建設業界の3次元データ活用が新たな段階に入っている。土木分野では国土交通省によるBIM/CIMの原則適用やICT施工の普及、建築分野ではBIM図面審査が本格化するなど、設計から施工、維持管理までデジタルデータを活用する流れが急速に進む中、最前線の施工現場では「誰でも簡単に3次元データを取得し、業務へ活用したい」というニーズが広がりを見せている。

こうした変化の最前線で建設業界向けに3次元計測ソリューションを展開しているミルトス(東京都千代田区)の新田栄二ITエンジニアリングマネージャーは「現場で手軽に使いたいという3次元計測のニーズが顕著に現れている」と手応えを口にする。
同社は米DotProduct社製ハンディスキャナー「DPI」と3次元スキャンアプリ「Dot3D」の国内販売を手掛け、建設現場での3次元計測の普及を進めている。これまで点群計測といえば、高価なレーザースキャナーを専門技術者が扱うという印象が強かった。しかし近年はiPhoneやiPadに搭載されたLiDARセンサーの性能向上とソフトウェアの進化により、その状況は大きく変わり始めている。
Dot3Dは、スキャン中に高解像度写真を取得し、その場でプレビューできるほか、点群の歪みや二重化を抑える補正機能も備える。製造業向けとして販売を開始した約10年前から用途を広げ、土地家屋調査士の利用を経て、現在では建設業界での導入が急速に拡大している。国内ユーザーはすでに200社を超え、増加傾向が続く。

国土交通省がBIM/CIMやICT施工を推進する中、出来形管理や土量算出など、現場で点群データを活用する機会は年々増えている。元請企業から協力会社に対して3次元計測を求めるケースも増え、専門部署だけが使う技術から、現場担当者が日常的に利用するツールへと変化している。
こうしたニーズを受け、Dot3D最新版ではGPS座標との連携機能を搭載するとともに、従来の年間ライセンスに加え、3カ月単位で利用できる契約体系も用意した。工事単位で導入しやすくなったことで、中小規模の現場でも活用が進んでいる。
3次元データの重要性は計測だけにとどまらない。4月から建築確認ではBIM図面審査が始まり、設計・施工プロセス全体で3次元データの活用が求められる時代となった。新田氏は「BIM図面審査の本格化により、その基盤となる3次元データの取得がこれまで以上に重要になる」と指摘する。
こうした流れを受け、ミルトスは点群取得後の業務効率化にも力を入れている。今後国内販売を予定する米Smart Safety Software社の「AutoScene Draw」は、取得した点群データから短時間で図面を自動生成するソフトウェアだ。GeoTIFF形式での出力やCADデータとの重ね合わせ、図面への情報追加などにも対応し、従来手作業で行っていた図面作成業務の大幅な効率化が期待される。
さらにDot3DとGNSS測位機器を組み合わせることで、高精度な位置情報を持つ点群データを取得し、都市計画や道路整備、大規模施設工事など幅広い分野での活用を想定している。「海外では、3次元データを取得するだけでなく、設計や施工、維持管理まで一貫して活用する仕組みづくりが進む。その技術を日本市場にも展開していきたい」と新田氏は力強く語る。

6月に千葉市の幕張メッセで開かれた「CSPI-EXPO2026」でも、こうした市場の変化は顕著だった。ミルトスブースではDot3Dの実機体験やGNSSとの連携、最新ソリューションを紹介し、多くの来場者が足を止めた。関心を集めたのは、計測機器そのものではなく、「取得した3次元データをどのように業務へ活かすか」という点だった。
現場担当者が求めているのは、専門知識がなくても使える計測環境と、設計・施工・維持管理へシームレスにつながるデータ活用基盤である。建設DXは今、「3次元データを作る時代」から、「3次元データを業務全体で活かす時代」へと大きく舵を切り始めている。ミルトスの事例からは、建設DXの最前線が見え隠れしている。
7月24日にCSPI-EXPO2026フォローアップセミナー
ミルトスは、こうした最新動向や実践事例を紹介する「CSPI-EXPO2026フォローアップセミナー」を7月24日に東京都千代田区のTKP秋葉原カンファレンスセンターで開く。
セミナーには、きんでん技術研究所による設備工事での点群活用事例を基調講演として紹介するほか、Dot3Dを活用した現場スキャン、自動図面化ソフト「AutoScene Draw」、GNSS連携による高精度測位、3Dモデル化やXRを活用した教育・トレーニングなど、建設DXの実践事例を幅広く解説する。UEL、クモノスコーポレーション、NTジオテックスなども登壇し、データ連携やLiDARスキャナーの活用、販売代理店による導入事例なども紹介する予定という。
参加は無料。定員は90人。現場で進む3次元データ活用の最前線を知る機会としても、ぜひ会場に足を運んではどうか。申し込みはこちら

「FUKABORI」は注目の企業や最新トレンドなど気になる動きを深掘りするコーナーです。他の記事はこちら
