「ようやく求めていたツールに行き着いた」とインフラ事業者から打ち明けられる機会が増えていることに手応えを感じているのは、施設管理クラウド「BIMSTOK(ビムストック)」を提供するアーリーリフレクション(東京都千代田区)の田中喜之代表だ。インフラ分野の維持管理を見据えた同社のBIM/CIMソリューション展開は建設業界でも先駆的な取り組み。「地道に市場開拓を進めてきた成果が少しずつだが、形になり始めている」と胸の内を明かす。BIMSTOKの導入状況を通して、維持管理段階のBIM/CIMデータ活用のニーズを追った。

BIM/CIMモデル上に維持管理情報をピン留め表示するBIMSTOKは、空間と情報をつなぐことで「見てわかる」施設管理が実現できる。関連する情報を一箇所に集約し、BIM/CIMモデルと一体的に結びつけて管理する機能も拡充しており、分散しがちな情報をひとつにまとめ、探す手間も削減できることから、インフラ事業向けの施設管理ツールとして展開している。
販売を始めたのは2022年11月。国土交通省がBIM/CIMの原則適用に乗り出す半年前のタイミングだったこともあり、維持管理のツールにBIM/CIMモデルを活用する考え方に理解は示されるものの、導入実績がないことから、様子見の企業がほとんどだった。田中氏は「1、2年ほど前から、点だった動きが面としての広がりに変わりつつある」ことを実感している。

現在、試験導入中の事業者は20事業者ほどに達する。本格導入はこれからの段階だが、ダム施設や下水処理施設での導入が先行している。「1つの施設で試行導入して、そこで成果を収めて次の施設に横展開される流れで、着実に対象施設を増やしている。ニーズを取り込み、本格導入に向けて地道に提案を続けていくしかない」と思いを込める。
インフラ事業者の多くは施設の老朽化に加え、人材不足が深刻化し、効率的な維持管理のあり方を検討する動きが広がっている。老朽化に伴うインフラ事故も各地で発生しており、施設を安全かつ継続的に運用するための仕組みづくりが強く求められている。
最近は、インフラ事業者から最適な維持管理手法について相談された建設コンサルタントがBIMSTOKを軸とした維持管理のスキームを提案するケースや、計測会社が点群計測後に作成したBIM/CIMモデルの維持管理活用基盤としてBIMSTOKを活用する事例も出てきた。

積極的に出展している展示会でも、ブースに訪れる来場者の反応が以前に比べて前向きになっていることも「見逃せない動き」と捉えている。2025年12月に東京・有明の東京ビッグサイトで開かれた「第10回JAPAN BUILD TOKYO」では、開催3日間で400人を超える参加者がブースを訪れた。インフラ事業に加え、大手ゼネコンの姿も目立った。「現在は足を運んでくれた30社ほどの企業と導入検討に向けた具体提案を進めており、その半数はインフラ事業者が占めている」と明かす。
国土交通省がBIM/CIM原則化に乗り出し、4年目に入った。民間のインフラ事業者にもBIM/CIMデータ活用の流れは広がりつつある。施設管理向けの最適なツールを探しているケースも少なくない。最近は「BIMSTOKに行き着くことができた」と声をかけられるケースが増えている。「インフラ事業者の方から関心を示してくれる時代になり、風向きは変わりつつある」ことに手応えをつかんでいる。
悩ましいのは、インフラ事業者側に従来型の既存システムがあるため、本格導入まで時間がかかる点だ。トライアル施設での試行を繰り返しながら、本格導入に進む流れになる。先行して試行導入している施設では「今年度にも本格導入に結びつく案件が出てほしい」と期待を持っている。
海外展開も視野に入れている。同社が2021年3月にBIMSTOKを発表したタイミングで、真っ先に反応を示したのはフランスの建設コンサルタントだったこともあり、「海外でもニーズはある」と以前から考えていた。日本の建設コンサルタントなどが海外展開する際のツールとしても展開できることを想定し、BIMSTOKは日本語と英語の言語切り替えにも対応している。

自社のエンタープライズ向けデータ連携ツール「Early IO」とBIMSTOKとの連携強化も図った。維持管理の現場では点検記録や設備情報がExcelや各種システムに分散し、BIM/CIMモデルと実際の運用データが連携されていないなどの課題がある。特に関係者ごとに利用するシステムが異なるため情報が分断され、BIM/CIMを中心とした運用の定着が進まないことが要因の1つにもなっている。両ツールの連携より、分断されたデータが一元化され、個別開発に依存しないデータ連携や、大規模データにも対応した安定運用も実現できる。
田中氏は「施設管理用ツールを自社開発するインフラ事業者の中にはコスト面で計画を断念するケースもあり、そうした経緯からBIMSTOKの試験導入につながった事例がある。BIMSTOKの汎用性の高さと事務用パソコンでも運用できる利点を知ってほしい」と呼び掛ける。同社は着実に維持管理段階のBIM/CIM活用ニーズを切り開いている。

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