国土交通省の建築BIM推進会議が進めているデータ連携環境の整備に向け、各部会を横断的につなぐ標準化タスクフォース(TF)は2025年度に「属性情報の標準化」「ユースケースの検討」「外部データとの連携」を軸に検討を進め、その成果を報告した。標準化TFサブリーダーの大越潤氏(清水建設)、意匠チームリーダーの家原憲太郎氏(山下設計)、構造チームリーダーの山本敦氏(東畑建築事務所)、設備チームリーダーの吉原和正氏(日本設計)、積算チームリーダーの須貝成芳氏(三菱地所設計・日本建築積算協会情報委員会)、外部データとの連携チームリーダーの安井謙介氏(日建設計)と、事務局を務める高木英一氏(PLUS.1)に、成果のポイントや今後の方向性を聞いた。

属性情報の標準化 ユースケース検証し社会実装へ
高木 標準化TFで議論している「属性情報の標準化」「ユースケースの検討」「外部データとの連携」という三つは密接につながっている。それぞれの成果のポイントや狙いを知ってもらい、実務にどう活用できるかを含め議論していきたい。属性情報の標準化から話を進めたい。個別企業ではBIM標準化に取り組む動きが広がりつつある。現状はどうか。
吉原 当社では10年以上前からパラメーターの整備を進めているが、取り組んでみて分かったのは、1社だけで行うのは現実的ではないと痛感している。ある程度の整備は進んでいるものの、社内だけで閉じて標準化を進めるより、各分野や業界として標準を推し進めていくことが必要だ。
大越 まさに企業としては、そこに大きなリソースを割かないといけないが、独自で進めても、結局は企業の中だけに留まってしまう。その点でもさまざまな分野の専門家が集まった標準化TFは貴重な議論の場であり、その成果を通じて日本のBIM標準化の在り方を提示していく。
高木 24年度の成果としてBIMデータ連携に必要な属性を集約した「標準属性項目リスト」をまとめた。このリストは用語を定義し、マッピングすることを目的としている。25年度ではユースケース(使い方の例示)での検証や社会実装に向けたデータベースの在り方などを議論した。
家原 ユースケースの検証では、分類体系の必要性をより認識できたが、全てのユースケースに使えるような分類体系はないことも分かった。そこでユースケースごとにフィルターセット(標準属性項目リストの視認性・閲覧性を高めるため、各属性項目に対して種類・部分・特性に応じ、独自に付与しているものであり、分類体系を規定するものではない)を活用し、それがとても有効であることを把握できた。ただ、ユースケースごとにフィルターセットが変化することを許容している。そこを理解してもらう必要はあるだろう。

須貝 われわれ積算協会(部会(4))では、当初英国発祥の分類体系であるUniclassをBIM積算へ活用することを試みていたが、そもそもが積算を目的としたものではないため、BIM積算の為には何かしら追加の作業が必要があることが分かってきた。逆に言えば何かしら手を加えれば、積算に限らず他のユースケースにも有用であることも分かりつつあり、今後、複数のユースケースを示すことで分類体系が業界全体として有用なものになると思う。
高木 まさにユースケースによって最適解が変わってくるため、まずは属性情報に対し、きちんとコード化していくべきで、一つの情報は使い方によって分類の仕方のベストな方法がいくつかあると考えることが一番分かりやすいと思う。
大越 大手や中堅クラスの企業であればチューニングして使うことはできるが、個人事務所であれば、それをそのまま使うしかない。その意味でも参考になる代表的な例みたいなものを出さないといけないだろう。
家原 標準化TFの25年度成果報告の冒頭に「皆様のご協力と知恵の結集により、この成果物が業界標準として広く受け入れられることを期待しています」というメッセージが添えられている。共有パラメーターを整備する時、独自の完璧なものを作ると、自社内ではうまくいくかもしれないが、他社と情報連携しようとした時に、すぐ破綻してしまう。業界が知恵を結集していくというマインドを持って取り組むことも重要だ。
大越 メーカーが作ったオブジェクトをプロジェクトに持ってきた瞬間に同一のIDがあったら、二つの属性が存在してしまい、結果的に社内では使いづらい状態になってしまう。そういうことは往々にして起こり得る。だからこそ共有パラメーターをそろえることはとても重要なことである。

