BIM未来図 三建設備工業(2)

AUで触れた世界の潮流が起点に 
2年かけ新たなPJ管理構築

 三建設備工業が社を挙げて取り組み始めた新たなプロジェクト(PJ)管理の原点は、2020年頃にさかのぼる。同社が空調衛生設備工事を担当した竹中工務店施工の庁舎PJに当時、現場代理人として携わっていたDX推進本部DX推進部の日比俊介担当部長は「BIMデータを活用したPJ管理に取り組もうと試行錯誤を繰り返した」ことを今でも鮮明に覚えている。

原点となったRFIDタグの取り組み

 ここで取り組んだことの一つが、電波による非接触の自動認識技術として注目されていたRFIDタグによる進捗(しんちょく)管理の試みだった。「竹中工務店の協力もあり、さまざまな検証ができた。BIMの取り組みを進める中で、進捗管理では資材のステータスがデータの起点になるという思いを強くした」と振り返る。

 その考え方は、23年10月に米国・ラスベガスで開催したオートデスクの国際カンファレンス『Autodesk University(AU)』に参加したことをきっかけに確信に変わった。当初はBIMソフト「Revit」の最前線を知りたいと考えていたが、クラウドを介してデータをやり取りするCDE(共通データ環境)の流れが世界の潮流であることを知り、建設クラウドプラットフォーム「Autodesk Construction Cloud」(現・Forma)関連のセッションを精力的に聴講した。

 「AUで見聞きしたことが起点となり、将来を見据えてPJ管理システムを構築していくためには、データベース(DB)の在り方そのものを見直す必要がある」との考えに至った。日比氏とともにAUに参加したDX推進部の内田泰斗課長代理はCDEを構築する企業の多くが内部のエンジニアがシステム開発を担う現状を知り、「システムづくりを外部委託するのでなく社内で組織化して推進していく重要性を実感した」という。

 両氏はCDE関連のセッションに参加する中で、施工者や設計者だけでなく、オーナーサイドも含めエコシステムとしてクラウドプラットフォームを活用している点に着目した。日比氏は「海外事例を見て痛感したのは、まさにDBの重要性だった。モデルではなく、データの部分が循環しなければシステムとして機能しない。それは間違いなく当社が進むべき方向性である」と確信した成果であった。

SCSのデータの流れ

 帰国後、AUで得た知見と自らの構想を松井栄一社長に直接説明した。24年4月にはDX推進本部が発足し、DX推進部には日比氏をはじめ各部門から10人の精鋭が集まった。2年間の歳月をかけて準備を進めてきたPJ管理システム「Sanken Construction System(SCS)」は、Formaが基盤になり、調達から施工、検査、竣工までの各段階によって変化する資材情報の状態変化を構造化されたデータとして蓄積していくものとなり、今年4月から現場導入がスタートした。

 「生成AI(人工知能)は確率論的な答えしか出してくれない。現場に裏打ちされたデータを蓄積してこそ、AIをより有効に機能させることができる。私が原点に立ち返り、DBの構築にこだわるのは蓄積データの価値を将来に向けて創出するためであり、その意味を現場にも広く理解してもらうことがその第一歩になる」

 現場への運用を機に、DX推進部の役割は、SCSがもたらす価値を現場に周知することに変化した。PJリーダーとして推進部内や各拠点兼務メンバーの取りまとめ役を担う高橋渉課長代理は「Formaを使うことで、現場がやり方を変えることなく、資材情報を共有することができた。データを蓄積していく意味を理解して取り組んでもらうことが次なるわれわれの役割になる」と思いを込める。

記事トレンド把握のため、気軽に押して下さい

トップに戻る

注目コンテンツ