日本のBIMを世界につなぎ、世界の標準を日本の現場へ
「世界のopenBIM関係者が、日本に集まる」
2026年10月6~8日、buildingSMART International(bSI)のSummitが日本で開催される。世界各国からopenBIMに関わる企業・団体・専門家が集まるこのイベントに、ONESTRUCTIONもスポンサー・参加企業として関わっている。
しかし、私たちはこのSummitを単なる国際カンファレンスとして捉えているわけではない。
なぜ、いま日本でbSI Summitが開催されることに意味があるのか?
ONESTRUCTIONが考えるのは、「日本が世界から学ぶ場」というだけではない。
日本の建設業が抱える課題や、日本で進んできたBIMの取り組みを、openBIMを先導する国際的なプレイヤーたちと共有・議論する機会なのではないか。
そもそも、bSI Summitとは
― 「BIMの展示会」ではなく「国際標準をつくることに専門的に関わる人たちが集まる場」
buildingSMART InternationalのSummitは、単なる新製品や技術の展示会ではない。ここでは何が議論されているのか。
buildingSMART Internationalとは
buildingSMART Internationalは、建設・施設管理業界におけるデータの相互運用性と標準化を推進する国際的な非営利団体である。その主なミッションは、世界中で建設プロジェクトにおけるデータが、ソフトウェアの垣根を超えて意味のある形で受け渡される環境をつくることだ。
openBIMとは何か
openBIMは、異なるソフトウェアやメーカー間で建設データを自由に交換できる仕組みの総称。その中核となるのが、IFC(Industry Foundation Classes)という異なるBIMソフト間で建物モデルの情報を共有するための共通フォーマットである。
IFC、IDS、bSDDなどがなぜ重要なのか
- IFC: 建設データを統一的な形式で記述するための標準形式。設計、施工、維持管理などの異なるフェーズ・異なるソフトウェア間でデータを交換するときのルール。
- IDS(Information Delivery Specifications): どのような品質・構造でデータを渡すべきかを定義する仕様書。
- bSDD(buildingSmart Data Dictionary): 建設に関する共通の用語・概念を世界共通で定義するデータベース。

bSI Summitでは何が議論されているのか
ONESTRUCTIONは2023年以降、2026年現在まで、開催されている全てのbSI Summitに参加している。

Summitでは、単に「BIMを使う企業」が集まるのではなく、データをどうつなぐか、そのための標準をどう発展させるかを考える場である。参加者は、
- 次世代のIFCの仕様をどう改善するか
- 業界特有のニーズに対応する拡張標準
- データ品質をどう保証するか
- 世界の異なる地域・業界で統一的にデータを扱うための工夫
といった議論やセッション発表に取り組んでいる。
「BIMを導入する」から「BIMデータを社会で使えるようにする」へ。
という流れが、まさに今、世界で進行している。
「日本で開催すること」にどんな意味があるのか
― 日本のBIMは、世界から切り離されて存在するものではない
① 建設データは国境を越える
建設プロジェクトのグローバル化が進む。国内企業でも、海外での案件受注、国際的な設計・施工連携、海外ソフトウェアとの連携が避けられない。さらにAIによるデータ活用を考えると、データが日本国内だけで閉じていることには限界がある。
② ソフトウェアごとではなく「データ」でつながる必要がある
「A社のソフトウェアとB社のソフトウェアをどう連携させるか」という課題は、もちろん重要だ。同時に、中長期的には「どのソフトウェアを使っていても、建設データを意味のある形で受け渡せるか」という視点を持ちたい。これこそがopenBIMの存在意義だ。
③ 日本の課題を世界の議論に持っていける
日本には日本特有の課題がある:
- 建設業の人手不足
- 多重な分業構造
- BIMの普及・定着にまつわる課題
- 2029年に向けたBIMデータ審査
- 既存の業務プロセスとの接続
だからこそ、日本は世界標準を「受け入れる側」だけではなく、日本で実際に起きている課題を世界の標準づくりにフィードバックする側にもなれる。
「世界標準」は、日本の建設業に何をもたらすのか
― BIMのためだけではない、AI時代のデータ基盤
bSI Summit、さらにはopenBIMを考えるとき、重要な視点がある。これはBIMのための技術では留まらない。
BIM × AI
AIに建設データを使わせようとしても、データ形式がバラバラ、意味が統一されていない、必要な情報が欠落している、品質が保証されていない──となると、AI以前の問題になる。
つまり、
|AI時代には、「AIを導入すること」よりも、そのAIが扱えるデータをどうつくるかが重要になる。
「AI Ready」という考え方
ONESTRUCTIONは「AI Ready」という事業視点を持っている。これは、
|BIM → データ連携 → データ品質 → AI活用 → 建設業の変革
という大きな流れを見据えたものだ。
openBIMの標準化と品質管理(OpenAEC)は、単なるBIM関連技術ではなく、AI時代における建設業のデータ基盤なのである。
bSI Summitを「日本のBIMの現在地を考える場」に
参加して終わりではなく、その先へ
bSI Summitは数日間のイベントで終わるものではない。むしろ、そこから始まる。ONESTRUCTIONからの問題提起として、日本の建設業が考えるべき3つのテーマを提示したい。
① 日本の建設業は、世界標準をどう使うのか
標準に合わせるだけではなく、日本の現場でどう実装するか。世界共通の「ルール」が、日本の業務慣行・現場の実態とどう向き合い、統合されていくのか。
② 日本の知見を、どう世界に返していくのか
日本独自の建設業の課題・実装経験を世界の議論へ。2029年のBIMデータ審査という「実制度化」を大規模に整備していくことは世界の建設業の先進事例になるはずである。
③ BIMを「導入する」から「社会でデータを循環させる」へ
設計 → 施工 → 維持管理 → 次の設計改善まで、データがつながる世界。これが実現すれば、建設業の生産性向上は加速する。

bSI Summitは数日間のイベントで収束するものではない。日本の建設業が世界のデータ連携・標準化の議論とどう向き合い、そこから何を生み出していくのか。そのきっかけの一つになるのではないか。
日本開催だからこそ、日本は「世界標準を受け取る側」から「世界の標準づくりを主導する側」へと立場を変えることができる。武藤代表理事の牽引のもとで日本が変化できるかが問われている。
ONESTRUCTIONが考える、bSI Summit開催の意味とは、その転換点を象徴するものなのだ。
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