吉原 設備についてはもともとBIM以前から、設備機器のカタログの情報を一元化する取り組みがあり、それが15年にBIMライブラリコンソーシアムにその後のBIMライブラリ技術研究組合に継承された。標準化TFの活動開始時点でパラメーター自体はある程度整理できていたので、本当に使うものは何かを絞り込んできた。標準属性項目リストがすべて完成してから使い始めるという発想ではなく、各企業が先行して実際に使ってほしい。関係者間でデータを共有する場合、まだ限られている部分もあるが、優先度の高いものについては使える状況になっている。徐々に増やしていくような使い方をしてはどうか。
山本 まさに冒頭のメッセージにある「皆様のご協力と知恵の結集」という部分は、実際に使ってみて意見を出してほしいというわれわれの呼び掛けでもある。標準属性項目リストは、まだ全てを網羅できているわけではない。業界内でさまざまなユースケースに照らし合わされていく中で洗練されていくものになると考えているので、ぜひとも活用してもらいたい。
標準項目属性リスト 意匠・構造・設備の関係性整理
高木 25年度の取り組みとして「属性情報の標準化」については、標準項目属性リストをブラッシュアップする部分に注力し、過不足あったものや重複しているものをどう扱うかについても議論してきた。
家原 標準属性項目リストを意匠・構造・設備で合わせて示せたことは大きな成果だったが、そのまま使うのはまだ難しく、機能させるために整理が必要だった。議論すべきポイントを絞りながら、フィルターセットの考え方を整理することが標準属性項目リストを理解する助けになると考えた。
山本 25年度は意匠・構造・設備で、お互いの関係性を見ていこうという視点でも活動した。同じような項目であっても分野によって使われ方が違うなどの課題が浮き彫りになった。完全に一致させることを目指すのではなく、ユースケースに応じて分野共通で扱う必要がある項目と分野ごとに扱う項目を見定めながら整理する必要があると感じている。

吉原 設備についてはBLCJのオブジェクト標準2.1と、標準化TFで整備したものを完全に整合するような形で取りまとめている。意匠や構造と共通化をはかるパラメーターの検討は今後のテーマではあるが、各分野においてそのパラメーターが意味する内容や、中に入れる値の単位系、言葉の使い方などが変わってくるので、共通化をどこまで行うべきかは慎重に調整していく必要がある。
山本 分かりやすく言えば25年度はそれぞれの分野内での整合性を確認し、分野間における課題をあぶり出したという感じだろう。標準化TF内部だけでなく、業界の方々とユースケースを踏まえながら、柔軟な使い方ができる標準項目リストにしていきたい。
安井 標準化TFが各部会の横断組織として位置付けられているように、標準属性項目リストは企画から設計、施工、維持管理のBIMサイクルを念頭に議論し、形作られている。活用してもらう際、どの視点に立つかが重要で、自分たちの現業の中だけで考えると使いにくい場面もあるが、ライフサイクルを通した視点で物事を考えるとまた違った目線から標準属性項目リストを見ることができるだろう。
大越 標準属性項目リストには、必要なものは全部入れていくスタンスで取り組んでいる。例えば積算ではS2(基本設計段階)とS4(実施設計後半の詳細設計段階)ではどこから情報を持ってくるかが変わってくる。同じように見えるものが複数あったとしても、わざわざ揃える必要なくてダブってもいいと考えている。大事なのは網羅性があるということであり、揃える必要性を重視して、このリストを作っているわけではない。そう理解して業務への落とし込みができるといいのではないか。
積算ユースケース検証 試行錯誤を繰り返し最適解探る
高木 25年度の成果としては積算ユースケースの検証に特に力を注いだ。
須貝 具体的にはS造2階建てオフィスビルのS4モデルで検証した。積算チームは標準属性項目リストを積極的に作るというよりも、情報が反映されたデータを積算に用いた場合、どういった課題があるのか、という視点での検証になり、BIMからの数量の精度に重きを置かず、工事費内訳明細の細目に該当するBIMオブジェクトがあるかないか、数量を拾えるBIMオブジェクトがあるかないかの観点から考察した。
家原 標準的なS4段階のLOD(モデル詳細度)やLOI(属性情報詳細度)が存在しない中で、モデリング側の負荷と積算側の妥協点を探りながら検証し、積算の一連の流れの中で段階的にどう検討を進めていくかにフォーカスした。
須貝 従来は2Dの図面の情報をどれだけBIMへ盛り込むかが、LODやLOIの「L」の値を左右すると考えられがちであったが、仕様書や施工計画など図面以外の情報も内訳明細作成には必要であることを改めて確認できたのは大きかった。今後も、このようなBIMデータ以外の情報を、どこまでどのようにBIMデータへ反映させるのかの議論が必要となる。その境目に正解はなく、試行錯誤を繰り返しながら業界全体での最適解を探るという考え方が必要だろう。

