特集 step up BIM ③

Archicadの強みを引き出そう 
小川 裕香さん

 BIMを学び始めた学生、BIMに挑む実務者、そしてBIMへの再挑戦を誓う設計者たち。さまざまな思いを抱きながらBIMと向き合おうとしている。グラフィソフトジャパンが主催するオンラインBIM教育プログラム「BIM Classes」の講師たちも同じようにBIMとの出会いがあり、悩みながらも一歩ずつBIMを自分のものにしてきた。特集「step up BIM」では、7人の講師それぞれの思いを通して、BIMとの向き合い方を探る。


 「俯瞰的に見てほしい」。小川裕香建築設計事務所(大阪市)を主宰する小川裕香さんは、グラフィソフトのBIMソフト『Archicad』との向き合い方について、そうアドバイスするよう心がけている。1つのモデルを軸に設計が進むArchicadでは「全体のワークフローや仕組みをきちんと理解していないと迷子になってしまう。ひとつひとつの設定や機能がどこに、どうつながっているか。その関連性を理解することから始まる」。その先にある「楽しむ」ことに導くためにも「Archicadの強みをしっかりと引き出してほしい」と呼び掛ける。

Archicadとの向き合い方について「俯瞰的に見てほしい」と語る小川裕香さん

 京都工芸繊維大学で建築を学び、集合住宅専門の設計事務所とアトリエ事務所を経験し、2003年に独立した。Archicadを使うようになったきっかけは、2013年に自邸を設計した際に実感した〝思い〟がもたらした。1階に自らの事務所、2階に住居を兼ねた設計プランは満足のいく作品に仕上がったものの、こだわり抜いた結果として「設計の大変さ」を改めて痛感した。

 「模型をたくさん作り、3次元にも挑戦した。いろんな手段を使って取り組んだことで思考が分断され、仕上げるまでにかなりの時間をかけてしまった。自邸だからこそ、ここまで突き詰めて仕上げることができたが、この苦労を今後も続けるのは難しいと自分自身も感じていた。その悪戦苦闘している私の姿を見かねた設計事務所に勤める夫から、薦められたのがArchicadだった」

きっかけをつくった自邸(内観)

 自邸が無事に完成し、一段落したタイミングでArchicadの導入を決めた。当時はAutoCADを愛用し、講師としても活動していた。当初は3Dモデルの検討にだけArchicadを使い、独学で少しずつ機能を習得してきた。「自分自身の中で納得して使いこなせるまで2年ほどかかった」。ちょうどタイミングに合わせるようにグラフィソフトジャパンからBIM Classesの前身となる初心者向けトレーニングプログラム「JUMP」の講師として声をかけられた。

 「講師の経験もあったことから教えることへの抵抗感はなかったが、Archicadのことを熟知した上で教えたいという私自身の思いもあり、誘いを受けてから3カ月かけて猛勉強した」。JUMPのテキストを何度も読み返し、機能を頭にたたき込み、理解できない部分はグラフィソフトジャパンの担当者に質問する日々が続いた。「この時の学びが、私のArchicad講師としてのベースになっている」と振り返る。

 Archicadは、最初から最後まで1つのモデルを軸に作業が進んでいく。「実際に建物を作っていくような感覚で設計を進められる部分が他のBIMソフトや2次元CADとは大きく異なる。確定した情報をモデルに追加していく流れになり、まだ決まっていなければ保留したままで作業を進めることができ、とても設計がしやすい。私の設計の進め方も、模型を作成することがなくなり、スケッチも含めて全てArchicadの中で全てを作業するスタイルになった」

Archicadを「優秀なスタッフ」と例える

 Archicadを使い始めた設計者の中には「図面作成」の部分につまずくケースが少なくない。モデルから図面を自由に切り出せることがArchicadの強みだが、その設定が間違ってしまえば、思うような図面を出力できず、調整の時間ばかりが過ぎてしまう。自動計算の部分を担う「情報管理」設定も同様だ。「全体を俯瞰的に見ることがとても大切で、一つの操作がどう関連付いているかをきちんと把握していくだけで、図面作成や情報管理への理解も進むと思う」

 小川さんが常に心がけているのは「設計の時間を取り戻す」ことだ。「設計の仕事は図面整理などの雑用がめちゃくちゃ多い。その作業はBIMで徹底的に効率化できるようにして、デザインに集中できる環境を整えている。Archicadは優秀なスタッフが1人いるような感覚だ。自分が楽しいと思える作業に没頭できる時間を作り出すためにも、Archicadを深く理解し、大いに活用してほしい。そうすれは設計が今よりももっと楽しくなるはず」

設計中のいちご農家から依頼された販売所の図面

 本業の設計活動は「クライアントに恵まれている」というように「一つの作品を手がけると、ありがたいことに次の仕事の依頼が来る」流れが続いている。現在は奈良県内のいちご農家から依頼された販売所を設計中。「設計と講師を両立しながら自分のペースで楽しく仕事ができているのも、BIMという心強いスタッフのおかげ」と考えている。

特集 step up BIM

(1)「 Archicadを好きになろう 」木島 裕太郎さん

(2)「 過程を大切に少しずつ先に進もう 」奈木 紀子さん

(3)「Archicadの強みを引き出そう」@@小川 裕香さん


 BIM Classes:グラフィソフト製品を中心にBIMを体系的に学べるオンラインスクール。初級から上級まで段階的に設計されたカリキュラムにより実務に即したBIMスキルを無理なく身につけることができる。ビデオ講座でArchicadの主要機能をじっくり学べる「Standard」プランに加え、講師によるマンツーマンコーチングや質問クラスを通じて理解を深められる「Premium」プランで構成する。受講者のレベルや目的に合わせた柔軟な学習環境が、多くの実務者に支持されている。詳しくはこちら

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