梓設計、MESON、梓総合研究所

木造建築の思想を伝えるXRギャラリー 
オフィス歩き森から建築へ「木の循環」体感

 梓設計は創業80周年記念事業として、関連会社の梓総合研究所(AIR)、空間コンピューティング技術を手がけるMESONと共同で、Apple Vision Proを活用したXRギャラリー「Immersive Wood Gallery」を制作した。培ってきた木造・木質建築への思想や設計力を、現実のオフィス空間を歩きながら体感できるMR(複合現実)ウォークスルー体験の場として構築した。

 舞台となるのは、東京都大田区にある梓設計の本社「HANEDA SKY CAMPUS」。体験者はApple Vision Proを装着してオフィス内を移動し、苗木が森へと育ち、伐採・製材を経て建築へとつながる木の循環を、現実空間に重ねて表示される3Dコンテンツや映像、音声などを通じてたどる。

 開発の背景には、建築の完成形だけでは伝えきれない設計思想や、森林から木材、建築へと続く長い時間軸を、より直感的に伝えたいという狙いがある。AIRが推進する「三百年木造構想」を背景に企画された。梓設計の技術チーム「AX-team」が映像や3Dコンテンツの制作を主導し、MESONが企画編集、体験設計、演出、3DCGデザイン、アプリケーション実装、運用計画を担当した。

 体験は主に3つの場面で構成する。導入部の「Wood Entrance」では、創業者の言葉や手書きメッセージ、音声演出を通じて、梓設計の理念に触れる。「Gate Forest」では、苗木から森、伐採・製材までの過程をCGアニメーションで表現。林業現場で撮影した立体視映像や3Dスキャン素材も組み合わせ、森の奥行きや仕事の様子を伝える。

 続く「Archi Runway」では、本社のランウェイ空間を活用し、木造・木質建築の実践を「環境」「社会」「心身」の3つの視点から紹介する。体験者の歩みに合わせて演出が展開し、実際の建築空間とデジタルコンテンツを一体化させる。

 木漏れ日をイメージした光の演出を移動時のナビゲーションや視線誘導に活用し、森林で収録した環境音やナレーションを組み合わせるほか、木製ハンドルを用意して木の質感や香りも体験に取り入れた。視覚・聴覚に加え、触覚や嗅覚にも働きかけることで、素材としての木の存在感を伝えることを目指している。

 今後は企画展への出展などを通じて体験機会を広げ、特定の場所に限らず、より多くの人に木造・木質建築の魅力を伝える方針だ。

梓設計のプレスリリースはこちら

BIMedia目線ーーBIMモデルを用いた設計検討や施工シミュレーションとは異なり、XRによって建築の背景にある思想や素材の循環を伝える事例だ。現実の空間にデジタル情報を重ねることで、建築を単なる完成物としてではなく、森林や素材、生産、利用とつながるものとして体験できる。建築分野では、3Dデータの価値は設計・施工の効率化だけにとどまらない。空間の意図や環境性能、素材選択の背景などを、施主や利用者にわかりやすく伝える手段にもなり得る。XRの活用が広がるためには没入感のある演出に加え、体験を通じて何を理解してもらうのかを明確にすることが重要になる。梓設計の取り組みは建築設計の知見と空間コンピューティングを組み合わせ、設計思想を体験として伝える新たな活用方法を示している。

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