BIMを学び始めた学生、BIMに挑む実務者、そしてBIMへの再挑戦を誓う設計者たち。さまざまな思いを抱きながらBIMと向き合おうとしている。グラフィソフトジャパンが主催するオンラインBIM教育プログラム「BIM Classes」の講師たちも同じようにBIMとの出会いがあり、悩みながらも一歩ずつBIMを自分のものにしてきた。特集「step up BIM」では、7人の講師それぞれの思いを通して、BIMとの向き合い方を探る。
「根底の理解が深まると、BIMとの向き合い方は大きく変わってくる」。MITO architecture + design(東京都杉並区)を主宰する三戸景さんは、米国での豊富な実務経験をベースに、そうアドバイスを送る。「BIMは情報を伝えていくものであり、どういう表現方法であれば伝わりやすいかを、まず自分なりに考えることから始めてほしい」と呼び掛ける。

米国に留学後、SOMやEnnead Architectsなど著名な建築設計事務所で実務経験を積んできた。BIMとの出会いは2008年にさかのぼる。当時所属していた設計事務所がBIMのパイロットプロジェクトを立ち上げ、その設計チームの一員として参加したことがきっかけになった。
既に米国では2007年に米国連邦調達庁(GSA)がBIMの導入に踏み切り、3次元データの納品も動き出しており、これをきっかけに多くの設計事務所がBIM化に向かい始めていた。日本のBIM元年よりも2年ほど早く導入の流れが進展した。
2010年に独立した際には既に多くの事務所が導入に舵を切っており、「BIMをやることが当たり前」と言うような風潮があった。それまでは別のBIMソフトを使っていたが、「イメージを形にしやすい操作性が気に入ってArchicadを使っていく」ことを決めた。使いこなせるまでにはそれほど時間はかからなかった。「できるところから徐々に使い込んでいった。Archicad特有の空間認識と3次元の操作性が私にはとてもしっくりきた」と振り返る。

拠点をニューヨークから日本に移したのは2017年のことだ。「当初は2拠点で仕事をしていくことも考えたが、時差の関係で休みなく働くことになってしまい、クライアントにも迷惑をかけてしまう」と日本への移転を選んだ。米国では米国建築家協会(AIA)の建築家資格を取得していたが、当時はまだ建築士資格を取得していないこともあり、設計事務所への実務サポートを軸に活動を始めた。現在はあえて事務所登録をせずに、Archicadを使いこなせず悩んでいる事務所へのコンサルティングを中心に活動している。
「実は日本でBIMのサポートを手がけながら、私自身が米国で取り組んできた設計の進め方と、日本の商習慣が大きく違うことを実感した」。Archicadを効果的に使うためには、設計情報の基盤となるテンプレートの整備が大前提になる。その事務所が取り組んでいる図面表現やワークフローのあり方を念入りにヒアリングし、どのような流れで情報を管理していくか、その最適解へのアドバイスを行いながら、テンプレートの構築にも協力している。
コンサルティングで大切にしているのは「BIMが設計情報管理のツールであることを理解してもらう」ことだ。米国の設計手法はそもそも合理的に設計を進めるために設計の流れが体系化されており、図面のIDも明確に位置付けられている。日本は事務所事に設計の進め方が異なり、図面のあり方も伝統的に通し番号で区分けされ、図面が追加された場合、間に入れ込むような流れになり、図面自体がきちんとID化されていない。
「米国ではBIMの前から業界として情報の体系化ができていたため、BIMに移行しやすい側面があったが、日本の場合は情報の体系よりも3次元の可視化が先行した。設計情報を管理する視点からBIMを捉える必要がある。それにはBIMツールに信頼できる情報形成のための枠組みを備えることが不可欠であり、それがテンプレートの構築により実現できる」

三戸さんは日本でのBIMコンサルティングを積み重ねる中で、米国と日本の考え方を融合した「オリジナルテンプレート」を確立してきた。「実はいつの間にか、そのテンプレートを提供するようなコンサルティングの流れになっており、2025年度からは販売も始めるようになった」。オリジナルテンプレートを提供し、それをベースにArchicadの使い方を伝授している。
「設計者は、人にものを伝えるための情報を扱っている。それは施主に対してであり、設計チーム内であり、施工者などプロジェクト関係者だったりする。情報を伝わりやすくするためにはどうすべきかを考え、BIMと向き合うように心がけてほしい」と強調する。「建築はそのライフサイクルにおいて様々な人がかかわることになる。BIMによってその各過程で建物に関する様々な情報を蓄積し、その情報を建物さらには都市環境に関する様々な用途に有効利用することが可能になる。蓄積される建物情報は、実物の建物と共に、未来への我々人間社会の貴重な財産となる」

4月から始まったBIM図面審査についても「情報の一元化が重要になってくる」と付け加える。三戸さんはBIM図面審査への対応に向けて、BIMライブラリ技術研究組合(BLCJ)が策定したサンプルモデルづくりにも参加した。「モデルと図面の情報がしっかりと担保されていることで、審査側の整合性確認が省略できる。モデルに一元化された情報が入っていることが何より大切」と考えている。
思うようにBIM導入が進まず悩んでいる事務所は「まず自社のテンプレートづくりを優先してほしい」と促すようにしている。「BIMが設計情報を管理し伝達する手法であるという根本的な理解を深めることが何よりの近道である」と力強く語る。
特集 step up BIM
(1)「 Archicadを好きになろう 」木島 裕太郎さん
(2)「 過程を大切に少しずつ先に進もう 」奈木 紀子さん
(3)「Archicadの強みを引き出そう」小川 裕香さん
(4)「支え合える仲間と一緒に前へ進もう」新 貴美子さん
(5)「踏み出すためのきっかけを与えよう」山上 健さん
(6)「Archicadを触り続けよう」福光 春子さん
(7)「情報を伝えることの意味から考えよう」三戸 景さん

BIM Classes:グラフィソフト製品を中心にBIMを体系的に学べるオンラインスクール。初級から上級まで段階的に設計されたカリキュラムにより実務に即したBIMスキルを無理なく身につけることができる。ビデオ講座でArchicadの主要機能をじっくり学べる「Standard」プランに加え、講師によるマンツーマンコーチングや質問クラスを通じて理解を深められる「Premium」プランで構成する。受講者のレベルや目的に合わせた柔軟な学習環境が、多くの実務者に支持されている。詳しくはこちら