BIM未来図 船場(上)

世界初、BIMレベル5を独自定義 
到達点は「空間の解放」

 内装・ディスプレー大手の船場が、独自のBIM成熟度として、世界初といわれている内装業としての「BIM Level 5(BIMレベル5)」を定義した。同社の小田切潤社長は「AI(人工知能)が急速に進化する中で1、2年先はグローバルのトッププレーヤーや政府レベルでも想定ができない状況だが、10年先のAIの姿であれば大枠は想定できる。AIに大きな影響を受けるBIMの10年後の姿を想定し、そこから逆算したBIM経営を行うことで、骨太のBIM戦略を構築していく」と力強く語る。内装のBIMトップランナーとして同社はどのような成長戦略を描こうとしているのか。BIMレベル5に込めた思いを追った。

BIMレベル5を独自に定義

 英国政府が2011年に打ち出したBIM成熟度レベルは現在、世界標準として広く浸透している。国や企業のBIM導入状況を段階的に示したものとなり、レベル0を2次元図面中心、レベル1を2次元と3次元の混在、レベル2を各専門モデルの連携、レベル3を統合データモデルの活用と区分けしている。同社は、その先を見据えながらレベル4を「共創の拡張化」、レベル5を「空間の解放」と構想し、定義した。独自のBIM成熟度を企業の経営指標として位置付けるのは、世界でも初めての試みだ。

 その到達点は10年先の36年を見据えている。BIMとAIの連携により、専門家同士の協働が展開されるレベル4を通過点に、空間デザインの主導権は専門家の手を超え、レベル5へと広がっていく。同社が到達点として掲げる「空間の解放」では、AIが専門知識を補完する役割を担い、顧客やエンドユーザーも含め誰もが空間づくりに直接参加できる未来を描く。

 小田切氏は「特にデザインの部分がAIとの連携によって大きく変わる」と考えている。既に台湾やシンガポールなど海外5拠点で展開するプロジェクトでは、グローバル企業が生成AIで詳細な空間イメージを作成し、オペレーションの部分も含めて詳細なデザインを提示してくる。「そうした最先端の動きは近い将来、日本にも広がってくる。当社自身もBIMとAIを駆使した最新鋭の提案づくりに力を注いでいく必要がある」と強調する。

レベル5では専門知識がなくても直感的にBIMを使える

 

 

 

 実は、25年3月の社長就任時から「BIMが内装設計のディスラプション(破壊的イノベーション)を生む」と考えていた。同年8月に米国オートデスクと共通データ環境(CDE)の構築とBIM業務プロセス改革を目的とした戦略的提携に関する覚書(MOU)を締結したタイミングに合わせるように「独自のBIMレベル5を社内で議論し、そこに向かって経営の軸を合わせていく」ように指示を出していた。

 「この1年でAI技術は目まぐるしく変化し、今もなお進化を続けている。われわれの定義したレベル4はBIMデータ活用に際してAIが常態化し、レベル5ではBIMの中に完全にAIが取り込まれ、誰もが空間づくりに参加できる流れがやってくる時代を見通している」と付け加える。

 同社は設計者の8割でBIM教育が完了し、25年度には200件ものプロジェクトにBIMを導入するなど着実な進展を見せている。「当社はレベル3からレベル4に足を一歩踏み入れ、これから営業、設計、施工へのBIMデータ活用の流れをさらに広げ、顧客やパートナー企業との共創環境を確立していく。社員一人ひとりが10年先を思い描きながらBIMと向き合っていくためにも、BIMレベル5から逆算して、その道筋を示すことが重要だった」。同社はBIMレベル5という独自に描いた到達点に向け、力強い一歩を踏み出した。

記事は建設通信新聞からの転載です

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