「BIMの先にある問い」第2幕へ
これまで5回の連載で、「BIMの先に何があるのか」を考えてきました。ただ、書き進める中で、十分に扱えなかったことや、その後新たに見えてきた課題も少なくありません。振り返ってみると、「BIMの先」は一本道ではなく、いくつもの道に分かれているように思います。
そこで、ここからは「BIMの先にある問い」の第2幕として、その途中で見えてきた道を一つずつ辿りながら、実際に試したことや気になった事例なども手掛かりにして、「BIMの先」にあるものの輪郭を少しずつ描いてみたいと思います。
最初の問いは、「BIMは人が最初から作るものなのか?」です。
「3DからBIMまでは、まだ少し距離がある」と思っていた
第2回「設計プロセスは逆転するか」では、生成画像や写真を元に3Dモデルを作る取り組みを紹介しました。このような3Dモデルの生成方法は、以前より容易になってきた一方で、そこからBIMに至るまでには、まだ少し距離があると私は考えていました。
第1幕を書いていた頃からの短い間にも、AIのコーディング能力は大きく向上し、AIとの対話やAIエージェントを使って、Webアプリや様々な設計ツールを作ることが以前よりずっと身近になりました。また、最近のフロンティアAIモデルでは、3Dモデリングの能力もさらに向上しています。
今回紹介するのは、少し前、自分の仕事部屋を題材にした試みです。室内写真を何枚かAIに見せ、写真に写っている机の幅を基準寸法として伝え、部屋や家具の3Dモデルを作らせてみました。寸法や形状のおかしなところは、AIと対話をしながら修正しましたが、自分では一切モデリングすることなく、3Dモデルを表示するWebアプリまで作らせることができました。

本題からは外れますが、このWebアプリでは、環境センサーやスマートリモコンと接続し、現実の部屋の温度や湿度、照度などを3D空間に反映するとともに、3Dモデル上から現実の照明を操作できるようにしています。その結果、現実の部屋とバーチャルの空間が双方向につながる、小さなデジタルツインが出来上がりました。
AIは「形」だけを見ているわけではない
この3Dモデルを作らせている途中で、もう一つ気づいたことがあります。AIは、写真に写っているモノの形状だけでなく、「これは机」「これは椅子」というように、それらを認識・分類し、3Dモデルとして組み立てているようでした。つまり、3Dモデルを作る過程で、そのモノが何であるかという情報も把握していることになります。
そこで、家具や壁、床などのオブジェクトに、AIが認識した名称や分類、それぞれのオブジェクトの意味や、窓と窓枠のような部材同士の関係性、推定した製品名や機能などの属性を持たせてみました。例えばWebブラウザ上で椅子を選択すると、「家具」「チェア」といった分類や、AIが推定した仕様などが表示されます。

ここまで来ると、次に試したくなるのがIFCです。AIが認識した情報を元に、適切なIFCクラスやプロパティを推定して各オブジェクトに付与し、WebアプリからIFC形式で書き出せるようにしました。そして、そのIFCファイルをRevitで読み込んでみると、モデルの形状だけでなく、IFCのクラスやプロパティなども確認することができました。

BIMモデルを作る選択肢が広がる
今回試したことを一つの流れにすると、次のようになります。

従来、BIMモデルは、人がBIMソフトを使って壁や床、建具などを配置し、必要な属性を入力しながら作成するのが一般的でした。しかし今回は、写真をAIが読み取り、そこから推定した形状と、オブジェクトの意味や関係性、属性などの情報を3Dモデルに反映し、国際標準フォーマットのIFCを介してRevitまでつながっていて、BIMソフトが登場するのは最後だけです。
今回のように、実際の部屋の写真からだけでなく、画像生成AIで作成したイメージやスケッチ、既存の図面、点群データなどからも、BIMモデルを作れるようになることも考えられます。
また、第3回「設計検討の進め方が変わる」で紹介したように、AIが自然言語の指示に従ってBIMソフトを操作したり、スクリプトを実行したりする方法や、今回のようにIFCデータを直接生成し、BIMモデルとして利用する方法もあります。こうした様々な情報と作成方法を組み合わせることで、BIMモデル作成のための選択肢が広がっています。

このような動きを見ていると、以前、私が感じていた「3DからBIMまでの距離」も、少し違って見えるようになりました。AIの進化は非常に速いので、この記事が掲載される頃には、さらに高い精度で、もっと簡単にBIMへとつながるようになっているかも知れません。
写真からBIMが完成したわけではない
今回作ったBIMモデルについても、形状や寸法、オブジェクトの分類、IFCクラスやプロパティには不確かな部分があります。写真からBIMモデルを生成できたとしても、その情報がどこまで信頼できるのかを確認し、実務で利用するためには目的に応じた修正が必要です。
ただ、これはAIが作ったモデルに限った話ではありません。人が作ったBIMモデルにも、入力ミスや解釈の違い、十分に確認されていない情報が含まれることがあります。モデルの正確さや信頼性は、人が作ったかAIが作ったかという違いだけで判断できるものではありません。
BIMを「作る」とは何か
BIMの価値の一つは、建物の形状に、部材や空間の意味、それらの関係性や属性が結びつき、設計・施工から維持管理・運用段階まで活用できることにあります。AIが画像や図面などから、こうした情報まで把握できるようになると、「BIMを作る」という行為そのもののあり方も、大きく変わっていくのではないでしょうか。
「BIMは人が最初から作るものなのか?」
今回の試みを通して、これまで当たり前だと思っていたBIMの作り方が、多様になってきていることがわかりました。
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