高砂熱学工業×応用技術

BIM導入の新たなフェーズへ 
「定着と活用」に力強い一歩

 高砂熱学工業が、BIM導入の新たなフェーズに入った。導入プロジェクトは100現場を超え、BIM推進室を軸に全国の本支店担当者などで構成する横断組織の体制も大幅に増強した。「BIMの定着と活用が2026年度の重点テーマになる」と力を込める藤村慎司デジタルコンストラクション戦略統括部長と、2022年から高砂熱学工業のBIM導入基盤整備を下支えする応用技術の小西貴裕代表取締役社長にBIMの普及に向けたポイントと、その狙いを聞いた。

応用技術の小西氏(左)と高砂熱学工業の藤村氏

  --現在の状況は

 藤村 25年度はBIMを全国の支店に浸透させるため、BIM支援センターという横断組織を立ち上げ、支店ごとの特性によらない「全店最適」を旗印に普及を図ってきた。新築プロジェクトのBIM導入物件数は、25年3月末時点から今年3月末時点で倍以上に拡大した。前任の橋本晋執行役のリーダーシップと各本支店長の大きな後押しによるものだと考えている。

 BIMへの社内意識も高まりを見せ始めている。これまで使ってきた2次元CADからBIMへの全面移行はそう簡単なことではない。BIM支援センターがBIMの導入の必要性を地道に呼び掛けてきたことで、現場が活用の本当の意味を理解してくれるようになったことも、大きな成果だったと感じている。

 小西 当社は、高砂熱学工業がBIMソフト「Revit」を提供するオートデスク社とBIMデータ活用推進に向けたMOU1.0(戦略的提携に関する覚書)を結んだ22年度から、Revitのファミリ整備やテンプレート構築、さらには業務の自動化に向けたアドオン開発などBIMの技術基盤強化と共に現場への導入支援を進めてきた。現在、さまざまな観点からBIMの導入を後押している中で、高砂熱学工業のBIM活用に向けた意識が着実に根付いていることを実感している。

 藤村 25年度は「展開と拡大」をテーマにBIMの現場導入を進めてきたが、26年度からは「定着と活用」をテーマに位置付け、さらなるBIMの浸透を推し進めていく。BIM推進室が軸になり、全国の本支店のBIM担当者と組織しているBIM支援センターの名称も「BIM活用推進センター」に変えた。各本支店の技術生産課(部)と現場のメンバーで構成している体制も昨年度比1.5倍以上に拡充した。

 実は、設計段階からBIMを活用するプロジェクトにもチャレンジしていきたいと考え、BIM活用推進センターには設計部門の社員にも参画をしてもらっている。26年度は展開から定着に向けた一歩を踏み出す1年になる。

 小西 高砂熱学工業のBIM導入が進展する中で、現場からの問い合わせや相談支援の増加に対応できるように、当社側の支援体制も強化している。設備工事業各社ではBIM導入の動きが急速に広がりを見せている。その先導役でもある高砂熱学工業への支援を通して、当社としては設備工事業のBIM標準化を後押ししていきたいという思いを強く持っている。

  --今後の取り組みは

 藤村 当社が元請けとなる新築プロジェクトを中心に、設計段階からBIMに取り組む成功事例についても着実に積み上げていきたい。より川上段階から取り組むことがBIM本来の姿である。既にプロジェクトの候補を挙げており、26年度には少なくとも数件のプロジェクトで取り組みたいと考えている。

 新築プロジェクトにおけるBIM導入率の基準は、単にBIMを使用した件数をカウントしているわけではなく、独自の条件を設けた上で四つのグレードに区分し、現場の導入状況を把握している。

 厳密には細かな基準を設定している。分かりやすく説明すればBIMモデルを現場に用意した程度であればグレード1から、BIMを維持管理に向けた情報資産として活用している場合はグレード4と位置付けている。

 現在はグレード2の現場が多いが、グレード3の現場も少しずつ増えており、ここが拡大してくれば、組織としての活用レベルも上がってきているという判断になる。将来的にはグレード4のプロジェクトを数多く増やしていきたいが、それを実現するためには当社だけでは難しい側面もある。設備工事業界としてのBIM標準化の進展が、その後押しになるだろう。

