オリエンタルコンサルタンツが6月末に開いた土工部ICT施工データ変換システム(eMS)の無料オンライン体験会には111人もの参加者があった。eMSの実践的操作を体験できるとあって、ゼネコンや建設会社に交じり、建設コンサルタントからの登録もあり、eMSへの関心の高さがうかがえた。

体験会は、eMSの基本機能に加え、「区間分割」「端部の現況すりつけ」「施工中の暫定モデル作成」といった実務で活用頻度の高い機能に触れてもらうことで、業務での使い勝手を実感してもらうほか、販売に向けた課題なども整理・分析したいという狙いがあった。
オリエンタルコンサルタンツの水野耕治中部支社副支社長兼道路整備・保全事業部副事業部長は「2026年度末をめどに販売体制を整えたい」と考えている。背景には国土交通省のBIM/CIMが新たなステージに入ることで「プロセス間のデータ連携がさらに重視される流れになる」との期待がある。
原則適用が4年目に入った国交省のBIM/CIMだが、設計から施工へのデータ連携が十分に図られていない課題がある。7月7日に開催されたBIM/CIM推進委員会では設計条件や仕様、断面図、数量、関連資料など設計成果全体を網羅した「情報モデル」を軸にした工事契約図書化の検討に乗り出す方向性も示された。「新たな工事契約図書化の流れを受け、これからは設計から施工へのデータ連携がよりクローズアップされる」と付け加える。
最近は、eMSの存在を知った都道府県などから説明を求められるケースも増えてきた。操作性や使い勝手を説明した後に「いつ販売するか」と問われることも少なくない。建設会社や建設コンサルタントからも同様だ。「社内体制をきちんと整えた上で販売する方向で準備していきたい。NETIS(新技術情報提供システム)登録もその1つ」と力を込める。

重点ターゲットには、小規模工事を担うC等級クラスの地域建設会社を位置付けている。国交省直轄工事では2025年度からICT土工工事などが原則適用となった。C等級では約7割が既にICT施工を経験しているが、残り約3割は未経験だけに「新たにICT建機を活用するような地域建設会社を中心に販売展開したい」と考えている。
販売に向けては、経験豊富な応用技術が頼れる存在だ。オートデスクのパートナーとしては国内に3社のみとなる最上位プラチナに認定されている同社はその高い開発力と技術ノウハウを集約する形で建設系向けソフトだけでなく、製造業系にも専門ソフトを販売している。山根隆弘エンジニアリング本部営業部営業統括マネージャーは「これまで培ったソフト販売事業のノウハウをオリエンタルコンサルタンツにも提供して全面的に支援していきたい」と強調する。eMSはオートデスクの土木3次元ツール「Civil 3D」のアドインツールであることから「最新版への対応支援も含めシステム開発のさらなる拡充についても全力でバックアップしていきたい」と付け加える。
オリエンタルコンサルタンツにとっては、eMSの販売は単なる事業拡大の目的だけにとどまらない。早川典克中部支社道路部副主幹は「ソフトを売るという意識よりも、建設業の働き方改革に貢献していきたい」との思いを強く持っている。水野氏も同様だ。「BIM/CIM本来の目的であるデータ連携の流れを後押しすることが、建設コンサルタントの役割である。その先にはeMSに続くデータ連携の新たなツール開発につなげていきたい思いもある」。オリエンタルコンサルタンツと応用技術の二人三脚は新たな力強い一歩を踏み出そうとしている。