特集 step up BIM ②

過程を大切に少しずつ先に進もう 
奈木 紀子さん

 BIMを学び始めた学生、BIMに挑む実務者、そしてBIMへの再挑戦を誓う設計者たち。さまざまな思いを抱きながらBIMと向き合おうとしている。グラフィソフトジャパンが主催するオンラインBIM教育プログラム「BIM Classes」の講師たちも同じようにBIMとの出会いがあり、悩みながらも一歩ずつBIMを自分のものにしてきた。特集「step up BIM」では、7人の講師それぞれの思いを通して、BIMとの向き合い方を探る。


 BIMソフト「Archicad」をきっかけに「2つのタイミングが重なり、今の私がある」と振り返るのは、Atelier-NAGI(大阪市)を主宰する奈木紀子さん。現在は設計事務所やゼネコンへのBIM支援役として活動しながら、中央工学校OSAKA(大阪市)の教壇にも立つ。設計の業務に従事し、レンダリング事務所で建築パースの腕を磨いた後、独立したのは2000年のことだ。そこが出発点になった。

「2つのタイミングが重なり、今の私がある」と振り返る奈木さん

 独立当時はCG(コンピュータグラフィックス)が注目され始め、いずれ依頼が増えるだろうと、3次元設計ツールを導入したいと考えていたタイミングで、Archicadに出会った。デモを見せてもらい、直感的な操作性に触れ、「これなら創造しながら作業ができる」と覚悟を決めた。

 一通りの機能をマスターし、満足のいく建築CGを提供できるようになるまでには1年ほどかかった。Archicadの導入当初はCG作成のために使っていたが、Archicadのチームワーク機能を使って設計を進めたいと考えていた建築設計事務所から声がかかったことが、BIMにつながる分岐点の出来事になった。独立から2年後のことだ。

 設計支援のモデル入力の依頼は徐々に増え始め、意匠設計事務所からはデザイン検討の支援を依頼されるようにもなった。Archicad10を使い始めた2006年頃から、設計支援の仕事が大半を占めるようになった。「この時期に私自身のArchicadスキルがかなり磨かれた」。BIMという言葉を知ったのはBIM元年を迎えた2009年の頃だった。建築雑誌やセミナーで見聞きして「知らぬ間にBIMと向き合っていたことを知り、私の中にじんわりとBIMが入っていたことを実感した」

満足のいく建築CGを提供できるようになるまでには1年ほどかかった

 独立した2000年には母校であった中央実務専門学校(現・中央工学校OSAKA)から声がかかり、非常勤講師として「恩師」の助手を務めることになった。当初は手書きの建築パースを教えていた。ちょうど仕事でArchicadを使い始めたタイミングと重なるように、学校でもArchicadの導入が始まり、その担当を任されることになった。

 中央工学校OSAKAの講師歴は26年目を迎え、BIM Classesでは2020年4月のスタート時から講師を務めてきた。奈木さんは学生や受講生に対して「先入観を持たないこと」を常に心がけている。「私自身が小さな壁にいっぱいぶつかってきた」だけに、テキストでは触れていない操作上の細かな調整箇所も含めて「このくらいのことは誰でも当然知っているだろうという見方をせず、できるだけ奥深いところまで丁寧に伝えるようにしている」

 学生には「Archicadを自分のものにしていく過程を大切にしてほしい」と呼び掛けている。「Archicadに限らず、多くのアプリケーションが日々進化を遂げる中で、簡単に答えが与えられる場面が増えているが、その答えが違うと分かった時に、何が原因なのか、どこに問題があるのかを見抜けるようにしておくことが、この時代には大切な学びの一つ」と考えている。

だからこそ面倒でも時間をかけて自分なりに解決していく「意識の成長」を重要視している。「建築の基礎知識と各操作のつながりを理解して初めて便利機能が生きてくる。学生が社会人になって『先生が言っていたことは、このことか』とボンヤリでも思い出してもらえたら、うれしい」と、日々教壇に立っている。

BIMのコンサルティングでは目標を明確にするところから始めている

 逆にBIM Classesの受講者には、便利機能の活用によって業務効率を高めるヒントを提示できればと心がけているが、その前提としてArchicadの基本概念であるナビゲーター(ナビゲーターパレット)について「先ずきちんと理解をする」ように呼び掛けている。ナビゲーターはArchicadを使いこなす上で「要の部分」であり、設計チームの複数人で作業を進める場合、きちんとルールを決めて挑む必要がある軸であり、これを理解することがBIMワークフロー自体の理解にもつながる。実務者には「ぜひとも重要視して学んでほしいテーマの1つ」と強調する。

 Archicadモデルから図面を出力する際、いままで描いていた図面を再現したいという思いをもつBIM Classesの受講者は多い。「あえて100%を目指さないことがポイント」と促している。「最初から完璧を求めるより、目の前の理解できたものを吸収して少しずつ先に進む。立ち止まらず歩み続けることで、気が付けば解決している疑問点もたくさんあるはず。悩まず消化していく意識が何より大切」と呼び掛ける。

 最近、知り合いの設計事務所から頼まれ、BIMの導入支援を任されている。「まずBIMで何をしたいか。目標を明確にするところから始まる。自らの仕事の進め方にBIMを置き換え、目的を持って向き合うことが肝心で、それによって自分自身の足りない部分も見えてくる」

 BIM Classesでは講師陣が中心になり、Archicadの最新バージョンに合わせてテキストや講義内容を刷新している。「われわれ講師も最初から新機能をサクサク使えるわけではない。自分自身の中でしっかりと消化して講義に挑んでいるように、企業の中で自らが吸収したスキルを伝えることも、ステップアップの一つの方法ではないだろうか」と付け加える。

特集 step up BIM

(1)「 Archicadを好きになろう 」木島 裕太郎さん

(2)「 過程を大切に少しずつ先に進もう 」奈木 紀子さん


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