特集 step up BIM ⑥

Archicadを触り続けよう 
福光 春子さん

 BIMを学び始めた学生、BIMに挑む実務者、そしてBIMへの再挑戦を誓う設計者たち。さまざまな思いを抱きながらBIMと向き合おうとしている。グラフィソフトジャパンが主催するオンラインBIM教育プログラム「BIM Classes」の講師たちも同じようにBIMとの出会いがあり、悩みながらも一歩ずつBIMを自分のものにしてきた。特集「step up BIM」では、7人の講師それぞれの思いを通して、BIMとの向き合い方を探る。


 「とにかくArchicadを触り続けよう」という恩師の言葉を胸に刻みながら、福光春子さんは麻生建築&デザイン専門学校の教育部プレイングマネージャーとして日々教壇に立っている。学生には「教え過ぎない」ことを重視している。「自分自身で調べ、試行錯誤しながらArchicadと向き合う。少しずつでも前に進むことが、設計する楽しさにつながる」。それは福光さん自身が実務で心がけていることでもある。

学生には「教え過ぎない」ことを重視している福光さん

 建材メーカーの設計部門で働いていた福光さんが建築士資格を取得したタイミングで、母校でもあった同校への転職を決めたのは2003年のことだ。実務の経験を生かし、製図やCADなどの授業を担当してきた。BIMとの出会いは、2013年に産休から復帰したタイミングだった。

 同校では、BIM元年(2009年)前から3次元ツールを取り入れた授業を進めてきた。建設業界で急速に広がり始めたBIMを教育カリキュラムに取り組むことが「学校としてのさらなる強みになる」と考え、そのカリキュラムづくりの担当に福光さんを任命した。

麻生建築&デザイン専門学校でArchicadを使った授業が始まったのは2015年から

 「Archicadは直感的な操作性で学生が扱いやすく、ソフトを起動した際のビジュアルも素敵で学生にも好評だった。何より学生が無料で使えるアカデミック版を提供していることも授業に取り入れやすかった」。正式にArchicadを使った授業がスタートしたのは2015年からだ。

 独学でArchicadの操作をマスターした福光さんだったが、BIMの現場経験がなかったため、グラフィソフトジャパンに相談し、経験豊富な実務者の講師を紹介してもらった。それが「恩師」と仰ぐ道脇力さん(KOVALENS代表)だった。「道脇先生が来てくれて、複数のクラスで授業が動き出した。私は助手として先生の教えている内容を吸収してきた。そこで学んだのがArchicadを触り続けることの重要性であり、それが上達の近道であることだった」

 同校で建築を学ぶ生徒は約600人に達する。当時、建築CAD科だけに設けていたBIMの授業は現在、建築工学科や建築学科でも行われており、福光さんを含む4人の講師がArchicadコースを受け持っている。「モデルをつくって終わりではない。BIMが情報を管理するツールであることについても、学生に伝えるように心がけている」

BIMゼミ風景

 「I(インフォメーション)」の部分に興味をもつ学生も多く、2016年4月からは向上心をもつ学生向けの「BIMゼミ」も立ち上げ、23年度にはBIM実施図面作成に特化した「BIMゼミ2」、25年度からは福光さんから受け継いだ新たな講師陣で「BIM-begin」も動き出した。日本建築士事務所協会連合会が主催するマロニエBIM設計コンペティションにも学校として積極的に参加しており、2023年度大会では最優秀賞(国土交通大臣賞)を受賞するなど、全国的にその名を知らしめた。

 「学生にはあまり深くまで教え過ぎないように心がけている。それによってArchicadで設計する楽しさを感じてもらいたい」。ただ、モデルと図面がリンクしているBIMのあり方については「しっかりと理解してほしい」と、モデルの修正に合わせて出力図面が変わる状況を、アニメーションなどを使って説明している。「学生には言葉や文章よりも可視化して説明することが理解をうながすコツの1つ」と強調する。

BIMゼミプレゼン大会

 実務者を対象にしたBIM Classesの講義では「細かなディテールまで教える」よう心がけている。特に重要視しているのが「テンプレート」だ。福光さんは同校に属しながら2019年に個人事務所「H design assist」を立ち上げ、BIMプロジェクトへの設計協力などの仕事にも取り組んでいる。「教えることと同じくらい、楽しくBIMの仕事をしている。チームで設計を進める過程を経験できることは、授業への新たな学びとして吸収できている」

プロジェクトチームの一員として活動する中で、改めて痛感したのは「モデルから図面へと落とし込む作業の大変さ」であり、だからこそ「テンプレートをきちんと整えておく」ことの重要性だった。 「私たちが日々使用しているテンプレートは、ArchiCADに精通し、豊富な現場経験を持つプロジェクトリーダーが、長年の実務と試行錯誤を通じて作り上げてきたものを利用している。その蓄積された知見が作業効率と品質の両方を支えている」と受け止めている。

 実務者の中にはBIMを導入したものの、暗礁に乗り上げるケースも少なくない。「地道に経験を積んでいくしかない。小さなプロジェクトから試行的にチャレンジし、とにかくArchicadに触れていく。Archicadは2次元ツールとしても使え、文章も書けてしまう。日々使い続けることが何よりも大事。それはまさに恩師の教えであり、講師の立場から常に私が発信し続けているメッセージでもある」と思いを込める。

 BIM Classesの講義は4月からプランが一新された。Archicadの主要機能を学べるビデオ講座は中身も一層充実した。「理解するまで繰り返し聴講してほしい。仕事しながらの受講で大変かもしれないが、理解してから次に進むことが何よりの近道だと思う。Archicadは多機能で1つの作業を進める上でもいくつかのアプローチの仕方がある。自分のやりやすく、理解しやすい進め方を追求してほしい」。常に受講者や学生の目線に立ったアドバイスを心がけている。

特集 step up BIM

(1)「 Archicadを好きになろう 」木島 裕太郎さん

(2)「 過程を大切に少しずつ先に進もう 」奈木 紀子さん

(3)「Archicadの強みを引き出そう」小川 裕香さん

(4)「支え合える仲間と一緒に前へ進もう」新 貴美子さん

(5)「踏み出すためのきっかけを与えよう」山上 健さん

(6)「Archicadを触り続けよう」福光 春子さん


 BIM Classes:グラフィソフト製品を中心にBIMを体系的に学べるオンラインスクール。初級から上級まで段階的に設計されたカリキュラムにより実務に即したBIMスキルを無理なく身につけることができる。ビデオ講座でArchicadの主要機能をじっくり学べる「Standard」プランに加え、講師によるマンツーマンコーチングや質問クラスを通じて理解を深められる「Premium」プランで構成する。受講者のレベルや目的に合わせた柔軟な学習環境が、多くの実務者に支持されている。詳しくはこちら

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