BIM未来図 地域建設業の今(下)

地域建設業の課題解決へ糸口提示 
タカヤが施工BIMまでの足跡紹介

 オートデスクが主催した地域建設業向けのBIM活用戦略フォーラムで講演したタカヤ(岩手県盛岡市)からは、BIM導入から現在までの道のりが語られた。フォーラム参加者は、同社がどのように壁を乗り越えてきたかを、自らの取り組みに当てはめて聞き入る姿が数多くあった。地域建設会社では限られたリソースをどこまで活用してBIMと向き合っていくかが重要な経営課題の1つになっている。フォーラムは、その糸口を提示する後押しの場でもあった。

タカヤのBIM導入の足跡

 「2人のBIM先導役の強い意志が会社としての推進力になった」。タカヤの細屋伸央代表取締役社長CEOは、導入から10年でBIMが社内に浸透してきたことへの手応えをつかんでいる。年間売上高は150億円~200億円。2030年には創業100周年を迎える。同社にとってBIMは成長戦略の1つとして、着実に育ってきた。

 「BIMの成功は大手クラスだからできること。私たちはどこまでやれるだろうか」。BIM推進室のまとめ役を担う安東由吏江建築設計グループ主任は10年前を思い出す。トップダウンで踏み出したBIMではあったが、当時はまだ地域建設業の導入事例がほとんどなく、どう歩んでいけばいいか、不安を感じていた。

10年間の歩みを説明するタカヤBIM推進室の安東由吏江建築設計グループ主任

 BIMコンサルタントのSEEZ(東京都港区)との出会いが状況を大きく変えた。アドバイスを受けて専任担当を位置付け、そこからBIMテンプレートの整備を本格化し、まずはBIM導入基盤の構築に注力してきた。インテリアコーディネーターやビジュアライズ担当者とも連携し、営業提案の観点でもBIM効果が発揮できる体制を確立した。

 当初から課題としてあったのは、施工BIMの対応だった。オートデスクBIMソフト「Revit」を全面導入する中で、施工段階へのBIMデータ活用に向けてRevit施工支援アドオンツール「MFTools」や、クレーン施工計画シミュレーションシステム「K-D2 PLANNERR」の導入を決め、2025年からは念願だった施工BIMの支援担当を配置したことで「BIMを軸に現場との意思疎通が深まった」と強調する。

 とはいえ、これまでの道のりは決して平坦ではなかった。専任者として任命された安東氏は「BIMとは何か」を模索する日々が続いた。「テンプレートやファミリ整備もトライアンドエラーの繰り返しだった。何のためのパラメータなのか、どのデータを次のフェーズに引き継ぐべきなのか」。試行錯誤を繰り返す中で「当社なりの枠組みが整い始めた時には、その意味をようやく自分なりに整理することができた」と実感している。

 同社は、2030年に迎える創業100年に合わせ、社を挙げてDX改革を推し進めている。安東氏は「設計だけ、施工だけのBIMデータ活用ではもったいない。現在はBIMを越え、社全体で蓄積したデータを活用していくための準備を進めている」と説明する。

 設計グループでは現在、17人全員がRevitを使いこなす体制が確立している。建築設計グループマネージャーとして全体を統括する伊藤慎吾氏は「設計者からはもうCADには戻れないという声が聞こえてくるくらい、しっかりと社内に根付いている」と説明する。

 1年前からはオートデスクの建設クラウドプラットフォーム「Forma」の本格導入も動き出した。モデル調整やレビューもForma上で行い、施工検討会にも活用し、施主を含むプロジェクト関係者との情報共有ツールとして活用が進んでいる。

 施工段階でのBIMデータ活用にチャレンジする現場も表れ始めた。干渉チェックや鉄骨建て方検討などに活用する中で、初の施工BIMにチャレンジした現場所長は「重大な手戻りが減り、資材手配にも余裕を持って取り組めた」と手応えを語る。他の現場所長からも「協力会社との合意形成にも役立っており、次の現場でも活用していきたい」との声が聞こえる。

 伊藤氏は「BIM導入に踏み出して来年で10年になる。現場に興味を持ってもらえるまでに時間はかかったが、成功事例の積み重ねで社内の意識も徐々に変わり始めた。壁にぶつかった際にアドバイスをくれるコンサルタントや、参考に訪れた建設会社からの助言などが大きな支えになった」と振り返り、全国から地域建設会社19社から約50人が詰めかけたフォーラムの場が「各社の新たな一歩を踏み出すきっかけの場になれば」と付け加える。

登壇する早稻田大学の石田航星建築学科准教授

 フォーラムの基調講演として登壇する早稻田大学の石田航星建築学科准教授は、大手・準大手ゼネコンを対象に長年続けているアンケート調査で、BIM導入効果として常に上位にランクインする取り組みとして「干渉チェック」「施工シミュレーション」「発注者へのプレゼンテーション」があると説明する。「実はこの3つは10年前から上位に入っている。地域建設会社にはまず、これらの取り組みを重要視してBIM導入を推し進めてもらいたい」と強調する。

 特に地域建設会社の場合、限られたリソースをどう配分するかという課題もある。「BIM導入コストの見極めが重要なポイントになることは言うまでもない」とし、近年は専用BIMソフトなしでも3Dモデルや図面、属性データをウェブブラウザー上で確認・共有できるBIMビューアが進化しており、それを主体として施工BIMに取り組んでいくことも「コストを抑えて効果的に推進していけるやり方だと思う」と説明する。

 BIMデータ活用の効果を最大限に引き出すためにはプロジェクト関係者とのBIMを軸に連携していくことが不可欠。「フルスペックで本気を出して取り組むことは理想ではあると思うが、ハードルをできるだけ低くして取り組むことで、専門工事会社も対応しやすくなる。会社の戦略や実情に応じて最適な枠組みで一歩を踏み出してほしい」と呼び掛ける。

フォーラムには全国から地域建設業19社、約50人が参加

 フォーラムでは登壇者に対して、参加者から数多くの質問や相談の声が上がった。現場の生産性向上に乗り出す地域建設業では、BIMへの大きな期待をもつものの、組織体制や人材育成・確保の観点からどうBIM導入を推し進めていけばいいかに悩んでいる。これは登壇した美保テクノスとタカヤが通ってきた道でもある。

 石田氏は「最前線の現場担当にもBIMをマスターさせる進め方は〝二刀流〟の技術者を育てるようなもの。BIMスキルをもつオペレーターなどの専門人材をきちんと横につけて取り組むことで、現場担当も業務に集中して的確にBIMデータ活用を進めることができる」とアドバイスする。

 建築分野ではBIM図面審査が動き出し、土木分野では国土交通省のBIM/CIM原則適用が新たなステージに入ろうとしている。地域建設業のBIMトップランナーである美保テクノスとタカヤからのメッセージは、参加した同業の地域建設会社の背中をしっかりと後押しするきっかけをつくった。

BIM未来図「地域建設業の今」はこちら

記事トレンド把握のため、気軽に押して下さい

トップに戻る

注目コンテンツ