BIMを学び始めた学生、BIMに挑む実務者、そしてBIMへの再挑戦を誓う設計者たち。それぞれがさまざまな思いを抱きながらBIMと向き合おうとしている。グラフィソフトジャパンが主催するオンラインBIM教育プログラム「BIM Classes」の講師たちも同じようにBIMとの出会いがあり、悩みながらも一歩ずつBIMを自分のものにしてきた。特集「step up BIM」では、7人の講師それぞれの思いを通して、BIMとの向き合い方を探る。
「Archicadを好きになってもらうことに私自身が喜びを感じている」。そう語り始めるのは、リン・アンド・リンパートナーズ(東京都世田谷区)代表の木島裕太郎さん。グラフィソフトジャパンとは「幼なじみ」というように、BIMソフト『Archicad』が日本で販売された30年前から「講師として活動してきた」と振り返る。当時所属していたソフトベンダーがArchicadの販売代理をやり始め、その担当を任せられたことがきっかけだった。

当時はインターネットがまだ一般化していない時代で、体験版も提供されていなかった。購入前に6時間のArchicad個別講習を受講してもらい「使えるようになって帰ってもらう」スタイルを実践してきた。住宅性能表示申請サポート業務の責任者に抜擢されてからは10年ほどArchicadに触れない期間があったものの、独立した翌年、東日本大震災で仕事が激減した頃にグラフィソフトジャパンから声がかかり、BIM Classesの前身となる初心者向けトレーニングプログラム「JUMP」の講師として活動を始めた。
いまでは日本工学院八王子専門学校や共立女子短期大学でも教壇に立つ。「私の思いは昔と変わらない」。木島さんが常に心がけているのは、Archicadを好きになってもらうことだ。「毎日触れば、自然に慣れてきて、思い通りに動かせるようになる。気づけば好きになっている。いきなりやり方を変えるのではなく、これまで2次元でやってきた流れを変えず、そのままBIMに移行していくことが大事であり、Archicadは2次元からBIMにステップアップしていく際、とても相性の良いツールだと思う」と説明する。

学生には、あえて2次元の作図から教えることを心がけている。「携帯電話が登場してから、子供も大人も漢字が書けなくなった。この現象がBIMや建築製図にも同じことが言える。手書きでは調べたり、理解できないと書けなかったものが、BIMの便利なツールや既存の部品を配置すれば平面も断面もそれっぽく完成してしまうため、断面図に梁が書かれていなくても、そこに気づけなくなってしまう」
以前はBIMを自在に使いこなせる即戦力の学生を育てようと取り組んでいたが、大半の学生は覚えることで精一杯になってしまう反省があった。「基礎を学び、設計のあり方、意味合いを理解してもらうことから始めよう」と方向転換した。
授業では「思考の部分」を大切にしている。あえてArchicadの機能を限定した使い方をさせることで建築模型レベルの表現にとどめさせている。「自分の思い描いたプランをすぐに描けることが重要であり、それによってアイデアを形にする楽しさが芽生えてくる」との思いからだ。
_ページ_01-scaled-e1776865470698-1024x724.jpg)
3年生に進級する頃になると、ほとんどの学生はArchicadを使いこなせるようになるため、BIMとしての実施設計のスキルも養わせたいと、建築家の安藤忠雄氏が手がけた代表作品の1つ『住吉の長屋』を題材に平面詳細図だけでなく、どこを切っても正しく表現される断面詳細図や、全ての部屋の展開図が作成できるような、本来のBIMワークフローも伝授している。
Archicadは「点と線と面」を描く基本操作をマスターすることによって「すべてのツールを使いこなすことができる」と強調する。学生に製図を学ばせる際にも点と線と面の使い分けを意識して覚えさせているように、実務者が初めてBIMに挑戦する際にも「Archicadで2次元設計に取り組む」ことをアドバイスするようにしている。
中には2次元CADとBIMのハイブリッドで進めていくケースをよく見かけるが、「あえてArchicadで2次元設計を進め、少しずつ機能に慣れながら、3次元機能にステップアップしていくことをおすすめしている。無理をせずできる部分から成功事例を積み上げることが何よりの近道」と付け加える。

24年8月に発刊した著書『7日でおぼえる Archicad』は、1日目から5日目までは機能ごとに学習し、6日目と7日目で住宅モデルを作成する分かりやすさが人気の入門書だ。「基本操作からレイヤー機能までの部分をしっかりとマスターすることが大事で、何よりもビュー(印刷やレイアウト用の設定済み図面)の概念を理解する部分がArchicadを好きになれるか否かの境目」と解説する。
BIM Classesは今年4月から枠組みが新しくなり、ビデオ講座でArchicadの主要機能をじっくり学べる「Standard」プランと、講師陣から直接アドバイスを受けられる「Premium」プランの構成となった。木島さんら講師が学び方を助言するコーチング(1回30分オンライン×6回)では、受講生に合った目標の設定とそれに向けてのステップアップの流れを提示し、どのビデオクラスを重視していくべきかを助言する。「重要なのはきちんと優先事項を決めて、目的を持って取り組むことであり、最初から全てを学ぼうとするのでなく、できるところから焦らず一歩ずつステップアップしほしい」と呼び掛ける。

BIM Classes:グラフィソフト製品を中心にBIMを体系的に学べるオンラインスクール。初級から上級まで段階的に設計されたカリキュラムにより実務に即したBIMスキルを無理なく身につけることができる。ビデオ講座でArchicadの主要機能をじっくり学べる「Standard」プランに加え、講師によるマンツーマンコーチングや質問クラスを通じて理解を深められる「Premium」プランで構成する。受講者のレベルや目的に合わせた柔軟な学習環境が、多くの実務者に支持されている。詳しくはこちら