NEXCO中日本がBIM/CIMの検討に着手したのは2017年のことだ。20年にi-Construction導入展開に向けた基本方針を示し、22年には3次元モデル作成暫定要領を策定するなど、着実にBIM/CIM活用の流れを整えてきた。試行プロジェクトを積極的に展開してきたことで、各支社にもBIM/CIMへの取り組み意識が芽生えている。

同社には、興味や関心のある社内の取り組みにチャレンジできる「社内複業」制度がある。石田篤徳技術本部環境・技術企画部技術企画課専門副主幹(インフラDX担当)は「東海北陸道を担当する高山工事事務所と、紀勢自動車道を担当する津高速道路事務所から各1人が、BIM/CIMの必要性を理解し率先して複業に手を挙げてくれた」と明かす。
東海北陸道では4車線化事業に向けた調査が進行中で土質調査の完了を受けて設計段階のフェーズに突入し、BIM/CIM活用が本格的にスタートした。紀勢自動車道では設計から施工に移行する段階でBIM/CIMデータの引き継ぎが進もうとしている。複業を始めた両者からはBIM/CIM活用状況や課題などを共有してもらい、それを要領の改定などに反映している。BIM/CIM推進に向けて最前線の現場と一体化した流れも機能している。
「発注者主導のデータシェアリングに対する率直な思いを伝えた」。25年9月に米国テネシー州ナッシュビルで開催された国際カンファレンス「Autodesk University(AU)」で登壇した石田氏は、BIM/CIM全面適用に際してCDE(共通データ環境)プラットフォームにオートデスクの「Forma」を導入した効果を紹介した。
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海外でもインフラプロジェクトにFormaを活用する流れが進展しており、全面適用に乗り出したNEXCO中日本の取り組みは海外のインフラ事業者からも注目された。受注者が作成する3次元モデルは自らの業務や工事を円滑に進めるための手段であり、発注者が必要とするモデルとは異なる場合が多い。それだけに、発注者はどうモデルを引き継いでいくかが課題としてある。
石田氏は「発注者は何のためにモデルを使うか、その目的を明確に位置付けることが重要である。われわれのように高速道路事業全体の生産性向上を目指してBIM/CIMを活用するのであれば、発注者主導の枠組みを構築すべきだ」と訴えた。先行する海外インフラ事業では維持管理を軸にFormaを活用する流れが着実に広がっており、石田氏自身もAUの参加で「当社が将来的に取り組もうとしている方向性が間違っていない」ことをつかんだ。
同社にとってBIM/CIM全面適用の最終目標である生産性向上の実現は、建設生産段階だけを見据えてはいない。維持管理段階を含めた高速道路事業全体における生産性向上が最終到達点となる。社内では全社横断で次世代技術を活用した革新的なプロジェクト「i-MOVEMENT」の取り組みが進行中。「この流れにBIM/CIM活用は密接に連携していく」。現在運用中のRIMS(道路保全情報システム)で規定する構造物などの資産コードをBIM/CIMモデルの属性情報として位置付けているのもその一環だ。
生産性向上の実現に向けた効率化、高度化、省人化への道筋をどう進んでいくか。石田氏は「30年度の目標達成を位置付ける効率化に対し、受発注者それぞれがきちんとマインドチェンジできるか。この5年間が勝負になる」と自らにも言い聞かせる。同社は到達点に向けて着実な一歩を刻み始めた。
この記事は建設通信新聞からの転載です