BIMを学び始めた学生、BIMに挑む実務者、そしてBIMへの再挑戦を誓う設計者たち。さまざまな思いを抱きながらBIMと向き合おうとしている。グラフィソフトジャパンが主催するオンラインBIM教育プログラム「BIM Classes」の講師たちも同じようにBIMとの出会いがあり、悩みながらも一歩ずつBIMを自分のものにしてきた。特集「step up BIM」では、7人の講師それぞれの思いを通して、BIMとの向き合い方を探る。
「手書きからいきなりArchicadを取り組んだことが逆に〝幸せ〟だったのかも知れない」。ATELIER NEWS(大阪市)を主宰する新貴美子さんは、坂田基禎建築研究所(京都市)で働いた5年間がその後のBIMとの向き合い方に「大きな影響を与えた」と明かす。入社から3年ほどは手書きで図面を書いていたが、事務所からArchicadの導入方針が示され、その翌日から「突然、私のBIM人生が始まった」と語る。

木造とRC造の混構造住宅が初めて取り組んだBIMプロジェクトとなった。「しかも実施設計からのスタートで右も左もわからず、とにかく大変としか言えない状況だった」。代理店を務める大塚商会の営業担当から何度も操作のレクチャーを受け、少しずつArchicadに馴染んでいった。「私一人だけなら挫折していた。ともに学んだ仲間(奥野嘉仁スタジオNAO代表)がいたことが何よりも心強かった」
実施設計からのチャレンジは「いま思えば、無謀であった」が、Archicadが使いこなせるようになるにつれ「作業効率の良さをより実感できる」ようになった。2次元CADを通り越して手書きからBIMに移行したことで「BIMのすごさをダイレクトに感じることができた」と続ける。特に展開図の作成には大きな効果があった。手書きの場合、平面図から線を落とし込むように部屋を描くが、Archicadでは展開図ツール(当時は断面図ツール)を使えば簡単に展開図のベースを設定できる。2、3作品ほどArchicadで設計してからは「もう手書きには戻れない」という思いを抱いていた。

独立したのは2001年のことだ。住宅と店舗を中心にコンスタントに作品を手がける中で、11年からはBIM LABO(大阪市)のメンバーとしても活動を始めた。パートナー事務所のような関係性で、現在もBIM LABOが受託したプロジェクトやコンサルティング業務に参加している。
グラフィソフトジャパンから2012年と17年に受託した2つのBIMガイドラインモデルの策定は、新さんにとって「BIMをより深く追求するきっかけ」になった。12年は建築家の遠藤秀平さんの作品をモチーフに確認申請を目指したガイドラインモデルを手がけ、17年に策定したガイドラインでは、その当時まだ日本では真新しい指針のLOD(モデル詳細度)という考え方を取り入れ、企画、基本、実施設計へとモデルや情報が詳細に展開していくこを表現したArchicadモデルとそのテンプレートの定義を示した。

「BIMソフトを使う際、共通の作業環境としてのテンプレートづくりはとても大切になる。実は、坂田基禎建築研究所で設計を始めた頃の符号設定をいまもBIMのテンプレートにも取り入れている」と明かす。標準詳細図などを書く際、壁(wall)を示す場合は外部の壁を大文字の「W」、内部の壁を小文字の「w」と示すように、外と内が一目でわかるように工夫しており、その後ろにw01、w02というようにIDを続けることで、展開図や断面詳細図に紐付いていく。
「手書きで図面を描いている頃からの符号が今の私のコード進行になった。これが最適という訳ではなく、大切なのは自身に馴染みやすい表現を使うこと。テンプレートには設計者の色が出るため、ぜひ他の人たちがどんな風に表現をしているかを知ることも大事」と付け加える。
BIMに取り組む設計者の中には、暗礁に乗り上げてしまうケースも少なくない。Archicadのシンプルな仕組みが理解できず、プレゼン用のパースは書けるのに図面の出力がうまくいかない悩みをもつケースも多い。「私がそうであったように、支え合える仲間と一緒に悩みながらも、1つずつ課題を解決してほしい。別の2次元CADと同時並行でBIMに取り組むことはせず、大変でもArchicadだけでやりきることで、吸収力も上がる」と強調する。
「最初は企画段階、次は基本設計、そして最終的には実施設計まで通して取り組むことが大切。段階的に目標を決めながら、一歩ずつ順を追って前に進むことで、ベースとなるテンプレートも成長していく。BIMの経験値を積み重ね、常に自分自身をアップデートしてほしい」
BIM Classesの講師を続ける中で、グラフィソフトジャパンの「BIMマネージャープログラム」に参加したことも「私の経験値を引き上げてくれたポイントの1つ」と考えている。目的のためのモデルをきちんとチェックできる仕組みに加え、BIM運用のためのマニュアル整備のポイントも学ぶこともでき、最終課題として自分の会社をモチーフにしたBIMマニュアルづくりの提出が求められる。「頭の中にあったBIMの流れを体系的に整理できたことは大きなプラスだった。BIM Classesの受講後にBIMマネージャープログラムに挑戦することをおすすめしたい」

4月からBIM Classesの枠組みが一新された。「受講生がどういう風にBIMを学んでいきたいか、自主学習の的確なプランを示して、背中を押してあげるのがわれわれ講師の役目になる」。受講生には自身が描く目標を記入してもらい、オンラインによるマンツーマンコーチングでは講師陣が力を合わせて道先案内をしていく。1人の講師が担当するのではなく、担当した日の講師が「BIMのカルテを見ながらアドバイスする」スタイルになる。
BIMとの向き合い方で大切なのは「2つ」と強調する。「1人でやるのではなく仲間と一緒に取り組んでほしい。そして私のように実施設計からチャレンジするような無謀なことはせず、段階的にステップアップすることが近道になる。階段を着実に上るごとに発見がある。それが段々と楽しさになってくると思う」と呼び掛ける。
特集 step up BIM
(1)「 Archicadを好きになろう 」木島 裕太郎さん
(2)「 過程を大切に少しずつ先に進もう 」奈木 紀子さん
(3)「Archicadの強みを引き出そう」小川 裕香さん
(4)「支え合える仲間と一緒に前へ進もう」新貴美子さん

BIM Classes:グラフィソフト製品を中心にBIMを体系的に学べるオンラインスクール。初級から上級まで段階的に設計されたカリキュラムにより実務に即したBIMスキルを無理なく身につけることができる。ビデオ講座でArchicadの主要機能をじっくり学べる「Standard」プランに加え、講師によるマンツーマンコーチングや質問クラスを通じて理解を深められる「Premium」プランで構成する。受講者のレベルや目的に合わせた柔軟な学習環境が、多くの実務者に支持されている。詳しくはこちら