ活用に向けて設計支援室やGX室との密接な連携が活発化している。DX室の古川智之室長は「設計情報を扱うことを得意としているBIMの強みを生かすためにも、各部門が連携しながら最適なデータ活用の枠組みを導き出し、それを組織力として発揮させたい」と思いを込める。

図面シート上の指摘事項確認

 全プロジェクトの設計レビューを担当する設計支援室では、オートデスクの共通データ環境『Forma Data Management』(旧Docs)を活用したデザインレビューシステムを構築した。BIMデータとレビューの指摘事項をひも付け、対象の場所を図面上に見える化することで、設計者は指摘事項の重要度などを図面上で確認しながら修正ができる。

 設計支援室の矢永勝美室長は「レビューは設計の付加価値となり、それに対して重要度を記す仕組みにした。指摘事項はまさに当社の設計知であり、それをデータ化することで設計資産として積み上げ、設計品質の向上に生かしていきたい」と考えている。既に25プロジェクトで試行し、2026年度からは本格導入する計画だ。古川氏は「今後、指摘内容をいかにカテゴライズしていくかが重要になる。設計知としての指摘事項をきちんとデータベース化することによって、AI(人工知能)活用にもつなげていきたい」と付け加える。

 GX室でも、新たなBIMデータ活用のシステム開発が進行中だ。建築物の新築や増改築では省エネ適合性判定が義務化され、省エネ基準へのより高い対応が求められる中、早期段階から環境性能を把握できる設計の枠組みが重要になってくる。システムはBIM標準ソフト「Revit」の設計初期段階のデータから環境性能に関連した数値を自動抽出することで、提出が求められる環境シートなどへの転記作業を軽減するものとなり、従来の2次元データからの作業と比べ大幅な効率化が実現できる。

建物負荷から熱源機器容量への流れ

 GX室の横山大毅室長は「BIMデータを使うことで構想の段階から設備設計に必要な建物の情報が迅速に入手可能となり、早期に環境性能の検討に取り組めるようになる。提案時も環境性能を加味した複数の設計案を示すことができる点も強みになる」と手応えを口にする。オートデスクのプログラミングツール『Dynamo』をベースに、AIツールを組み合わせたシステム開発と設計フロー構築を進めており、汎用(はんよう)的に設計者が使えるようにアドインツールとして具体化する方針で「早期にシステムを完成させたい」と前を向く。

 設計者一人ひとりのRevit操作スキルを高めながら組織のBIM対応力を引き上げている同社では、設計活動の中でBIMデータを効果的に活用していく流れが広がっている。設計推進本部本部長の鈴木章浩執行役員は「BIMのユーザーが社内で急速に育つ中で、Revitをはじめとする、あらゆるデジタルツールをきちんと有効に使っていくためには設計者のBIMリテラシーも問われる。操作スキルとともにマインドの部分をどう高めていくかにも力を注ぐ」と強調する。

 同社では組織としてBIM導入のかじを大きく切ったことで、BIMとの向き合い方を通して、設計の在り方を改めて見つめ直すきっかけにもなっている。井上宏社長は「まさにBIMで大事になるのはインフォメーションであり、クライアントが建築を通して進めていく事業の組み立て部分にもBIMは力を発揮していく。建物完成後の維持管理段階にも、BIMを通してわれわれの設計知が生かせる」と先を見据えている。

この記事は建設通信新聞からの転載です

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