「BIMをきっかけに会社が大きく変わり始めた」。岩堀建設工業(埼玉県川越市)の岩堀悠樹取締役DX推進部部長は、BIMコンサル会社として豊富な実績を持つペーパレススタジオジャパン(PLS)の勝目高行社長との出会いを振り返りながら、そう手応えを口にする。2020年10月に踏み出したBIM導入の流れが「各部門のつながりを強め、社員一人ひとりの意識を変える分岐点」になった。岩堀建設工業はBIMを軸にどのような進化を遂げようとしているのか。目線の先を追った。

大手ゼネコンを軸にBIMコンサルティングを展開していたPLSでは、一気通貫のBIMデータ連携に取り組んできたものの、設計段階と施工段階をつなぐ難しさに直面していた。勝目氏は「思い描く成果が出せず悩んでいた時期に岩堀建設工業との出会いがあった。これは当社にとっても大きな分岐点になった」と20年当時を思い出す。
岩堀建設工業の岩堀和久社長を初めて訪問した際、BIMデータ活用の有効性を伝え、日本の建設業界が海外に比べて10年ほど遅れている状況を説明した。「岩堀社長が私と同じ東京理科大出身ということもあり、意気投合した。何よりもBIMのI(インフォメーション)の重要性について理解を示してくれたことが、岩堀建設工業との絆を強くするきっかけになった」
岩堀建設工業では20年10月にPLSをBIMコンサルとして迎え入れたタイミングで、BIM推進室を立ち上げた。常駐するPLSのスタッフからBIMソフトの効果的な使い方やデータ活用方法などを伝授され、実プロジェクトへの本格導入に向けて歩み始めた際に「また新たな分岐点となる動きがあった」と岩堀取締役は強調する。
所有していた賃貸オフィスの入居テナントを出て行くことになり、そのフロアを使って同業の建設会社とともにBIMの勉強会を開く場を設けようという岩堀社長のアイデアが具体化した。埼玉県建設業協会で青年経営者部会の部会長を務めるなど、同業者からの厚い信頼を得ていた岩堀社長にとっては、BIMを軸に成長していくことが地域建設会社にとっての重要な選択肢の一つになるという思いを抱いていた。
BIM推進室の発足から5カ月後の21年4月には、組織をVDC(バーチャル・デザイン・コンストラクション)センターとして再編成し、その1年後には同業同士がノウハウを共有し合い、BIMを軸に建設DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する連携組織として「埼玉VDCプロジェクト」を始動した。
岩堀社長の呼び掛けで埼玉県内に本社を置く伊田テクノス(東松山市)、中原建設(川口市)、平岩建設(所沢市)の3社が賛同した。BIMワークフローの構築に向けた情報共有だけでなく、積算など自社独自のノウハウなどについても意見交換し、切磋琢磨しながら成長する場としてVDCセンターが拠点となった。

それから5年の歳月が経過した現在、岩堀建設工業の長田光平VDCセンター長は「社内ではBIMのフロントローディング(業務の前倒し)に向けて各部署が一体的に取り組むようになった。当社にとってBIMを導入した最大の効果は社内の意識変化ではないだろうか」と実感している。
着工前までに建物の仮想竣工モデルを構築し、施工時の不具合を事前に解消する取り組みは、施主を含むプロジェクト関係者を巻き込む同社独自の試みでもあった。岩堀取締役は「PLSとの出会いがなければ、当社のBIMはここまで進化していなかった」と手応えをつかんでいる。
記事は建設通信新聞からの転載です
連載 日本流を極める 岩堀建設工業×PLS (1)
