BIMedia編集部

コラム 「日本のBIM Levelを考える」

 建設業界で「BIM」という言葉が一般化して久しい。設計事務所、ゼネコン、サブコン、メーカー、発注者からBIMの話題が日々出ているが、その定義について、どこか曖昧な空気が漂っているように感じている。

 BIMを導入したと言いながらも実際には3Dモデルを作成しているだけのケースがある一方で、現場で点群や施工シミュレーションを駆使しているにもかかわらず、自らBIMを積極的に活用していると感じていない企業もある。

 日本の建設業界はどのくらいBIMを使いこなせているか。そして日本の「BIM Level」は今どの位置にあるのだろうか。それを考えるためにもまず「BIM Level」とは何かを考察する必要がある。

 BIMとは本来、「Building Information Modeling」の名の通り、建物を情報として扱う思想である。その源流は1970年代まで遡る。建築を単なる図面の集合ではなく、データとして扱う構想が生まれ、1980年代にはArchiCADを展開するグラフィソフトが「Virtual Building」を提唱した。そして2000年代に入ってRevitの登場とオートデスクによる買収を契機に、BIMは世界的に普及していく。

 英国政府が打ち出したBIM成熟度を示す「BIM Level」は、Level 0が2D図面中心、Level 1が2Dと3Dの混在、Level2が各専門モデルの連携、そしてLevel3が統合データモデルと位置付けられている。この分類は世界標準のように扱われ、日本でも頻繁に引用されている。

 しかし実際には日本のBIM導入は、このLevel論と少し異なる道を歩んできた。日本では長らく「BIM=3D化」と捉えられてきた側面が強く、RevitやArchiCADを導入し、3Dモデルを作れば「BIM化」と認識されるケースも少なくなかった。

 BIMを言い表す考え方は「モデリングをしたか」ではなく「情報が再利用されているか」が重要になってくる。例えば意匠・構造・設備モデルが統合され、干渉チェックに使われ、施工計画に連携され、さらに維持管理まで活用されるのであれば、それは成熟度の高いBIMと言えるだろう。しかし、3次元モデルを納品用に作っただけで、その後に活用されないのであれば、それは単なる3次元化にとどまる。

 日本の建設業界では「3次元モデル」と「BIM」が混同され続けてきた。この状況を大きく変えた動きとして施工BIMの拡大があるのではないかと考える。2010年代後半からゼネコン各社はBIMデータの活用領域を設計用途だけでなく、施工計画や現場運営へ広げ始めた。干渉チェック、4D工程、仮設計画、鉄骨建方、設備配置など現場作業に使うためにBIMは「情報モデル」である必要に迫られた。

 BIMは単なる設計のツールから、建設情報基盤へと変化し始めている。そして現在、その先にAIが現れた。生成AIによる図面解析、自動モデリング、点群分類、工程生成など、建設業界は今、BIMデータから最適な成果を得るための、その先を見据えるようになった。

 そう考えると、従来のBIM Levelだけでは、もはや現在の状況を説明しきれない。いま必要なのは「情報がどこまで循環しているか」という視点の新たなBIM Levelの再定義ではないだろうか。

 例えばLevel 0は2D図面、Level 1は3Dモデル、Level 2は属性付きBIM、Level 3は施工連携BIM、Level 4は点群・リアルタイム連携、Level 5はAI解析・自動生成というようなBIMデータの活用状況や循環性、さらには再利用性といったデータ利用の濃度を整理する考え方である。

 重要なのは、どれだけ綺麗なモデルを作った詳細度の部分ではない。情報が設計から施工へ、施工から維持管理へ、さらにAI解析へと繋がっていくデータの連続性こそが、本当のBIM成熟度を示す指標になっていくべきだろう。

 日本特有の商習慣の中で進化を続けるBIMを前提に、BIM Levelを定義することが、わが国における建築生産システムの未来を見据える重要な指標になるのではないだろうか。それは建設産業界が図面中心から情報を扱う産業へと進化するための基準となるはずだ。(西原一仁)

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