「積算データの価値にこだわりたい」と語るのは日積サーベイの生島淳平取締役システム開発部部長だ。建築積算システム『HEΛIOΣ(ヘリオス)』を展開する同社は企業のBIM導入拡大の流れに呼応するようにHEΛIOΣのBIM対応力を引き上げてきた。積算BIMへの注目が高まりを見せる中、先駆者の目線はどこに向けられているか。生島氏に聞いた。

6月18日に概算BIMと積算BIMをテーマにした同社のウェビナーには、過去最大となる600人を超える参加者が集まった。例年400人規模で推移してきただけに「BIMデータ連携への関心が積算分野にも高まってきた状況が後押しになっている」と手応えを口にする。
最近は生成AIの急速な進化を背景に、BIMデータ連携による自動化への取り組みに注目が集まっているものの、「当社はあくまでも積算の根拠出しの部分に注力し、積算データを新たな価値として生み出すための道筋を作っていきたい」と強調する。

2026年12月にリリース予定の最新HEΛIOΣ2027では、積算の根拠を見える化する機能の強化を重要視している。「積算は設計データを根拠のある形にしていく作業であり、出てきた数字の内訳まで追って確認できるようにしていく。過程が抜けてしまうのはAIも同様であり、なぜその答えが導き出されたのかが見えない。結果の根拠をしっかりと追いかけられるようにすることが積算専門ツールとしての存在価値にもなってくる」と思いを込める。
リリースから22年目を迎えるHEΛIOΣの進化は、まさにBIMを軸に積算データの価値提供を突き詰めてきた歴史でもある。2009年のBIM元年を境に、同社はBIM対応に舵を切り、11年にIFCデータ連携環境を整え、16年以降には主要BIMソフトであるRevit、Archicad、GLOOBEとのダイレクト連携を順次実現した。
特に22年にリリースしたBIMアドイン概算システム『COST―CLIP』は、RevitとArchicadの上で動作する設計初期段階における概算コスト算出ツールとして注目を浴びた。「特に近年は労務費や資機材の高騰を背景に基本設計段階と実施設計段階のコストの乖離が広がり、根拠のある概算コストを導きたいというニーズがより強まっている」

これまでは、概算段階で部位ごとのコスト把握がしやすいよう「部位別」の集計を採用していた。そもそも実施設計段階では工種ごとにコスト算出することが一般的であるため、部位別では比較検証がしにくい状況があった。6月にリリースした最新COST―CLIPバージョン5・0では、概算段階から工種ごとにコストを算出したいというユーザーからの要望を受け、「工種別」集計への対応機能を追加した。
4月から確認申請の新たな枠組みとしてBIM図面審査がスタートし、企業のBIM導入機運がこれまで以上に高まりを見せ始めている。「BIMを使い始める設計者が増えれば、積算事務所もBIM対応を強く意識するようになり、それがHEΛIOΣの新規需要にも結びついてくる」と期待している。
既に積算事務所では、2023年度から国土交通省官庁営繕部でBIM積算の試行が始まったことを契機に、BIMへの対応を強める動きが広がりつつある。「29年春から確認申請のBIMデータ審査が控えている点も積算BIMへの対応を意識させる要因になっている」と付け加える。
HEΛIOΣのユーザー企業は現在1100社を数える。積算BIMにチャレンジしたいという動きを背景に、新規ユーザーは着実に増え、社内に置く導入サポート部隊の出番も多くなっている。操作説明から運用支援までを行い、場合によっては実物件での変換作業も協力している。「積算BIMの需要がさらに高まれば、サポート体制の拡充にも乗り出したい」と考えている。

同社はHEΛIOΣを軸に、積算データの価値向上を常に追求してきた。HEΛIOΣ2025と2026では見積書機能から出力した工事内訳を利用してCO2排出量の算定業務の効率化機能を実装した。住友林業の建物用CO2見える化ソフト『One Click LCA』と住宅・建築SDGs推進センターのGHG(温室効果ガス)排出量の算定ツール「J―CAT」と連携したことで、積算の新たな業務領域を開拓することが可能になった。
HEΛIOΣ2026では、BIM施工支援システム「GLOOBE Construction」とのST-Bridge連携も実現し、積算データを施工BIMに連携していく結びつきを強めた。HEΛIOΣは積算を出発点に、データ連携先を広げようと動き出している。
生島氏は、こう確信している。「積算データはいわば設計変更などを経て最終的に固まった最新情報であり、積算を起点にさまざまなデータの利活用が展開できる。その価値を施工や維持管理にどう引き継いでいくか。それは開発の責任者として私自身が掲げるテーマでもある。積算データの価値向上にはAIとの結びつきも不可欠になる。だからこそ積算根拠の部分に、こだわり抜いていく」。その目線は、未来をしっかりと見据えている。

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