コイズミ照明が社内のBIM対応を本格化するため、BIM推進室を発足した。これまで照明設計部門のライティングクリエーティブグループ(LCR)が個別に進めてきたBIMデータの生成・管理を集約し、データ整備と社内人材の育成、顧客対応を一体的に進める。初年度は製品データの整備を最優先に取り組み、その先にはBIMを活用した照明設計の展開、さらには専門組織への発展を見据える。BIM推進室長に就任した能海尚也氏は「進行中のBIMデータ整備をできるだけ早く完了し、社外に向けてさらなる一歩を踏み出したい」と力強く語る。

ゼネコンや設計事務所、内装ディスプレー各社がBIM導入に舵を切る中、専業照明メーカーで先んじてBIM対応を進めてきた同社はBIMのステージを引き上げようと動き出した。9月に発足したBIM推進室は、東京と大阪の2人体制でスタートした。市場開発本部の下に位置付けられ、能海氏が東京を拠点に全体を統括し、大阪では橘京士郎氏がデータ整備を支援するとともに、顧客から寄せられる多様なBIM対応の要望に応える。両氏はともにLCRの設計室にも所属する形となり、BIM推進室を軸に活動しながらLCR設計担当としてBIMによる照明設計も手掛けていく。
初年度は製品データの整備と社内標準化に注力
これまで進めてきた照明製品のBIMデータ化は、継続的な対応が求められ、LCRの中で進めていくためには予想以上に時間と労力がかかる。能海氏は「新製品に合わせてコンスタントにBIMデータを公開していくためにもダウンライト、ベースライト、スポットライトなど照明設計に欠かせない一般照明製品のBIMデータ化を今年度内に整備を完了し、合わせて社内でデータを統一的に作成・運用するためのガイドラインも整備する」と意気込みを語る。
毎年発刊されるカタログに掲載される製品をBIMデータ化することで、実プロジェクトでのBIM提案をより円滑に進められるようになる。当面は両氏がデータ生成を担い、LCRの担当者が段階的にBIMを活用できるよう教育も進める。社内の標準BIMソフトとして位置付けるオートデスクの「Revit」の操作マニュアルや動画教材を用意し、最新バージョンに対応した操作手順の整備にも取り組む。「データ整備を進めながら、LCR全体のBIM対応力も高めていきたい。いずれは各拠点で使える人材を増やし、組織として対応できる体制をつくる」としっかりと先を見据えている。
能海氏とともにBIM推進を担うことになった橘氏は「BIMによる設計は、われわれ照明設計でもいずれ主流になり、顧客のニーズも高まることは間違いない。まずはスピード感を持ってデータ整備に取り組みたい」と意欲を示す。ゼネコンや設計事務所、内装会社によってBIMの進め方やデータの扱い方は異なる。「実際の案件に入る前に、トライアルを通じて成果物や業務の流れを確認し、手戻りを防ぐことが求められる。そのためにも製品のBIMデータ整備を整えていくことが何よりも重要になる」と見通している。
建築モデルに照明を配置し、空間づくりを支援
同社はBIM対応を通して、建築モデルに照明器具データを配置し、空間の見え方を事前に確認しながら、施主や設計者の意思決定を支援することに強みを見いだしている。近年は建物エントランスや店舗のメイン空間など、建築全体ではなく特定の空間について、照明のBIM対応を求められるケースが増えている。基本設計の段階でライン照明にするか、ダウンライトを採用するかといった選択によって空間の印象は大きく変わる。照明を配置したモデルやレンダリングによるパースを示すことで、施主が早い段階で完成イメージをつかみ、意思決定を進めやすくなる。

実務では、取引先から提供された建築モデルを基に、同社が照明データを配置して検討する。建築モデルそのものを一から作成するのではなく、既存のモデルに照明計画を組み込み、照明による空間の変化を可視化する。能海氏は「こうした流れを積極的に提案していきたい」の考えを示す。顧客企業のBIM推進担当者との交流に加え、実際にモデルを扱う設計者や内装デザイナーへのアプローチも強化する。社内のLCRで顧客を担当する営業・設計メンバーとも連携し、照明BIMの活用機会を広げていく。
BIM推進室から、照明BIM設計の専門組織へ
能海氏はBIM推進室の向かうべき方向性について「将来的に照明BIM設計の流れを確立したい」との考えを持っている。現在のLCRは2次元図面を主体とした照明設計が中心だが、BIMによる3次元設計が広がれば、設計手法そのものも変わる可能性がある。「データ整備を終えた後は、BIMを使った照明設計を活動の軸に置き、LCRの各拠点にも対応を広げていきたい」と先を見据えている。
顧客が利用するBIMソフトウエアへの対応にも目を向ける。現在はRevitを軸に進めているが、Archicadや設備設計向けのRebroなど、異なる環境でのデータ利用を求める声もある。「今後はニーズを見極めながら、対応するデータ形式やソフトウエアの幅を広げていく必要があるかもしれない」とも考えている。

AI技術の進展にも目を向けている。能海氏はAIとRevit、さらに自動化ツールのDynamoとの連携にも注目する。照明設計では、設計者が要望を聞き取り、空間の用途や雰囲気に応じて器具の種類や配置を決めていく。今後、AIが設計条件やパラメータを基に配置案を提示し、最適な照明計画の検討を支援する可能性もある。照明器具のBIMデータについても「将来的な自動化やAI活用を見据え、必要なパラメータの整備が重要になる」と付け加える。
「空間をつくる」ためのBIMを業界へ
同社市場開発本部長の橿棒直紀取締役は、BIM推進室発足を「当社が次のBIMステージに踏み込むための一歩」と位置付ける。照明メーカーとして先陣を切ってBIMデータ提供に乗り出し、BIMデータを軸に顧客との協業を進めてきた実績を積み上げながら着実にBIM対応の階段を上ってきた。「これからBIMの時代が来ることは間違いない。そこに向けてきちんと準備し、業界を先取りしていきたい。BIM推進室はいわば当社のBIM設計部隊として活動していく」と期待を込める。

まさに同社にとって、BIMは単なる製品データの提供手段ではない。照明器具のデータを届け、その先にある空間づくりまで顧客とともに進めるための協業していくための手段だ。BIM推進室はLCRの一部門として社内外の窓口となり、データ整備、設計、人材育成をつなぐ役割を担う。東京に能海氏、大阪に橘氏を置く枠組みだが、BIM対応人材が育ってくれば、LCR拠点を置く名古屋や福岡にもメンバーを付加していく流れになる。
BIM推進室は、データ整備を後押しするためだけの組織再編ではない。むしろ照明設計のノウハウを3次元の設計環境へと展開し、製品データの提供から空間提案までを一体で担う体制への第一歩となる。能海氏は「将来的にLCRの中のBIM設計部隊として活動していける存在になれるよう挑んでいきたい。現在LRCの4分の一に当たるRevitを使う設計者も前向きに目標をもって取り組めるきっかけになるだろう。将来、BIMが照明設計の主体になることは間違いない。まずはBIMデータ整備という基盤づくりに注力し、その先への一歩を踏み出したい」と思いを込める。
照明BIMの価値を実務の現場に届けられるか。基盤整備を終えた先に、同社の新たな設計サービスの可能性が広がる。