BIMedia編集部

コラム「一丁目一番地の改定がもたらすもの」

 国土交通省が3月23日付で土木工事共通仕様書(案)の一部を改定した。土木工事共通仕様書は公共土木工事の材料品質や施工手順、検査方法などの技術的要件を定めたルールブックのようなものであり、ここで示された基準があるからこそ、受・発注者は業務や工事を円滑に運営できる。

 工事毎に異なる特記事項を示した「特記仕様書」に対し、どの工事にも共通した基準を示すまとめたものが「共通仕様書」であり、工事の品質確保とスムーズな施工管理には欠かせない枠組みだが、基準がネックとなり、新技術を導入できなかった経験をもつ土木技術者は少なくないはずだ。

 では、どこがどう変わったか。共通仕様書は全660頁に達し、今回は220を超える項目が改定されたが、注目すべきポイントは1つだけだ。仕様書の第1編第1章第1節の総則で示す「用語の定義」を見てほしい。ここでは全53の用語の説明が示され、その中で1編1章1節1条26項に当たる「書面」の項目が一部改定された。

 単なる用語の位置づけが変わっただけで、それほど驚くことではないと思う見方もあるだろうが、いわば根っこの定義が変更されたことで、それが様々な部分に波及し、新たな道筋を描く場合がある。まさに将来の建設デジタル化を見据えた「一丁目一番地の改定」であると、BIMedia編集部では考えている。

 今回の改定で、書面の定義は『書面とは、工事打合せ簿等の工事帳票をいい、情報共有システムを用いて作成され、指示、承諾、協議、提出、報告、通知が行われたものまたは工事帳票と同等の内容を備えたデータを有効とする。ただし、やむを得ず、情報共有システムを用いない場合は、発行年月日を記載し、記名(署名または押印を含む)したものも有効とする』に変更された。

 具体的には下線で示した『または工事帳票と同等の内容を備えたデータを』という一文が追加された。これは何を意味するか。

 その前に工事帳票について改めて考えてみる。工事帳票とは工事台帳、工程表、工事完了報告書など、工事の施工状況や進捗、原価管理を行うために作成する書類である。そこには工事や調査などで導き出した数値などを盛り込む。いわば数値を紙の上に見える化したものが工事帳票である。

 それが今後は、工事帳票と同等の内容を備えた「データ」でも良いとなった。そもそも帳票は、元の詳細なデータがベースとなり、そこから抽出した結果としての〝断片〟の1つである。データの塊の中からアウトプットした結果の1つが帳票に記載された内容である。今後はその元となるデータを工事帳票として扱うことができるようになったということだ。

 実は、これに連動して用語の定義では1編1章1節1条28項に当たる「工事帳票」の部分も「データ」という一文が追加され、『工事帳票とは、施工計画書、工事打合せ簿、品質管理資料、出来形管理資料等の定型様式の資料、データ、及び工事打合せ簿等に添付して提出される非定型の資料をいう』に変更になった。

 BIM/CIMやICT活用に取り組んできた土木技術者の多くは、デジタルデータの成果をダイレクトに提出したいと考えていたが、これまでは書面の提出が原則だった。今後は帳票ではなくても「データ」として提出が認められるという解釈が成り立つ。

 紙(帳票)でなくても情報(データ)の提出ができるようになるということは、リアルタイムに蓄積されるデータをわざわざ受注者が見やすいように切り取って帳票として提出しなくても、蓄積されたデータが保管されている場所に発注者が自主的に閲覧に行けば済むようになる。

 国交省ではプロジェクトCDE(共通データ環境)構築の議論が本格化している。その受け皿となるCDEプラットフォームに格納された「データ」を受・発注者双方が様々な視点から利活用できる道筋にもつながるのではないだろうか。

 膨大な量の帳票は単なる紙の山であり、そこに記載された情報を元にした分析には膨大な時間と労力をかける必要があり、現実的ではない。これが「データ」であれば、多様な切り口で利活用ができ、AIと組み合わせることで、新たな利用価値に進化する。

 書面の定義として「データ」の扱いを可能にしたことの意義は計り知れない。最前線の現場はいまだ書類の作成や処理に時間を費やしている。受・発注者それぞれの目線から「データ」という書面を使った働き方改革の実践例が出てくることを願うばかりだ。この改定は、まさにインフラDX実現に向けた大きな一歩であることは間違いない。(西原一仁)

参考:土木工事共通仕様書(案)変更点(新旧対照表)

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