建設テックスタートアップにとって、本社を東京に置くことは自然な選択に見える。投資家、顧客、人材――多くのものが都市に集中しているからだ。それでもONESTRUCTIONは、創業から6年間、鳥取に本社を置き続けている。
その理由を問われると、西岡大穂(CEO)はこう答える。「鳥取は弊社の創業の地であり、大切なアイデンティティの要素の1つです」。

「レガシー産業×テクノロジー」に向かうまで
西岡は農業高校出身で、鳥取大学農学部に進んだ。入学当初は農業関連の起業を考えていたが、大学での学びや数多くの企業でインターンを重ねる中で、ローカルとグローバルの両方の視点を持ち始め、考えが変わっていった。
「農業には物流や土木、化学など多様な産業が繋がっていることに非常に興味を持ったんです。さまざまな産業が密接に絡み合って地域経済を支えていることにも気付き、建設業や林業、物流などにも関わりたいと強く思うようになりました」(西岡)。
そこから「レガシー産業×テクノロジー」をテーマに据え、工学部の先輩との出会いが重なり、2020年3月、在学中に鳥取でONESTRUCTIONを設立した。
「鳥取を選んだ」というより、「鳥取にいた」から始まった創業だ。しかしその後も本社を移さなかったのは、意図的な選択だった。
鳥取に本社を置き続ける理由
ONESTRUCTIONが2026年1月に策定・公開した「セオリー・オブ・チェンジ(ToC)」には、「ローカル&グローバルの柱」がある。なぜ鳥取に本社を置くのかという問いへの回答を、会社として初めて言語化した部分だ。
そこに込められたメッセージはシンプルだ。「世界中どこにいても、働く・暮らす・挑戦するという選択肢をあきらめなくてよい社会を目指す」。「地方に住みながらスタートアップで挑戦したい」「海外にいながら日本の建設DXに貢献したい」――そうした選択肢を社会に増やすことを、会社のアイデンティティとして掲げている。
現在のチームは鳥取・東京・大阪の3拠点に加え、フルリモートで日本各地・世界各国から働くメンバーで構成されている。従業員約50名のうち4分の1が鳥取に住んでおり、場所に縛られない働き方は理念であると同時に、日々の実践でもある。
地方発で、なぜグローバルを目指すのか
「ローカル」と「グローバル」は、一般的に対立するように語られる。しかしONESTRUCTIONにとって、この2つは矛盾しない。
OpenAECはすでに世界54カ国以上で使われており、国際標準化団体buildingSMART Internationalの作業部会にも参加している。鳥取を拠点にしながら、国際標準の議論の場に立つ。それが今のONESTRUCTIONの姿だ。
西岡は鳥取を拠点にすることの意味を、こう語っている。「鳥取にグローバルにチャレンジする成長企業が現れて若手が集まると、既存企業も触発され賃金上昇や採用が活発化されるかもしれない。鳥取でそうした好循環が生まれると、それは全国各地に波及する。地方に強い産業があると、日本全体はきっと豊かになるはずです」。
鳥取県は全国で一番人口が少なく、成長産業も限られている。そんな鳥取県から成長企業を生み出すこと自体が、日本全体にとって意義のあるものであるといえる。
「精神的にも経済的にもゆとりのある地域になってこそ、そこに大人と子どもも集まる」と西岡は言う。鳥取から世界へ。その言葉に込められているのは、未来への宣言ではなく、すでに歩んできた6年間の軌跡だ。
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