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西松建設×WOGO(下) 
連携強めFMや積算にRevitモデル活用へ

 西松建設とWOGOは、4月に「BIMモデル最適化ツール」の新バージョンを完成させた。1年前に開発した旧バージョンはオートデスクのBIMソフト「Revit」からIFC形式で出力したデータを解析シミュレーションソフト側に取り込みやすくするものであったが、建物形状が限られ、より複雑な形状の建物には対応が難しかった。

 新バージョンは、あらゆる建物形状に対応できるようになり、それに加えて解析用モデル生成の速度も向上し、旧バージョンで15分かかっていたモデル最適化を3分程度に短縮した。西松建設の中原拓哉設計BIM課主任は「解析ソフト側にはRevitモデルを解析しやすいようにデフォルメしてしまうプログラム上の癖みたいなものがあることがわかり、それを解消する流れが新バージョンの開発につながった」と説明する。

 WOGO側で新バージョンの開発担当を務めた松本光平エンジニアは「外形化のアルゴリズムに、別のアルゴリズムを組み合わせることで対応力を上げた」と強調する。建物の形状モデルが閉じた状態になっていない場合、これまでは外形モデルのデータを完全に取得できない課題が見られた。開発時のポイントに位置付けたのは、建物の「内と外」の区分けを明確化することだった。

 新バージョンでは建物内の情報全てをそぎ落とした上で、建物外形の情報だけをピックアップすることを追求した。区分けする際のアルゴリズムにはいくつかのパターンがあり、それを微調整しながら最適化することでより精度を高めた。「これは私一人の成果でなく、社内にアルゴリズムに強い人材が何人もいて、皆でディスカッションしながらより良い方法を導き出した成果になる」と付け加える。

 現在35人体制のWOGOではエンジニアが全体の8割を占める。秦竟超CEOは「皆、問題を解くことが大好きで、システム開発でも暗礁に乗り上げた時などには意見を出し合いながら解決していくことが当社の社風になっている」と話す

暗礁に乗り上げた時などには意見を出し合いながら解決していくことがWOGOの社風

 新バージョンに向けたアイデア出しでも活発な意見が寄せられた。「そもそもアルゴリズムは万能ではなく、適合した際の相性がある。そうした暗黙知的な判断の部分をエンジニアの共通認識として皆が理解している点が当社の強み」と強調する。

 西松建設の三ケ尻幸生設計BIM課長は、この成果を「さらに発展させていきたい」と考えている。両社では天空率や日影計算に続き、気流解析向け最適ツールの開発も進行中だ。現在の気流解析ではRevitモデルを使わず、あえて簡易な建物モデルを別で作成し、それを専用ソフトに取り込んでいる。そこで実施設計モデルをIFCデータに出力する前に、簡素化したモデルに変更した上で解析ソフトに取り込む流れにすることで「より合理的な流れに変えていきたい」と考えている。

 両社が共同開発をスタートして1年半ほどが経過しようとしている。秦氏は共同開発を通じて「2つの学びがあった」と説明する。当初はRevitモデルから容易に形状を取得できると考えていたが、ドアや壁、床や天井などのファミリごとに挙動が異なることを認識した。そして「当社のアルゴリズムがまだ完璧ではない」ことを気付かせてくれたことも大きな収穫だった。「西松建設には当社の技術を底上げしてもらえた点でも感謝している」と語る。

 西松建設がBIMモデル最適化ツールを常に進化させていこうと考えている背景には、実務の中でRevitデータを最大限に活用していきたいという強い思いがある。

左から西松建設の中原氏と三ケ尻氏、WOGOの秦氏と松本氏

 社内ではBIMロードマップに沿って、プロジェクトへの導入が計画通りに進んでいるものの、設計から生産設計、そして施工に部門間をつなぐデータ連携という点ではまだ取り組むべき課題が残っている。三ケ尻氏は「Revitモデルをダイレクトに生かす流れを確立していくことが生産プロセス全体の底上げにつながる。WOGOとの連携をきっかけにReivtモデル活用の幅をさらに広げていきたい」と期待を込める

 将来的に見据えるのはFMや積算への展開だ。中原氏は「Revitの強みである属性情報を活用する部分についても、WOGOと連携して新たな枠組みを導き出していきたい」と考えている。秦氏も共同開発を進める中で「形状だけでなく、ファミリの概念部分も含めた自動化についても実現できる」と手応えを得ている。

 三ケ尻氏は「外部のBIMエンジニアやソフトメーカーにも参加してもらい、新たな課題解決に向けてチャレンジしていきたい」と先を見据えている。BIMモデル最適化ツールの共同開発を出発点とした両社の二人三脚は歩幅を広げ、次なる一歩を踏み出そうとしている。

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