岩堀建設工業(埼玉県川越市)との歩みは、BIMコンサルティング事業を展開するペーパレススタジオジャパン(PLS)の考え方を変えるきっかけにもなった。PLSの勝目高行社長は「地域建設業のように経営のトップダウンでハンドリングできる企業規模の方が、BIMの効果を生かしやすい。岩堀建設工業との二人三脚を進める中で、それが確信に変わった」と説明する。

これまでは、大手ゼネコンを軸に展開してきたPLSのBIMコンサルティング事業だったが、「設計と施工が分断している」組織の壁に阻まれるなど思うように進めないジレンマがあった。岩堀建設工業の岩堀和久社長のような「これと決めたものをすぐに実行に移す決断力と求心力をもつ経営者」との出会いによって、これからは「地域の建設会社とともに、新たなBIMの在り方を追求していきたい」という思いを抱くようになった。
岩堀建設工業の岩堀悠樹取締役DX推進部部長は、勝目氏が提唱するVDC(バーチャル・デザイン・コンストラクション)の考え方に強く共感している。現場が始まる前までに仮想空間上で建物モデルを完成させる“着工前竣工”によって「プロジェクト関係者だけでなく、施主も含めて情報を共有できる。それによって当社は設計や施工だけでなく、営業部門も仮想空間上で一つになることができた」と強調する。
2025年10月に竣工した研究施設プロジェクトは、VDCを実現した代表的なBIMプロジェクトの一つだ。実施設計段階に設備サブコンも決め、詳細な着工前竣工モデルを構築した。着工前に施主に来てもらい大型スクリーンに映したモデル内を体感してもらう試みも展開した。長田光平VDCセンター長は「こうしたフラッグシップのプロジェクトは今後も年1件のペースで取り組んでいく」と強調する。
これまで岩堀建設工業が手掛けたBIMプロジェクトは10件を超える。「全ての案件で着工前竣工モデルを構築している訳ではなく、プロジェクトの特性に応じて最適なBIMデータ活用を展開している。次のフラッグシッププロジェクトのデジタル竣工は早ければ来春ぐらいになるだろう」と明かす。
勝目氏は「岩堀社長による協力会社への求心力と、設計段階でサブコンを前倒し発注できる決断力があるからこそ実現できる」と岩堀建設工業のVDC事例を高く評価する。竣工後に行ったPLSの設備サブコンへのヒアリングでは、工事着手前の調整作業が従来の半分ほどの時間に短縮できたとの成果も聞こえてきた。長田氏は「当社としても着工前竣工モデルでの事前検証によって施工段階の手戻りは従来に比べて大幅に軽減できた」と付け加える。
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PLSの下支えでBIMへの対応力を着実に引き上げてきた岩堀建設工業ではVDCセンターを軸に現場が主体的に動けるようになり、近年はPLSなしでもBIMに取り組めるようになった。DX推進部を統括する岩堀取締役は「次なる展開としてPLSが築いてくれた土台(BIM)の上に、新たなワークフローの流れを形づくる改革を1年間かけて推し進めていく」と決意をにじませる。
自身が代表取締役を務めるグループ会社のリグテック(埼玉県川越市)が主体となる形で、今年6月から抜本的な業務フロー改革が動き出した。BIMを軸にした生産プロセス改革を基盤に、会社全体の情報の流れをどう円滑化していけるか。岩堀取締役は「この改革は岩堀建設工業が新たなステージに向かうための成長戦略として取り組んでいく」と力を込める。
記事は建設通信新聞からの転載です