山本 部会間を調整するために標準化TFが組織され、そこに意匠、構造、設備のメンバーと積算のメンバーが一つのチームとして位置付けられたことでとても充実した議論に発展した。これまでBIMの横断的な議論の中で積算にスポットを当てるケースが少なかっただけに、横串を刺した意味があったのではないかと思う。
家原 意匠・構造・設備の連携を検証する中でも重要となるが、意匠側が楽をするために構造側が苦労するようなやり方は絶対にうまくいかない。なるべく皆が得する考え方を軸に議論しないと、誰かのために誰かが損をしてしまうのはどうかと思う。積算についても情報連携の役割まで考えてちゃんと議論しながら進めないといけないという思いも持った。
大越 25年度の報告書の中でも記載しているように、どれだけのBIMの情報が積算に使われているかも把握できた。これまで不確定であった部分だけに、蓋を開けてみたら、かなり使えていることが分かり、これは今後の貴重な材料になるだろう。
高木 積算ユースケースでは標準属性項目リスト、サンプルモデル、内訳明細の関係性を位置付けて検証した点も注目できる。BIM積算はモデルがあればすぐできると思われているが、BIMの中に情報があっても拾えるものと拾えないものがある。今回の成果としてそれを明確化し、A・B・Cの構成別パターンで示した指標はとても参考になると思う。
家原 積算ユースケースの検討はLCA(ライフサイクルアセスメント)にもつながる。ただ、BIMのモデルを完璧に作れば、完璧に数量を拾えるが、そこまで完璧なものを作ることは現実的でない。モデルにはないが、コストやカーボンに換算できる複合単価的なものや標準仕様書など、標準化TFだけでは議論しきれない部分も見えてきた。
安井 積算の情報からLCAには項目ベースで93%が展開できることが分かった。積算で詳細なデータを分析していたから算出できた。外部のデータとBIMが連携する必要性をきちんと取りまとめたのが25年度の成果だった。それが実現することでBIMデータはさらに価値を増す。LCAの観点から先行事例をベースに具体的にどう取り組むかを検証した。報告書では外部データの連携手法を客観的に分析しており、今後実装していく上で参考になる資料になっているのではないか。
大越 25年度はLCAにフォーカスしたが、ユースケースとして他の視点からも深掘りできると、属性情報の在り方を議論する上での指標になる。そこを26年度はやるべきだと思う。

AIとの関連性 基盤データの確立は将来の布石
高木 外部データとBIMの関係性を考える上で、AIとの関連性が今後より重要になってくるのではないか。
安井 AIであれば、情報や用語の定義が統一されていなくても、ある程度は読み取ってくれるという見方もある。しかし、標準化されているからこそ、AIはより有効に機能すると考えている。外部データとBIMとの連携を考える際、AIを活用するためのキーになってくるのが、標準属性項目リストである。標準仕様書と特記仕様書がある日本と異なり、海外では標準仕様は統一され、BIMの中に入れている国もある。日本固有の商習慣を踏まえてBIMの在り方を検証することも今後の重要なテーマになるだろう。
大越 まさに外部データとして標準仕様書と固有の情報は切り分けた方がいい。製品情報とどう紐付けるかという話にもつながり、データ連携の枠組みが整えば性能の数値をBIMの中に取り込むことができ、それによって負荷計算などの精度も上がる。外部データとの紐付けが実現して、さらにAIを使えば、さまざまなデータの検証ができるようになる。
高木 AIにチューニングされたデータベースを使うケースと、チューニングされていないデータベースを使うケースでは、答えが返ってくる時間も段違いに早い。そういう視点でも、整合された基盤データの確立は将来のAI活用の視点でも大切だ。

家原 AIにしろ、BIMにしろ、粗雑に扱うことはよくない。AIにちゃんと向き合うと、最終的に自分を助けてくれる存在になる。例えばデジタルデータをただ入れ込むだけでなく、必要なデータをきちんと整理した方がAIを活用する上では大切だと思う。
山本 整合された基盤データがあることでAI活用の成果も変わってくる。基盤データがない状態でAIを活用しても、不確かさが増し、人の目で再確認が必要になるといった手戻りにもなる。AIの進化が今後どうなるにしろ、標準化の基盤づくりはなくてはならない。
吉原 まさに基盤やルールを作った上でAIを使っていく必要がある。AIがなかった以前では、標準化の先にリレーションやデータベースをしっかりと作り込む作業が必要であった。これからはそこの一部をAIがカバーできる可能性がある。BIMデータ活用の仕組みを構築する際には、AIの良いところ取りをしていくことが大事になると思う。
高木 25年度における標準化TFの活動では、標準属性項目リストをブラッシュアップし、積算のユースケースを検証し、外部データではLCAを導く出すためにどう組み合わせていけばいいかについても検証した。これらの成果をさらに深掘りしていくことが26年度の重要な取り組みになる。
大越 属性標準項目リストを作っただけでは、BIMの社会実装にはつながらない。社会実装に向けた活動や働きかけを各部会や団体にしていくことも今後取り組むべき重要なテーマであろう。そのためにも決められたルールの中で、しっかり情報が受け渡される必要がある。標準化TFとしてMET(Model Element Table)についても議論すべきだと考える。ユースケースにおいても誰がその情報を入れるかといった一歩踏み込んだ議論もしていきたい。そのサンプルを提示できればデータの受け渡しの際のルールも提示できるだろう。
この記事は 建設通信新聞 特集「BIM2026」からの転載です
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