BIMとの向き合い方

BIMを使い建築で何ができるかを考える大切さ 
小川工業 平塚健太郎さん(下)

 小川工業(埼玉県行田市)で社内にBIMの可能性を伝えているBIM室長の平塚健太郎さんは、その経験を学生への教育にも生かしている。小川工業が産学連携を結ぶものつくり大学で、ゼミ生を指導するようになったのは3年前のことだ。BIMを教えられる実務者が少ないこともあって声が掛かり、ゼミ生の卒業研究などに実務者の立場から助言する役割として教育活動が始まった。

 卒業研究では、層間変形角をBIMで検証するテーマや、現場の新規入場者教育にBIM動画を取り入れ、その効果を検証するテーマなどがあり、実務者の視点からアドバイスしている。現在は大学院生1人と学部生3人を担当しており、11月からは非常勤講師として大学3年生への授業も担当することになった。「まだ授業内容は固まっていないが、単にBIMツールの操作を教えるという感じではなく、ARや点群データの活用も含め、BIMがいろいろな可能性を秘めていることを伝えたい」

 大学とは別に工業高校でもBIMの授業を行っている。きっかけは2025年に小川工業の研修センターで開かれた埼玉県内の工業高校教員による部会だった。平塚さんが特別講師として同社のBIMの取り組みを紹介し、それを機に工業高校で授業を担当するようになった。現在は県内2校を受け持ち、直感的に操作できるBIMソフト「Archicad」を使って、「BIMで設計する楽しさを感じてもらう」授業を心掛けている。

 工業高校の授業では、BIM用パソコンの台数が限られていたため、クラスを二つに分け、一方はBIMからCAD、もう一方はCADからBIMという順序で学習した。結果として、同じ内容を異なる順序で学ぶ二つのグループが生まれたことから、理解や操作にどのような違いが表れるか、生徒の回答や成果物を学術論文として比較した。「一般的には、CADからBIMという順序で学ぶことが多いが、最初からBIMを学んだ場合、生徒の理解や成果物の捉え方は変わるのではないか」と考えた。

 その結果、操作上のつまずきやすい個所や、自分の成果に対する評価の仕方に違いが見られた。例えば窓の配置を行う場合、CADは線で表現した壁の一部を切り、そこに窓を描き加える。BIMでは壁という部材に窓という部材を配置する。CADを先に学んだ生徒の中には、BIMでも壁を切断して窓を取り付けようとする例があった。「この様子を見て『BIMはCADの延長ではない』と改めて感じた。CADとBIMでは建物の捉え方が異なるため、BIMはCADと同じ感覚では操作できない」

 BIMから学び始めた生徒の中には、うまく作成できなかったとみられる部分を、モデルから意図的に削除した例もあった。BIMでは作成した形状を3次元で確認できるため、不整合や未完成な部分を認識しやすい。その見え方が、自分の成果をどう評価するかにも影響した可能性があると考えている。

 「学ぶ順序によって、操作だけでなく、自分の成果の捉え方にも違いが生まれることがわかった」。こうした経験から、CADを学んでからBIMへ進むという従来の考え方を見直すようになった。「最初からBIMに触れ、それを使って建築で何ができるかを考えられる人材を育てることも重要ではないか」

 平塚さんが実務で重視しているのも、BIMの機能から使い道を探すのではなく、現場や業務の課題を起点に、その解決にどう生かせるかを考えることだ。「生産性や品質を高めるために、業務をどう変えたいのか。その目的が先にあり、実現する手段として『BIMが使えるのではないか』と考えることが大切になる」

 現在は、AIを使って図面からBIMモデルを自動生成する独自のプログラムを構築している。「もしかしたらBIMの操作すら覚える必要のない時代が来るかもしれません。技術が変わっても、大切なのはそれを使って何を目指すのかを考えることだ」。平塚さんは既存の使い方にとらわれず、BIMの新たな可能性を探り続けている。

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