 小西 当社側の取り組みとしては、テンプレートの整備を26年度で完了するスケジュールで動いている。現場のBIM活用に大きく関係してくる部分だけに、重要ミッションとして力を注いでいる。現場のリクエストを受けて製作しているが、先回りして整備していくために専門チームも組織している。将来を見据えて設備機器メーカーなどと連携し、新しい製品の提供タイミングでデータが更新されるような枠組みを当社として構築できればとも考えている。

 藤村 応用技術のお力をお借りしてBIMの人財育成にも力を注いでいる。モデラー、コーディネーター、マネージャーの階層別の教育を25年度から始めており、26年度も継続して強化していく。25年度では延べ100以上の講座を開催し、協力会社を含め1年間で延べ1000人以上が受講した。

 小西 高砂熱学工業の専門チームは現在30人強の体制を確保している。教育面ではRevit情報サイトを設け、そこから教育コンテンツを配信しているほか、要望に応じて現場に出向いて説明するケースも見られる。より効率的なBIM活用につながるような教育コンテンツの充実を図り、現場のBIM導入を後押ししていきたい。

 藤村 社内では設計、施工、維持管理まで含めたデータ連携や運用ルールの共通認識が進み、BIMの目的が「モデルを作ること」から「プロジェクト全体を最適化すること」に変わってきている。施工図作成や干渉調整だけでなく、施工計画や進捗管理など、現場運営にBIMを活用する事例が増えるにつれ「実際に役立つ」という実感が現場側にも広がっているのは地道に教育を進めてきている成果の現れでもある。

  --経営の目線は

 藤村 4月1日付でデジタルコンストラクション戦略統括部を新設した。その背景にはBIM単体ではなく、デジタル技術全体を施工プロセス改革につなげていく狙いがある。これまではBIM導入そのものに注力してきたが、今後はBIMを核にしながらAI、データ分析、クラウド基盤、施工DXなどを統合的に推進する段階に入ってくる。設計、施工、運用を横断しながらデジタル戦略全体を統括できる体制が必要と判断した。BIMだけにとどまらずデジタル全体、技術全体の施工プロセスの改善につなげていくことがわれわれに課されたミッションになる。

 現行中期経営計画は26年度が最終年度になり、27年度から新たな計画がスタートする。デジタルコンストラクション戦略統括部としての目線は30年に置きながら、BIMデータを軸にプロジェクト全体の最適化を目指していく。現在はまだデータの流れが分断化している。そこを統合し、BIMデータの利用価値を最大化することによって、人財不足の解消や生産性向上にも対応できる。BIMを核にしながらDX、さらにはGXにつなげていく。

 小西 BIMの価値はデータベースに蓄積した情報を利活用するところにある。必要な情報を生産プロセスの中で構築できる部分が最終的に要になると考えている。高砂熱学工業のBIM定着を見据えながら、当社としては蓄積データが自然と無理なく集約できるような仕組みづくりを進めていきたい。当社にはシステムインテグレーターとして、それに関連したさまざまな事例や研究成果がある。そこを提案しながら高砂熱学工業の新たな一歩を後押しできるような情報基盤を提示できればと考えている。常に先回りして提案していきたい。

 藤村 基礎がないと頑丈な家は建たないように、応用技術のデジタル基盤が現在の当社のBIM推進の支えになっていることは間違いない。BIMデータを活用したことで現場の合意形成が円滑に進んでいるという声は着実に広がっている。こうした担当者レベルの成功体験が何よりも重要だと考えている。

 小西 今後は、われわれの支援する中身も幅も広げていかないといけない。当社だけでは解決できない課題が出てきた際には、他とも連携しながら支援していく。高砂熱学工業の進化に合わせ、われわれのサポートの形も内容も変化させていく必要がある。

 藤村 ある一定の割合を超えると一気にBIMの導入が進むだろう。社内のRevitユーザーが増えればメンバー間で教え合うこともできる。これからは先輩や後輩に関係なくBIMを互いに教え合うケースが増えてくるだろう。そうした関係性の変化によってコミュニケーションが高まり、それが組織力になっていく。プロフィット部門9本支店2部門への巡回を先日終え、各本支店のBIMへの前向きな意見を聞き、組織としての力強さを改めて実感しているところだ。

この記事は 建設通信新聞 特集「BIM2026」からの転載です

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