オートデスクは、設計・建設・製造のデータと、建物や設備などの実環境から得られる運用データをつなぎ、現場で得られた知見を次の意思決定や設計に生かす新たなデータ連携体制を構築した。運用プラットフォーム「Tandem」を軸に、AEC向けクラウド「Forma」、シミュレーションソフト「FlexSim」、保全管理の「MaintainX」を連携させる枠組みとなり、運用データを次の設計へつなげる流れを想定している。

これまで建物や製品を「設計・製造する」領域を中心にサービスを展開してきた同社だが、その範囲を運用領域まで広げ、設計、建設・製造、運用で発生するデータを一つの情報の流れとしてつなぐ考え方を示した。
その中心となるTandemは、施設の空間やシステム、資産、プロセス、運用データなどを集約し、実際の施設をデジタル上に再現する運用向けデジタルツイン基盤となり、9月15~17日に米国ラスベガスで開催したAutodesk University 2026(AU 2026)に合わせて、FormaとのAI連携を位置付けた。
具体的にはFormaのモデルコーディネーションを活用してBIMデータや製造データを同一プロジェクトに取り込み、運用に必要な情報を集約したデジタルツインを構築するもので、同社のAIエージェント「Autodesk Assistant」がセンサーデータとTandem内の資産との関連付けを支援し、デジタルツインの構築・維持にかかる作業負担を軽減する。
TandemとFlexSimの連携では、デジタルツイン上で実際の運用データを使ったプロセスシミュレーションを可能にする。例えば空港の保安検査場では、人の流れや設備利用状況をモデル化し、検査レーンの構成を変更した場合の影響を実際に設備を変更する前に比較・検証できる。
これにより、現実の運用状況を踏まえてボトルネックや処理能力を分析し、設備やレイアウトの変更による効果を事前に検討でき、デジタルツインを「現状を再現するモデル」から、「変更した場合の結果を試すモデル」へ発展させる。
保全領域ではMaintainXとの連携を進める。Tandemが通常とは異なる稼働状態にある設備を捉えた場合、MaintainXで保全ワークフローを開始。管理者が作業を割り当て、現場の技術者が稼働データや保守履歴、メーカー資料などを確認しながら対応する。作業後の保全記録も資産の履歴として蓄積し、次の運用に利用するという。
同社は、今年5月に設計・製造・運用をつなぐ「Autodesk Operations Solutions(AOS)」を発表しており、Tandem、FlexSim、Fusion Operationsなどの運用関連技術を一つの戦略の下に位置付けている。8月にはMaintainXの買収も完了しており、AU 2026ではその方向性を具体化した格好だ。
同社は、保全作業や設備故障、修理、性能改善などから得られる運用上の知見を次のプロジェクトへフィードバックすることで、将来の設計や投資判断にも活用する考え。運用しやすく、保全しやすい施設や設備を設計段階から検討することにもつなげるとしている。
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BIMedia目線ーーオートデスクはデジタルツインを完成した施設のデータ置き場で終わらせず、運用データを次の設計へ戻す循環型の仕組みにしようとしている。従来のBIMでは、設計・施工段階で作成したモデルを、竣工後の維持管理へどう引き継ぐかが一つの課題だった。同社の構想はBIMデータをTandemに取り込み、実際の設備の稼働状況や保全履歴まで重ねるものとなり、シミュレーションによって変更前の検証を行い、その結果や運用時の知見を次の設計へ戻していく。これは、BIMの役割が建物が実際にどう使われ、どう維持され、何が起きたのかを次の建設に生かすためのデータ基盤へ広がる動きとも捉えることができる。
