BIM未来図 地域建設業の今(上)

地域建設業の導入機運に高まり 
参加19社に美保テクノスが「3つのBIM」紹介

 地域建設会社のBIM導入機運が高まりを見せている。オートデスクが主催した地域建設業向けのBIM活用戦略フォーラムには、全国各地から地域建設会社19社約50人が参加し、BIM導入への関心の高さが浮き彫りになった。先陣を切るように社を挙げて取り組む美保テクノス(鳥取県米子市)とタカヤ(岩手県盛岡市)のBIM導入事例を通して、地域建設業のBIM最前線を追った。

全国から地域建設会社19社約50人が参加した会場は熱気に包まれた

 「BIM図面審査が動き出し、2029年からはBIMデータ審査が始まる。これまで大手・準大手ゼネコンが中心だったBIM導入の動きが、地域建設業にも広がり始めている」。フォーラム冒頭にあいさつしたオートデスクの中西智行社長はBIM導入機運の変化を紹介し、導入ニーズとして「人材育成やツール投資などの費用対効果をどう見極めていくかが地域建設会社のBIM導入課題としてクローズアップされている」と強調した。

 オートデスクが地域建設業に特化した意見交換の場としてフォーラムを開催したのは今回が初めてのことだ。参加したのは管野組、砂子組、タカヤ、深松組、陰山建設、小野組、本間組、小雀建設、内藤ハウス、河本工業、小林工業、ヤマト、島村工業、松永建設、美保テクノス、鳥取CLT、蜂谷工業、柄谷工務店、中和コンストラクションの19社。このうち15社がBIM導入の舵を切り、残り4社も前向きに導入検討に乗り出している。

 フォーラムのサブタイトルには「つくり続けるために」を掲げた。人手不足に加え、資機材価格や労務費の高騰を背景に、いかに生産性を確保していくかが地域建設業にとっての経営課題であり、その実現に向けて各社はBIM導入への期待を強く持っている。登壇した美保テクノスとタカヤの2社は、先行してBIMに取り組み、着実に成果を上げている地域建設業の代表的なBIMトップランナーであるだけに、その歩みは参加者にとって今後の参考になる貴重な事例でもあった。

登壇する美保テクノスの野津社長

 美保テクノスの野津健市社長が「人材確保、技術継承、生産性向上、働き方改革、資材高騰など、われわれ地域建設業の抱える課題は多岐にわたる。当社は課題解決のためBIMに取り組んできた」と語るように、BIMを軸に生産性改革に乗り出していきたいという思いはフォーラム参加者の共通する思い。その目線は両社がどのようにBIMと向き合っているか、そのポイントに向けられた。

 社員数225人の美保テクノスは2004年から全国でも先駆けてBIMに取り組んできた。現在はBIM戦略部を軸に置き、ベトナムのモデリング部隊と連携しながら社内へのBIM導入を推進している。設計部門を含めると総勢45人もの体制を確保し、その全員がBIMソフト「Revit」を使い、建設クラウドプラットフォーム「Forma」を基盤にしたプロジェクト管理を行う。

 同社は「後工程が困らないようにする」ことをBIM導入の重点テーマに掲げている。新田唯史取締役BIM戦略部長は「着工前までにBIMを活用して設計情報を正確に生成して現場に伝えることを重視している」と説明する。BIMの国際規格ISO19650を認証取得し、企画から監理・引き渡しまでを25項目に細分化したBIMワークフローを構築している点も同社の特徴となる。

木造4階建て延べ3000m2。施主であり資材供給を担ったミヨシ産業とBIMデータ連携も実現

 ミヨシ産業本社移転新築工事は、BIMの強みが惜しみなく発揮されたプロジェクトの1つだ。規模は木造4階建て延べ3000m2。施主であり、資材供給も担うミヨシ産業と連携し、BIMデータを使って資材のプレカットを実現した。設計段階ではプロジェクト関係者に対してRevitやFormaのトレーニングも行い、BIMによるデータ連携や情報共有の統一を図った。

 プロジェクトを担当したBIM戦略部の石川祥稀副主任は「施工段階でBIMデータを効果的に活用することができた」と振り返る。構造図に基づき、プレカット用のBIMモデルを作成し、Formaを介してデータを共有した。それを使ってプレカットの金物モデルを作り、積算にもBIMデータを活用した。プレカット3次元モデルをRevitに取り込み、干渉チェックや図面作成に活用し、施工側に提供した。

プロジェクト関係者へのRevitやFormaのトレーニング風景

 施設は木造4階建てオフィスビルとなるため、耐火や耐震の関係で壁仕様は複雑になり、多いところでCLTパネル止めのビスはパネル1枚当たり400~500カ所に達し、しかもパネルサイズや壁種別によってビス割が異なった。当初は116種類もの型番を作成する必要があったが、一番大きい板サイズの型番を造り、現場で調整を行う変更によって「3種類を用意するだけで対応できるように現場での調整を図った」と付け加える。

 ビス同士の干渉も3次元で確認したほか、斜め打ちができるかを検証し、その方法を説明する手段としてアニメーション化も行った。特にモックアップでは「アニメーションが干渉確認の手戻り防止につながり、合意形成をスピードアップすることができた」と強調する。

ミヨシ産業本社移転新築工事を担当したBIM戦略部の石川祥稀副主任

 美保テクノスではBIM導入目標として「目立つBIM」「稼ぐBIM」「役立つBIM」の3つを掲げている。

 野津氏は、苦戦苦闘しながらもプロジェクトを完成に導いた石川氏に対して「貢献したいという前向きな思いを持っていたからこそ、難関のプロジェクトを成し遂げることができた」とねぎらう。20年以上前からBIMに取り組み始めた同社には近年、BIMに取り組みたいと入社してくる人材が増えている。「彼もそのうちの1人であり、BIMのトップランナーとしての活動が人材確保面で効果を発揮し始めている。BIMによる可視化は技術者の早期戦力化にも貢献している」と、目立つBIMの効果を語る。

 「ただ、BIMを実践していくためにコストをかけているだけに、一定の収益を上げる必要がある。利益をまだ十分に上げているとは言えないが、少しずつBIMが収益面にも貢献してきている」と稼ぐBIMについても手応えをつかんでいる。

 同社にとって、社是である「良い仕事を早く安く安全に」の実現は、BIMの導入効果そのものになる。「ここが一番重要だと思っている。役立つBIMは、まさに本業の部分であり、いかに生産性向上や品質確保の部分で効果を発揮していくかが重要になってくる。社を挙げて意識を一つにして今後もBIMに取り組んでいきたい」と思いを込める。

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