オートデスクが主催した内装・ディスプレー業界向けラウンドテーブルは、設計者やデザイナーが空間の価値を生み出すため、BIMをどう利活用しているかを浮き彫りにした。「意思ある空間を貫き通すためにBIMを活用している」。基調講演で登壇した建築家の中山佳子氏(中山佳子設計企画=YNAA)のメッセージは、まさにラウンドテーブルの各セッションに通じる象徴的なキーワードとなった。空間の価値づくりとBIMの関係性を追った。

日本インテリアプランナー協会主催の「インテリアプランニングアワード2023」で最優秀に輝いたバスターミナル東京八重洲は当時、日本設計に所属していた中山氏が責任者としてデザインディレクションを担当した代表作の一つ。東京駅前の段階的な再開発に連動しながら2022年9月に第1期エリア、今年3月には第2期エリアが完成し、29年の完成に向けて第3期エリアも整備が進行中だ。中山氏は独立後もYNAAとして業務を継続し、空間デザインだけにとどまらず、サインや什器(じゅうき)、関連工事などのデザインマネジメントにも携わる。
「これから旅立つ人、到着して一息つく人など、バスターミナルは目的と速度が異なる人々が共存している。流動空間(乗り場、通路)と対流空間(待ち合わせ、総合案内)をいかに融合させるか。デザイン検証ではBIMが欠かせなかった」と振り返る。

待ち合い空間では夜空に浮かぶ明るい雲をデザインのモチーフとし、流動と対流の二つの空間を仕分けた。一目でサインがわかるように柱部分を活用し、高天井をぐるりとつなぐ照明が道しるべとなり、流動の流れを演出した。白い雲のような天井を一息つける対流空間とした。
関係者は多岐にわたり、整合調整を進める中で「いかに共感を可視化できるか」を重要視し、デザイン提案書に加え合意形成についてもBIMを活用した。「ただ、主要ディテールは手書きで描き、原寸大のモックアップも作成し、光の見え方なども検証した。BIMは使えるところに使う。『いいとこどり』が私のやり方」と強調する。
デザインマネジメントにも精力的に取り組んだ。策定したデザインガイドラインに沿ってサインやカウンター、自動販売機のパネルも含め空間に統一感を持たせた。これまで最低限の機能性のみでつくられたバスターミナルが多い中で「新たなデザインの領域を確立し、既存の価値を変えられたことは自身にとって、とても良い経験になった」と総括する。

24年に独立した中山氏は日本設計時代も含め、これまでに20件ものプロジェクトにBIMを活用してきた。心掛けているのは「案件ごとにフィットする機能を取捨選択していく」ことだ。「空間の価値を導くために最適な検討手段を組み合わせていく。常に共感を空間化することをテーマに置きながら、いいとこどりBIMを心掛けている。だからこそプロジェクトによって『BIMの花』は形を変えていく」と強調する。バスターミナル東京八重洲では、コミュニケーションと合意形成を重視したBIMの花が咲いた。
「BIMは全てができる魔法のツールではない。BIMを使うことを目的化してはいけない。空間をデザインする上で、一番効果的なゴールとは何かを自分自身で考えることが大事で、それを実現するためにBIMで何ができるかを見定めていく。私自身の描く意思ある空間を導くためにBIMを活用している。時には設計者の職能領域を飛び越えて新しい挑戦を繰り返していくことも重要になる」。中山氏の講演に続いて登壇したBIMトップランナーの内装ディスプレー各社も、同様の考え方を胸にBIMと向き合っていた。
この記事は 建設通信新聞 からの転載です
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