AU2026 新たな潮流(2)

データを基盤とした管理・改善のサイクルが鍵 
三建設備工業 内田 泰斗 氏

Autodeskユーザー企業の実践事例とデータ活用の最前線

 アメリカのラスベガスで9月15日より3日間にわたり開催された「Autodesk University 2026: The Design & Make Conference(AU2026)」を視察しました。今回のカンファレンスでは、「Autodeskユーザー企業はAutodeskの何を中心価値と捉えているか」を調査テーマとしました。本レポートでは、現地のセッションや登壇企業の事例から見えてきた、これからのデータ基盤のあり方と、カンファレンスで多く取り上げられていた、AI活用の動向について報告します。

三建設備工業 DX推進本部DX推進部課長代理  内田 泰斗 氏

1. ツール単体から「つながる業務基盤」への進化

 今回の視察を通じて最も強く感じたのは、ユーザー企業におけるAutodesk製品の位置づけが大きく変化している点です。かつてはファイル保存やモデリングを中心とした環境として認識されていたが、現在では外部の様々なシステムと接続し、製品内のデータを業務に活用する方向へと広がっています。

 現地での講演や配布資料から、多くのユーザー企業が単一の製品群で業務を完結させるのではなく、設計・施工・提出・現場管理といった情報を構造化し、自社のデータベースやERP、BIツール、GISなどへ接続する「業務基盤」として利用している姿でした。例えば、ある登壇企業ではFormaやAPSから取得した情報を自社のデータベースへ集約し、コストやCO2排出量、設計案の比較に活用していました。また別の企業では、課題管理や情報提供依頼などの業務プロセスをAutodesk上で標準化する取り組みを紹介していました。

 企業によって中心に置くシステムは異なりますが、各事例に共通していたのは、Autodesk製品だけで業務を完結させることではなく、Autodesk上の情報を他のシステムと連携させ、実際の業務の評価や判断に直結する「使えるデータ」へと変換していた点です。

2. AIは「生成」ではなく「確実な処理との接続」へ

 AI活用に関するセッションにおいて印象的だったのは、AIに対する期待が「答えを直接作らせる」ことから、「利用者の意図を解釈し、必要なデータや処理を選ばせる」方向へ広がっていた点です。

 一方で、AI活用を積極的に推進する議論とともに、その適用範囲やリスク管理のあり方についても検討が行われていました。AIに判断を委ねすぎることで人の判断力が低下する「Deskilling(スキル低下)」の問題が指摘され、不可逆な処理や安全に影響する行為については、人が最終的な判断を担うべきであるという提言もありました。

 こうした議論から、AIに委ねる業務、従来のソフトウェアで自動化する業務、人が判断すべき業務を整理し、それぞれの境界をあらかじめ定めておくことの重要性を感じました。

3. AIの実務活用に向けた検証とこれからの展望

 今回のAU2026で確認した範囲では、AIが本番環境で自律的にアクションを実行する段階まで至った事例は確認できませんでした。一方で、MCPを用いてエージェント型AIと業務ツールを接続する検証や、Microsoft CopilotとTeamsを利用者の入口として全社展開を目指す構想が示されるなど、AIを実務で利用するための具体的な検討が進められていました。

 これらの事例で印象的だったのは、AIそのものの高度化だけでなく、AIが利用できる形で情報や業務プロセスを整備する取り組みが重視されていたことです。AIを業務に実装するためには、利用する情報の意味や根拠を明確にし、必要な処理へ確実に接続できる状態を整えることが前提になります。

 非構造化データを構造化し、既存のシステムへ適切に渡すアプローチや、判断時点の状態(情報の意味、根拠、誰が確定したかという履歴)を保存する仕組みづくりは、今後AIを活用していく上での共通課題となっていきます。まずは日々の業務プロセスを深く理解したうえで、データを基盤とした管理・改善のサイクルを構築していくことが、判断を支援するためのシステム構築への重要な鍵になると考えます。


 連載「AU2026 新たな潮流」は、オートデスクの国際カンファレンス「AU」に登壇、参加した日本の実務者からのメッセージとなります。彼らは何を感じ、そしてどこに向かおうとしているか。AUをきっかけに広がるそれぞれの潮流をリポート形式で紹介していきます。

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