4月から建築確認の新たな制度としてBIM図面審査がスタートした。先陣を切るように、その一歩を踏み出した設計者たちは、どのような思いでBIM図面審査と向き合ったか。オートデスクの協力を得てBIMソフト「Revit」のユーザーから、梓設計の日高陽子BIM戦略室サブリーダー/BIMマネージャー、西松建設のデジタルコンストラクションセンター設計BIM課に所属する野老菜実副課長と尾毛谷阿弓主任、アーキ・キューブ一級建築士事務所の大石佳知代表取締役、オートデスクの田中宏尭技術営業本部テクニカルソリューション部テクニカルスペシャリストの5人に集まってもらい、BIM図面審査への率直な思いを聞いた。
目的を決めて新たな枠組みを有効活用しよう

――BIM図面審査を活用した申請の状況は
野老 西松建設では6月に事務所ビルと7月に物流倉庫でBIM図面審査を活用した確認済証の交付を受けました。いずれも規模は延べ1万㎡に達します。BIM推進の立場にある設計BIM課としてパイロット的に取り組もうと設計者に働きかけ準備を進め、申請時期のタイミングが合った2件で先行して取り組むことができました。その他にも2件、申請に向けた準備を進めています。
大石 アーキ・キューブでは7月に2階建て延べ120㎡の戸建て住宅で済証を取得しました。長期優良住宅として申請したこともあり、確認申請とは別に技術的な審査があり、済証が交付されるまで2カ月ほどかかりました。当社では私も含め所員7人全員がRevitを愛用しており、BIM確認申請にはこれからも積極的に取り組んでいきます。現在は事務所ビルと戸建て住宅の申請を準備しており、こちらもBIM図面審査を活用します。
日高 梓設計では私が設計を担当している延べ1万3000㎡の工場がBIM図面審査の初弾プロジェクトとなり、現在は事前審査を終え、本申請を行った段階になります。当社はほぼ全てのプロジェクトでBIMを使っています。BIM図面審査に先行して取り組んだ今回の成果を社内に水平展開をして順次、広げる計画です。
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――申請時に準備した点は
日高 実は今回、かなりミニマルな使い方をしました。チェックリスト(誓約書)の項目の中で、建物面積と防火区画面積に限定し、その部分だけを審査の対象にしてもらいました。他の項目まで適合させた場合、設計作業上の負担が増えるイメージがあり、面積の部分以外は通常の審査で対応しました。
従来の求積表の計算式の明示が必要なく、エリア求積で面積が出せるため、変更にも対応しやすいと考えました。表の体裁なども整える必要がなく、モデルの方で修正をかければ、そのまま図面につながっていくため、これが一番ミニマルな使い方だという結論に達し、取り組むことにしました。
面積については圧倒的に手間が少なくなり、審査側も見るべき数字が整理された状態で出てくるため、お互いにメリットを感じられたと考えています。このやり方であれば、社内のほとんどのプロジェクトがBIM図面審査に対応できると判断しています。
大石 アーキ・キューブでは、RUG(Revitユーザーグループ)が作成したテンプレートをベースに、木造・鉄骨造それぞれの設計に対応できるよう、社内のBIM図面審査を見据えた独自のアレンジを加えました。防火設備の記号を入出力基準に適合させるなど、複数の見直しを重ね、社内テンプレートとして整備・更新しました。今回の申請では最終的にRUGのテンプレートを使用しましたが、一連の検討を通じて、自社の設計・審査業務に適したテンプレートへとバージョンアップできたことは、大きな成果の一つです。
尾毛谷 西松建設では、まずBIMで出図する図面の整理を行いました。その結果、意匠では面積表・仕上表・防火防煙区画の表現を含めた一般図、建具表、構造では伏せ図、軸組図、鉄骨詳細図、設備ではBIMから出図した意匠図を下絵にした各種平面図や機器表など、設計担当者と相談しながら、出来るだけBIMからの図面作成に取り組みました。今回は、当社のテンプレートで対応できる図面で確認申請に必要なものは出来るだけBIMから出図するスタンスとしました。
田中 実は私も以前は意匠設計者として活動していたため、皆さんが工夫して、それぞれのベストプラクティスを見つけて前向きにBIM図面審査に取り組んでいることがわかりました。オートデスクではBLCJ(BIMライブラリ技術研究組合)がまとめたサンプルモデルをRevitユーザー目線で解説したサポートガイドを公開するなど、設計者が少しでもBIM図面審査に取り組みやすいように下支えし、BIM図面審査の普及を後押ししています。

