建設分野にもAIの導入が広がり始めた。繰り返し作業の自動化はもはや当たり前になりつつあり、建築確認のような専門性の高い業務にもAIを組み込もうという動きが出てきた。社を挙げてAIと向き合う宣言をした企業が登場したように、そのスタンスを明確化する時期に来ている。
いま現場で起きている変化をどう捉えるべきか。生成AIとAIエージェントの違いを改めて考えてみた。情報をもとに新たなアウトプットを生み出す生成AIに対して、AIエージェントは分析や提案にとどまらず判断し実行する。いずれも建設デジタル化を推し進める上で欠かせないが、導入のポイントや順序を見誤ると、期待した効果が得られず、現場に混乱をもたらしてしまう可能性は大いにある。実際にツールだけ先に入れて運用が追いつかない、というケースは珍しくない。
生成AIは、個人の経験やスキルに依存していた暗黙知を形式知へと変換し、組織全体の底上げを図る原動力にはなるが、ハルシネーション(誤情報生成)のリスクがあるだけに、意思決定を支援するツールとして活用することが重要になる。
一方のAIエージェントは、取得した情報から目的に向かって自ら考え複数の選択肢を提示するが、そのためには高品質なデータ基盤が整っていることが必要で、情報が分断された状態では正しく機能しない。業務の中に組み込まれ、一部の機能として業務をこなす役割を担うことができる。
生成AIは「考え作る」ことに長け、AIエージェントは「動かし実行する」ことに強みを発揮する。建設生産の流れや、業務の中身によって、両者それぞれに役割を分担させることで有効に機能していく。生成AIが施工計画のたたき台を示し、それに基づいてAIエージェントが作業の進め方を最適化する。このようなAIの分業が、建設DXを推し進める原動力になる。
両者は、いわばシステムの中の機能であり、それを業務の流れの中のどこに組み込むことが良いか、その判断が大切になってくる。建設生産の源泉は人であり、人が場面場面で的確な判断をしながら、ものづくりが進んでいく。判断を下す部分は人が担い、そこに導く流れをAIが整える。こうした情報伝達の循環が建設生産の最適化につながる。
そのためにも仕事の流れ、作業の進め方をきちんと整理し、細かな部分までプロセスを分解することが重要であり、人が判断すべきポイントを見定める。それによってAIという機能をどの部分に組み込むべきかが見えてくる。仕事の中身をきちんと定義することで、人による責任や権限、AIによる機能と役割が整う。曖昧なプロセスではデジタル化は実現できない。
まさにデジタル化は仕事の再定義から始まり、新たな仕事の流れと向き合うことで理想へと近づいていく。人とAIが協働する未来は、自然に訪れるものではない。仕事の進め方を変える覚悟を持った現場だけが、その恩恵を手にする。(西原一仁)
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