連載 時代は情報マネジメントへ (1)

今こそ、勇気を持ってBIMを捨てよう! 
伊藤久晴 BIMプロセスイノベーション代表

 私が、2006年に初代Revit User Groupを始め、「BIM」に取り組み始めてから、20年が経過した。その頃から、BIM(Building Information Modelling)にずっと取り組んできたが、今はこの言葉自体を見直す時期が来ていると感じている。

 BIM(ビム)という言葉は、20年前は、誰も知らない言葉であったが、今では建設業界に関連する者なら誰もが知っている。しかし、実際は日本では、BIMという言葉の意味が、大きく誤解されている。実は、私も長く間違えていたのだが、ISO19650を深く読み込むことで、やっと本来の意味が理解できるようになった。

 日本では、「Building Information」 を「建物の情報」と捉え、「Modelling」を「BIMソフトウェアで属性を持った3次元モデルを作ること」、と理解されている。つまり、「BIMソフトウェアで作られた3次元の形状と属性を持った建物のモデルがBIM」であり、それを活用することで、生産性の向上などに繋がるという考え方だ。この考え方では、2次元CADによる図面や、設備や構造の計算書などの資料はBIMに含まれていないために、それらの情報はBIMの範囲外とされる。実業務において、2次元CADによる図面をすべてなくすことは難しいし、設備や構造の計算書の情報をBIMモデルに含ませることは不可能で、この日本のBIMの解釈では、設計・施工のプロセス全体の改善にはつながらない。

 このような誤解は、海外でも起きている。英国においても、BIMという言葉がBIMモデルやBIMソフトウェアのことと、昔は捉えられていたために、上記のようにいくら説明しても、誤解を解くことはできないために、BIMという言葉から、IM(情報マネジメント)という言葉に焦点を移そうとしている。

BIMからIM(情報マネジメント)へと焦点が移っている

 BIMの本当の意味を説明する。まず、「Information Model:情報モデル」という言葉がキーになる。情報モデルとは、設計施工の成果物のすべての情報のことを指し、BIMソフトウェアによる3次元モデルも、2次元CADによる図面や設備や構造の計算書も含まれる。この情報モデルを作ることが、Information Modellingである。そして、Buildingであるが、これはビルとか建物という意味だけではなく、「情報を構築する活動」と捉えると、その意図を理解しやすい。つまり、Building Information Modellingとは、意思決定のために情報を生み出し、構造化し、流通させる仕組みを構築することである。

 ちなみに、国際規格、ISO19650-1:2018 での、BIMの定義(3.3.12)は下記である

意思決定のための信頼できる基礎を形成する設計、建設及び運用プロセスを容易にするための建設 資産の共有デジタル表現の使用

BIMからIM(情報マネジメント)への移行イメージ

 英国では、「BIM to IM」という言葉があり、取り組みの焦点を変えようとする動きが出ている。BIMという言葉を捨て、IM(情報マネジメント)という言葉にフォーカスして取り組みを進めた場合、BIMソフトウェアを使うかどうかに関係なくプロジェクトのすべての関係者がそこに関与し、プロセスを構築することになる。情報が統合・統制され、正しい情報の元に計画的・効率的に作業が進むようになる。

 Information Management(IM)とは、情報を目的に応じて統制・運用・維持し、意思決定に活用可能な状態にすることである。BIM は、そのために用いられる共有デジタル表現と考えるとよい。

 日本では未だにBIMは何かと聞くと、RevitなどのBIMソフトウェアのこととか、BIMソフトウェアで作ったBIMモデルのことと言う方が多いが、それを導入して何をしたいのか何が変わるのか、今一度考えて欲しい。2次元CADがBIMソフトウェアに変ったところで、ツールが変わるだけの話で、従来のプロセスのまま、ツールを変えることでは、生産性向上などの取り組みにはつながらないだろう。関係者全員を含んだ業務プロセスの改善が必須なのは明白である。

 生産性向上などの成果に繋げたいと思うのであれば、今こそ勇気を持ってBIMという言葉を捨てよう。

 これは、BIMソフトウェアであるRevitなどの取り組みが不要だと言いたいわけではない。むしろ、情報マネジメントにおいては、Revitなどによる構造化された3次元モデルは、とても重要である。しかし、何度言っても、「3次元モデルを作ることがBIM」だと勘違いをしてしまうのであれば、一旦BIMという言葉を使うのをやめるべきだと言うことである。

 そして、改めて情報マネジメント(IM)という言葉を鍵に、ISO19650に向き合って頂きたい。

 日本の建設業界におけるBIMから情報マネジメントへの進化を促す取り組みとして、BIM Innovation HUB の活動を、2026年4月から開始している。情報マネジメントについての用語の解説や参考となる資料などを入れてゆくので、ぜひ参考にしてほしい。https://bimhub.jp/

伊藤久晴 (株式会社BIMプロセスイノベーション代表/応用技術株式会社 技術顧問)

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