――申請のメリットは
大石 われわれがそうであるように、設計者の多くは業務の効率化や省力化を目的にBIMを導入しています。そのBIMデータを使って確認申請ができるということは、BIMを使う設計者にとってはプラスでしかないというのが私の考えです。導入効果としていずれは審査日数の短縮につながればという期待を持っています。
アーキ・キューブの場合、長期優良住宅の申請もあり、済証が交付されるまで2カ月はかかると言われていましたが、実際には2カ月弱で申請が下りました。今後、一般化してくれば審査短縮にもつながってくるだろうという期待を持っています。設計者がBIMを使って効率化を目指すように、審査側もBIM図面審査という新たな枠組みを有効に活用してほしいと感じています。
尾毛谷 BIM図面審査では誓約書作成など、設計者の負担は増えますが、審査日数の短縮に繋がるのであれば設計者にとっての大きなメリットになると思います。確認検査機関が協力的だったこともあり誓約書やCDEの運用について相談しながら申請を進められ、先行した2件の内1件では想定よりは早く済証を取得できました。
野老 ただ、消防同意が確認申請CDE(共通データ環境)に対応していない地域でしたり、CDE環境が整っていても初めての操作で時間がかかる等の懸念があったこともあり、これまでと同じように郵送での対応となりました。ここがCDE上で行われるようになれば、郵送の行き来でさらに1週間前後の短縮ができたと考えています。
日高 梓設計の場合、誓約書でモデルから全て自動で面積を出していることを事前に伝えたこともあり、確認検査機関には出てきた数字をそのまま正として扱ってもらうことができました。従来は審査者が面積を計算して確認する作業があった点でも、お互いに効率化が図れたと考えています。
野老 今回の申請で、審査側の指摘事項を見ると、法的な内容の記載や条例関係の条件などに関連したものに限られていました。これまで経験した他のプロジェクトでは図面間の整合性確認に関連したものが少なからずありましたが、今回は整合性の部分に関連する指摘は一切ありませんでした。西松建設の方針としてなるべく図面に加筆をしない方針で図面を作成しています。それを審査側に説明して誓約書には備考欄に入れるように工夫しました。そこは今回すごくいい方向に影響が出たのではないかと考えています。

――BIM図面審査交付の成果をどう展開するか
日高 今回先行した経験を踏まえ、社内で他の設計者が無理なく対応できるポイントをしっかりと伝えることが私の役割になります。直近で申請業務がありそうなプロジェクトに絞って声がけしBIM戦略室がアドバイスしていく予定です。当社ではBLCJからサンプルモデルが公開されたタイミングで、それを踏襲した社内のBIMテンプレートを整備しました。法規的な部分や表現の仕方なども先行して整備を終えているため、今後はBIM図面審査への対応を社内に水平展開し一層のBIM推進を進めていこうと考えています。
尾毛谷 社内の報告会で、先行したBIM図面審査の対応や制度の運用実態を共有する予定です。西松建設としてBIM図面審査の一号交付を受けたことを社内イントラネットでお知らせしたことをきっかけに、設計者たちの制度への意識の変化も感じています。報告会ではオンラインや見逃し配信も併用して、全国250人ほどの設計者へ発信する予定です。
大石 アーキ・キューブは小事務所であるだけに、BIM図面審査への意識づくりがとてもしやすかったという印象を持っています。全員がRvitで設計をしている環境もあり、国がBIM図面審査に踏み切った流れを踏まえて意思統一を図ることができました。所員の半分以上が20代という点もBIMという新たな流れへの対応がしやすかった要因の1つだと考えています。