「標準化の先にある素晴らしい未来を描きたい」。BIMコンサル会社のPLUS.1が創業から3年目を迎えた記念セミナー「BIM PLUS.1 Summit2026」で、同社の高木英一CEOは、BIM標準化に向ける自らの思いを熱く語った。急速に進化するAIテクノロジーとの関係性も含め、標準化の制度設計に向けたポイントとは何か。高木氏の講演を通して、日本のBIM標準化が進むべき道筋を追った。

6月23日開催のセミナー会場は、220人もの参加者で埋め尽くされ、しかも同時にオンラインでライブ配信され、900人を超える聴講者であふれた。イベントへの協賛企業は同社とパートナー関係にあるソフトベンダーやAI系スタートアップなど18社が名を連ねた。セミナーを皮切りに同社と協創関係にあるゼネコンや建築設計事務所など12社の最新BIM事例も、1カ月間の無料オンデマンド配信がスタートした。
「創業3年目に入り『継承』『協創』『挑戦』を掲げて事業展開している。当社がこれからどこに向かい、日本のBIM標準化に向けて何をしていこうとしているか。この場では『挑戦』についての思いを伝えたい」。壇上に立った高木氏は、そう呼び掛けた。

「誰もがBIMにつながる世界」の実現を旗印に活動を続ける同社にとって、BIMの標準化に向けた活動は事業展開の根幹に当たるテーマでもある。現在は25ものコンサルメニューを確立し、現状分析から目標立案、戦略設定、そして効果を図りながら伴走していく活動を展開中。コンサルティングを進める中で相談される製品開発や人材提供などは、強みをもつパートナーと連携する「協創ビジネス」を展開する点が同社の特徴だ。
国土交通省のBIM推進会議ではBIM標準化に向けた議論が進展している。データ連携環境の整備に向け、各部会をつなぐ標準化タスクフォース(TF)が発足し、横断的な検討フェーズが進行中だ。同社セミナーで標準化TFメンバーによる講演が企画されたように、国としてどうBIM標準化を推し進めていくかは、建設産業界の成長につながる最重点テーマになっている。

「データをただ揃えるだけでは何の意味もない」。高木氏は情報活用の流れを成熟度モデルとして位置付けていく考え方に当てはめながら話しを展開する。データは「実態」を表し、インフォメーションはそれを「理解できる」形にし、インテリジェンスは複数の情報を集めてより「理解を深める」ものとなる。それによって人が判断(Decision)をして実行(Action)して成果(Outcom)を得る。
その流れはIQ(知能指数)とEQ(感情指数)の領域に区分けされ、IQは技術的な処理能力の部分であり、EQは人の判断や見極めの部分となる。「まさにAIと人の住み分けができ、この流れが綺麗にまわるようになれば、非常にまとまったデジタルのサイクルが確立できる。しかし、その間には『可読性』『サイロ』『組織活用』『手戻り』『資産化』という5つの壁があり、それをどう解決していくかが、とても重要になる」と強調する。

例えば可読性の壁については、データに不整合があった場合、インフォメーションとして確認できないため、AIは判断ができない。AIを機能させるためには人が正しい情報に修正する必要があり、不整合が多ければ処理コストは増大してしまう壁が存在する。それを解消するためにチェックリストを作り過ぎてしまえば、それが業務負担になってしまう。
壁を乗り越えていくためにデータをどう整えていくか。「その順序が大切になってくる」と高木氏は説明する。PPTの考え方に当てはめた場合、まずプロセスを変え、それを担保する人や組織を形づくり、その上で最適なテクノロジーを選択すべきとし、どういったアウトカム(成果)を得たいかを逆算して考え、データを整備していくことの重要性を訴える。
高木氏は「5つの壁を越えてデータをAIの資産に変え、人は判断や責任に集中できるようにする。そうした情報環境を設計することが標準化の道筋になる。命名規則や分類コードだけを決め、情報の粒度を上げていくような個別の対策だけでは標準化は実現できない。5つの壁を越える情報環境づくりこそが何よりも大切」と力を込める。

BIMコンサルとして同社が存在感を増している背景には、きちんと投資効果を見極めながら活動している点にある。「データという資産は何も対策を講じなければ、活用を進めるに当たって人による確認コストが増大し、生産時の不整合も置き去りになり、データ自体の価値を下げてしまう」。まさにアウトカムから逆算した標準化が、高木氏の訴えるポイントの1つだ。
「投資を増やせばいいのではない。現状を把握し、目的をきちんと定め、どのようにデータを使い、どのような成果を得たいか、その前提条件を決めるスタートラインの部分が何によりも大切になってくる」。高木氏は人気アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するシャア・アズナブルの台詞に例えてこう結ぶ。
量産型のザクで性能差3倍のガンダムに挑むシャアは「モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的な違いではないことを教えてやる」という名言を残す。「まさにデジタルツールの性能ではなく、それを使いこなす人のスキルがデジタル時代ではより問われる。カスタマイズや開発投資を推し進めることも大事だが、われわれ建設産業界がデジタルとどう向き合うかが、その姿勢がより重要になってくる」。講演はPLUS.1の存在感をさらに強める熱いメッセージとして会場を包み込んだ。
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