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技術の中心地はAIに移り変わった 
Malme 高取 佑 氏

 土木分野向けに建設DXサービスを展開するMalme(東京都新宿区)がJR東日本コンサルタンツ(JRC)と矢作建設工業の2社と資本業務提携を結んだ。Malmeの高取佑社長は「2社と新たな一歩を踏み出せたことは、今後の事業展開に向けた転換点になる」と強調する。創業時から「ドボクをアップデートする」というミッションを掲げるMalmeはどのような成長戦略を描こうとしているか。資本業務提携に秘めた思いを高取氏に聞いた。

企業の中から課題解決を進める「伴走型支援」について語る高取氏

 技術者不足や技術継承といった土木分野の抱える課題の解決を目的に活動する中で、高取氏は「2021年の創業当初はBIM/CIMを課題解決の軸に置いてきたが、現在は技術の中心地がAIに移り変わり、顧客に提供する技術領域にはAIが欠かせない存在になっている」と説明する。

 技術者を送り込み、企業の中から課題解決を進めていく「伴走型支援」がMalme流だ。「当社にはAIに特化した専門エンジニアがいるわけではない。土木や建築のことを熟知する経験豊富な技術者が現場感のあるコミュニケーションを取りながら企業側にAIやBIM/CIMの活用を支援している。そこが当社の特徴であり、強みである」と思いを込める。

 企業への課題解決に向けたAI活用の協業は2年ほど前から本格的に動き出し、現在は建設コンサルタントやゼネコンを中心に40社ほどに達する。自社の土木実務支援AIプラットフォーム「CiviLink」上にAIプロダクトを格納し、そこにアクセスしてもらう形で「僕らが鍛え上げた土木のAIエージェントが図面の修正差分や図面上の数量確認などを行う」スキームだ。伴走支援を進めながら顧客が求める最適なツールを作成し、CiviLink上で利活用していく。特定企業と協業したプロダクトも、ロイヤルティ契約を結ぶことでプラットフォームメンバーが活用できる枠組みとなる。

図面の差分比較(変更箇所をAIがハイライト)

 AI活用に向けた協業の先駆けとなったのが、土木図面から情報を読み取るAIアルゴリズムを共同開発したJRCとの取り組みだった。JRCとの協業を進めてきたMalmeは2025年8月にJR東日本グループのJR東日本スタートアップ社と資本提携を結んでおり、そうした土台が、今回の資本業務提携に発展した。

 「当社はAIやBIM/CIMの力を使って土木分野での業務の最適化を実現したいと考えている。中でも鉄道領域は調査から設計、施工、維持管理まで一気通貫で鉄道会社が取り組む流れになり、AIをより効果的に活用できる分野の1つと捉えていただけに、資本業務提携という形でJRCとより強固な関係性を築くことができたことは、当社にとっての大きなインパクトとなった」

 資本業務提携では、MalmeのCiviLinkに、JRCの鉄道インフラ設計の知見をAIとして実装し、設計図書の作成や照査、管理業務の効率化を図る。図面や計算書における誤りや手戻りの防止、図面の自動分類による検索性向上、設計図書のデジタル管理などを実現し、設計段階でより高度な技術検討や企画業務に集中できる環境づくりを目指す。

指摘管理(図面上にピンを立ててチャット)

 Malmeは、矢作建設工業とも深い関係性を築いてきた。一晩で橋の撤去工事を行う矢作建設工業の施工プロジェクトへの業務協力として、MalmeがBIM/CIMモデルを活用した緻密な4次元シミュレーションを下支えしたことが出会いのきっかけとなった。高取氏は「プロジェクト単位の付き合いが始まり、業務の改善を通して当社の土木に対する強い思いを受け止めてもらい、親密度を増していった」と振り返る。

 現在は、矢作建設工業の本社近くに宿舎を構え、そこを拠点に週2日のペースで伴走支援の密度を引き上げている。資本業務提携ではBIM/CIMやAIを活用し、業務のあり方や部署間の情報連携など業務ワークフローの構築を進めていく。

 MalmeがJRC、矢作建設工業のそれぞれと資本業務提携を結んだのは今年6月のことだ。「当社が設計だけ、施工だけという偏った領域の区分けをせず、全方位で土木と向き合っていく思いを業界に知ってもらいたい思いがあり、あえてタイミングを揃えた」と明かす。

 提携で大切にしているのは「両社の業務を近くで見聞きし、密なコミュニケーションを取ることで何が課題であり、どうすれば改善できるか、それに見合った最適な提案を進める現場目線の伴走支援をしていく」ことだ。AIを活用した業務改革に乗り出す企業が増えている中で「業務のタスクを詳細に分解するだけでは不十分であり、むしろ表に出てこない暗黙知や明文化されていないルールを読み解き、正しい指示としてAIに落とし込めるか」が問われているだけに、伴走支援では「泥臭い部分まで理解できる現場目線を重視していく」と強調する。

訪問者数は前回出展時の約4.3倍となり、4小間以下の小規模ブースとしては異例の実績となった

 両社との提携を公表したタイミングに合わせるように6月17日から4日間、千葉市の幕張メッセで開かれたCSPI-EXPO2026に出展したMalmeのブースには延べ1200人を超える訪問があった。仕事をやりくりし、会期を通じてブースに立った高取氏は「土木分野へのAI活用ニーズが広がっている」ことを実感した。「課題感を持って足を運んでくれた人たちが予想よりも多く、実際にどこまでAIで実現可能かを知りたいという前向きな思いがあふれていたことに、自分たちの進む方向性が間違っていない」と確信した。

 現在、中央コンサルタンツ(名古屋市)とは生成AIを活用した「橋梁上部工BIM/CIMモデル自動生成」の共同研究を進めている。ベースとなるのはMalmeが開発した生成AIを用いて自然言語から直接3次元モデルを生成する「Text-to-BIM」技術だ。両社は生成AIを用いてテキストベースの設計データから直接3次元モデルを生成できる仕組みを構築中。「AIの活用によって安価で思い描くシステムづくりを進められる時代になった。手軽に3次元モデルを生成できる仕掛けがあれば、BIM/CIMをさらに盛り上げることができる」と先を見据えている。

 Malmeは、伴走支援のスタイルをさらに強固にしていく。「僕らを信頼してくれる企業と積極的に連携し、二人三脚でともに歩んでいきたい。個社のためというよりも、業界全体で融通できるプロダクトに発展させていきたい」。JRCと矢作建設工業との資本業務提携は、その出発点になる。CiviLinkは、まさにドボクをアップデートするAIプラットフォームとして存在感を増し始めている。

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