オートデスクの内装・ディスプレー業界向けラウンドテーブルに登壇した乃村工藝社と三井デザインテックの取り組みでは、BIMデータを新たな価値に転換していく流れがクローズアップされ、特に環境配慮とBIMの関係性は両社に共通するキーワードになっている。

2025年度からBIMソフト「Revit」の導入を始めた三井デザインテックでは、オフィス系プロジェクトを軸にBIMを展開している。クリエイティブデザインセンターの渡部崇ワークプレイスデザイングループ長は「空間認識がしやすく、構成要素が標準化され、面積や座席数など数量も把握できる点でも、オフィスとBIMの相性は良い」と強調する。
施工段階への展開も見据えている同社は、どこを重点的に進めていくべきか、施工でのBIMデータ活用に向けた課題整理にも着手した。堀内健人クリエイティブデザイン推進室長は「設計、施工、維持管理までデータをつなげることで、BIM導入の価値の幅は広がっていく」と先を見据えている。Revitへの移行に並行して、建設クラウドプラットフォーム「Forma」の活用も始めた。渡部氏は「共通基盤で作業できることで関係者間の合意形成もより迅速化できる」と期待を持っている。
同社は循環型建築デザインの先駆者であるオランダ設計事務所のRAU Architectsと協業に向けた基本合意を結ぶなど、資源を循環し続けるサーキュラーデザインへの展開を始めた。堀内氏は「家具やインテリア商材の循環可能性を高めるDPP(デジタル・プロダクト・パスポート)の仕組みを取り入れている。BIMとの親和性も高く、将来を見据えてBIMとサーキュラーデザインの融合を確立していきたい」と思いを込める。

BIMと環境シミュレーションの組み合わせは、乃村工藝社も重視しているテーマの一つだ。25年5月に本社4階に設置したリクルーティングスペース「Tokeru(トケル)」は、企画から設計、施工の全工程でBIMをフル活用した。サステナビリティ事業連携課兼BIM教育課の妙中将隆課長は「デザインの段階からCO2分析を行い、最適な施工方法や素材を選定した。空調や音、照明の視点からもBIMデータを使ってシミュレーションすることで、空間の快適性を突き詰めた」と強調する。
同社は商業施設・ホテルなど全方位でBIM導入を推し進め、設計・施工領域横断のBIM活用も進展している。設計DX推進部BIM教育課の岩崎怜主任が「社員一人ひとりのBIM活用状況を把握するため、どの案件でどのように活用したかを記録するユーザーカルテと、活用レベルを把握するスキルチェックシートを使い、設計担当に寄り添い目標を提示している」と説明するように、同社は着実にBIM活用率を高めてきた。
妙中氏は「Revitだけでやりきることにはこだわっていない。制作段階では3次元モデリングツールが欠かせない。デザイナーがクリエーティビティーを発揮するため最初のスケッチでは手書きを認め、まとまった段階でRevitに移行する流れも意識している」と付け加える。これはラウンドテーブルの基調講演を務めた建築家の中山佳子氏(中山佳子設計企画)が強調した「いいとこどりBIM」の考え方にも通じている。
いかに空間の価値を生み出し続けるか。内装ディスプレーのBIMトップランナーに共通するのは、BIMありきではなく、空間を最適化するための手段としてBIMを活用しようとしている点だ。「意思ある空間を貫き通すためにBIMを活用している」。中山氏が基調講演で強調したメッセージはまさに船場、丹青社、乃村工藝社、三井デザインテックのBIM推進担当が社内に伝えようとしている思いでもある。
この記事は 建設通信新聞 からの転載です
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