連載 日本流を極める

ペーパレススタジオジャパン(下) 
改革と感動もたらすコンサルティング

 ペーパレススタジオジャパンが岩堀建設工業(埼玉県川越市)、進和建設工業(大阪府堺市)、ダイムワカイ(京都市)など地域建設会社7社それぞれと共同プロジェクトを本格化したのは2025年5月のことだ。「ベテラン社員が近い将来、退職してしまうまでに貴重なノウハウを継承したい」。そうした経営者からの相談が共同プロジェクト発足のきっかけになった。

 ペーパレススタジオジャパンでは、建設会社の中にある議事録や図面、積算データ、作業計画書、現場写真などの情報を集約し、RAG(検索拡張生成)技術を使ったベクトルデータベースを整備することで、蓄積したあらゆる社内情報の中から最適な情報を指し示す独自のクラウドシステムを構築している。勝目高行社長は「単なるキーワード検索でなく、意味検索ができるようになり、チャットで質問しながら答えを出すが、Chat(チャット)GPTのような生成AI(人工知能)サービスとは異なり、社内のデータベースに基づくナレッジの中から最適解を示す点が特徴」と説明する。

 基盤となるベクトルデータベースづくりでは、ベテラン技術者などに念入りなヒアリングを行い、記憶の部分も含めて情報を蓄積するほか、共同プロジェクト参加企業の中には現場担当にボディーカメラを装着し、行動などの情報も蓄積する試みを始めた動きもある。「これまで情報化に力を入れてこなかったと嘆く建設会社でも、蓄積した資産情報を使ってナレッジシステムを構築できる」と呼び掛ける。

 並行して取り組む「日本型DfMA(製造・組み立てを考慮した設計)」については、3年計画で取り組んでおり、アーム型ロボットの導入を前提にデジタルデータによって建材や部材を製造する流れを構築することに力を注いでいる。見積もり依頼をAIで自動化し、担当者は受託が決まった案件への対応に集中できるようにすることで、成約率も高める取り組みも展開中という。

 勝目氏は「既存の加工機を生かし、それを補う役割としてアーム型ロボットを配置することで初期投資を抑え、職人の技部分についてもロジック化し、AI制御でロボットに取り組ませるような試みも進めていく」と明かす。まさにペーパレススタジオジャパンが取り組む建設DX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティングは、企業の困りごとを把握し、成長への道筋につなぐ改善メニューを提示する部分だ。

 25年9月に事業サービスをBIMから建設DXの領域にシフトした同社は『あらゆる先端技術をオーケストレーションし、建設業に改革と感動をもたらす』というパーパスを掲げた。転身を図るタイミングで、組織を去る社員もいたが、同社の新たな考え方に共感する新メンバーも加わり、組織体制も大きく進化を遂げた。

 勝目氏は「十数年の間、BIMを軸にしたコンサルティング活動をしてきたが、BIMだけでは乗り切れない課題が数多く存在していることを実感した。海外の最新事例を参考にするのでなく、あくまでも日本流を極めることが企業の成長戦略としてとても重要な視点になる。これからの時代は、人の手で取り組んできた作業をデジタル、AI、ロボットにシンクロさせながら、社員はより本質の部分で力を発揮することが企業の成長を後押しする大きな原動力になる。当社はデジタル経営コンサル的な役割を強めながら、建設業界に感動を届けたい」と思いを込める。

 「日本流を極める」とは、まさにペーパレススタジオジャパン自身にも当てはまる挑戦へのメッセージである。

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