日立製作所は、社会インフラや産業設備の保守・点検現場を対象に、3Dデジタルツイン上での熟練者の操作ログから実践知を抽出し、経験の浅い作業者への知見継承を支援する手法を開発した。設備のどこを、どの順番で確認し、どの文書を参照するかといった熟練者の行動をデータとして捉え、非熟練者が必要な情報へ素早く到達できるよう支援する。

保守・点検業務では、設備の構造や関連文書を把握するだけでなく、熟練者が経験から身につけた確認の順序や着目点などの実践的なノウハウが重要となる。こうした知見は暗黙知になりやすく、マニュアルや文書だけでは継承しにくいという課題がある。
日立が開発した手法は3Dデジタルツイン上で熟練者が行ったカメラ移動、部品の表示・非表示、分解、関連文書の閲覧、検索などの操作をログとして記録・解析するもので、解析したログからは熟練者が有用と判断した確認箇所や参照文書、その際の3D上の視点や部品の表示状態などを抽出する。これらを文書と3D画面の情報として整理することで、非熟練者に「何を見るか」だけでなく、「どのように確認するか」まで提示できるようにした。
非熟練者が作業中の困りごとを選択すると、関連する文書や3D画面を支援情報として表示するほか、熟練者が実際に確認していた3D上の場面を自動的に再現する。部品の分解や表示・非表示の状態も再現することで、必要な情報への到達を支援する。
鉄道車両の保守・点検作業の一部を模擬した検証では、熟練者の知見を提示した場合、非熟練者が必要な情報に到達するまでの時間を中央値比較で60%削減した。熟練者が実際に着目した箇所や確認方法を提示することで、マニュアルだけでは把握しにくい実践的な視点を提供できる可能性を示した。
同社は今後、現場での検証を進め、保守・点検における熟練者不足への対応や教育、知見継承への活用を進める。今回蓄積・整理するOT(Operational Technology)ナレッジとAIエージェントを組み合わせ、Lumada 3.0を実現する技術の一つとして現場業務の高度化につなげる考えだ。
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BIMedia目線ーー注目されるのは、3Dデジタルツインに設備の情報だけでなく、熟練者がその情報をどう使ったかまで蓄積しようとしている点だ。BIMやデジタルツインは、これまで設備の形状や属性情報を共有する基盤として活用されてきた。そこに作業者の視点や操作履歴、参照した文書などを重ねれば3Dモデルが単なる設備のデータベースから、現場の知見を蓄積するプラットフォームへ発展する可能性がある。建設・維持管理の現場でも、熟練者がBIMモデルや点群、施工記録などをどのような順序で確認しているかをデータ化できれば、若手技術者への教育や点検、トラブル対応を支援する仕組みにつながる。今後は、モデルを使った人の知識まで蓄積するDXへ進むかが、デジタルツイン活用の一つの焦点になりそうだ。
