連載 日本流を極める

ペーパレススタジオジャパン(中) 
技術融合し日本型DfMA確立へ

 ペーパレススタジオジャパンが、ある中堅ゼネコンのBIM推進担当者らとともにシンガポールを視察したのは1年前のことだ。日本よりも一歩先を進むシンガポールのBIMデータ活用は、急速な勢いで進展していた。「国を挙げてBIM普及を推し進めるシンガポールと同じような方向に進むのではなく、日本流を極めていくことこそが、日本の建設業が目指すべき道筋ではないか」。この視察を通して、同社の勝目高行社長は思いを強めた。

 シンガポールの公営集合住宅プロジェクトでは、DfMA(製造・組み立てを考慮した設計)を本格導入している。部材は全て国が指定したDfMA専用のメガ工場で製作され、建設現場に搬入される。BIMデータは設計から工場製作につながり、工場内ではロボットが型枠を組み、配筋を施し、コンクリートを流し込み、フルオートメーションでプレキャストコンクリート版を製造している。

 「搬入先の建設現場で働く作業員の数が極端に少ないことも印象的だった」と勝目氏が説明するように、シンガポールでは国として現場に入場する作業員の数を制限し、DfMAの流れを定着させる政策を進めてきた。こうした国としての戦略がBIMデータ活用の流れを一気に浸透させる原動力になった。各地にはDfMA専用のメガ工場が配置され、BIMデータを一貫して活用する建設システムが構築されている。

 日本では4月からBIM図面審査が始まり、3年後にはBIMデータ審査に乗り出し、段階的に建築確認申請におけるBIMデータ活用を進展させていく。「シンガポールのように国を挙げて建設システムを構築し、BIMデータを一貫して活用する流れが日本でも実現するとは思えない。であるならば日本として新たなデジタルデータ活用の枠組みを確立することが近道になる」と思いをめぐらせた。

 視察からおよそ半年後の2025年9月に同社は組織とサービスを一新させた。これまで主軸であったBIMコンサルの事業はサービスの一つに位置付け、システムインテグレーション、AI(人工知能)戦略、環境シミュレーション、デジタルファブリケーションなど15の専門サービスで構成する総合的な建設DX(デジタルトランスフォーメーション)コンサル会社へと転身を図った。

 勝目氏は「建設費の高騰によって、例えばマンション市場では事業者(建築主)の利益幅が大きく減っている。他の事業分野も同様であり、建築主自身が建設プロジェクトをコストコントロールする必要性を強く感じている。これまで日本で浸透していなかったEIR(発注者情報要件)整備の相談も最近増えつつあるのも、明らかに建築主側の意識に変化が見え始めている裏返しだろう」と説明する。

 日本でBIMが機能しない阻害要因の一つであった「建築主の不在」という流れは、建築費高騰の影響を背景に変化の兆しが出ている。受注者である建設会社では人手不足を背景に、生産性向上や業務効率化による省人化に向けた要求が高まりを見せている。「シンガポールのような国を挙げたDfMAは難しくても、企業が自らの強みを生かせるような日本型DfMAは実現できる。当社はあらゆる先端技術を統合し、建設業界に革新をもたらす後押しをしていく」と力を込める。

 同社では、地域建設業など7社と連携した共同プロジェクトが動き出している。これはBIM、AI、ロボティクス、デジタルシミュレーションなどのあらゆる先端技術を統合した「日本型DfMA」実現への試みであると勝目氏は強調する。これはまさに日本の建設業が新たなステージに踏み込むための「日本流を極める」取り組みに他ならない。

記事は建設通信新聞からの転載です

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