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安井建築設計事務所 DDW 
BIMを組織の付加価値につなげる

 安井建築設計事務所が、2026年度からスタートした新中期経営計画に合わせ、設計プロセスの再構築に乗り出した。同業他社に先駆けて07年からBIM導入に舵を切り、着実に社内への浸透を図ってきたが、設計者それぞれがほとんどのプロジェクトでBIMを自主的に活用する一方、組織としてプロセスの最適化を図る観点では課題があった。デジタル×デザイン ワークス(DDW)の繁戸和幸部長は「各自の主体的な取り組みを業務フローに組み込むことで、BIMを組織としての付加価値につなげていく」と強調する。

左から森氏、幡宮氏、繁戸氏、清水氏、片野氏、山岸氏

 社内では新たな知を創出・発信する横断組織が設けられ、DDWは設計プロセスの再構築を技術面で先導する部署と位置付けられた。BIM推進の中心的な役割を担う幡宮祥平主幹は「当社のBIMプロジェクトとはこういうものという明確な枠組みを示すことで底上げを図っていきたい」と先を見据える。

 DDWでは、BIM標準ソフトに位置付けるオートデスクの『Revit』を軸にしたシステム開発を積極的に進めている。繁戸氏は「各メンバーが自らのもつ強みを生かし、Revitデータの活用価値を最大化する独自ツールを手がけている」と口にする。

 2年の開発・検証を経て、今年1月に発表した「BIM-省エネ計算プログラム」もその一つだ。標準入力法による建築物の省エネ計算に必要な情報をRevitデータから自動抽出するもので、4月から新たな確認申請の枠組みとして制度化されたBIM図面審査用のサンプルモデルによる検証では、外皮情報の取得率が95%に達する成果を得た。

 開発担当の片野美香氏は「庁舎や学校など設計中の複数プロジェクトで具体検証もスタートした。プログラムの使い勝手だけではなく、どのタイミングで誰が活用することが最適であるかも含めてトータルで検証していく」と説明する。実務では確認申請の段階になって省エネ基準に適合しないケースも見られる。清水望実主査は「基本設計など早い段階から意匠設計者がより簡易的に活用できる枠組みが有効になってくる」と付け加える。

DDWは多能な技術集団

 近年のRevitは、AI機能が拡充されるなどBIMツールとして新たな進化を遂げようとしている。繁戸氏は「DDWでは省エネ計算プログラムのように、独自ツールの開発によって、われわれの技術ノウハウを付加価値として入れ込んでいる」と明かす。10件ほど独自アドインを手がける山岸隆主査が「社内から寄せられる技術的な相談をヒントに共通する課題を洗い出し、新たなツールとして実装している」と語るように、まさにDDWがデジタル活用の牽引役を担っている。

 東京都内の小学校統合プロジェクトでは、児童約70人の思い出を画像生成AIによって空間提案として具現化する試みも展開中。担当の清水氏は「画像生成AIとRevitを組み合わせた新たな空間ワークショップのあり方に挑んでいる」と説明する。繁戸氏も「このようにRevitデータから設計の価値を導き出す試みを社内ではより重要視している」と続ける。

 11年に同社は独自に策定したBIMのテンプレートを社外に公開し、継続して行われてきたテンプレート整備は設計プロセスの再構築で柱の一つとなる。森翔馬主査は「BIM普及と業界発展に向けた当時の思いを受け継ぎ、公開することができれば」と前を向く。このようにBIM普及に力を注いできた同社は、発注者のBIM導入のパートナーとしても存在感を増している。

 幡宮氏は「東京都や大阪市を始め複数の自治体に対してBIMガイドラインの策定業務を受託しているほか、民間デベロッパー向けの導入コンサルティング実績も増えている。われわれのBIMのノウハウが発注者側に広がっているのは大きな成果」と手応えを口にする。

 DDWは現在7人体制(専任)で運営している。繁戸氏は「社会や顧客の課題を解決することが設計者の使命で、そこに至るまでのプロセスをデジタルの力で変革することが、われわれの役割である」と思いを込める。BIMデータ活用が高度化する同社の中で、DDWは多能な技術集団として、その力を存分に発揮している。

この記事は 建設通信新聞 特集「BIM2026」からの転載です

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