「BIMのハードルを下げ、企業のDX推進を後押していきたい」。そう力を込めるのは、AIとの対話でBIMモデルを生成するChatBIMツール「ACIMUS(アキムス)」を提供するACIMUS(東京都千代田区)の菊池光貴代表だ。リリースから1年が経過し、導入に向けた相談は300社を超え、大手・準大手クラスのゼネコンとのPoC(概念検証)も動き出した。BIM+AIに真正面から向き合う同社の目線の先を追った。

東洋大学建築学科で意匠設計を専攻していた菊池氏が大学を休学し、AIに関連した海外の論文を読みあさったのは8年前。「そこから私のAIと建築の関係性を追求する日々が続いている」。図面の間取りを解析するAIのアプリケーションを独学で作り、フォトラクションの中島貴春代表を訪ねたことが出発点となった。「当時は建設系スタートアップの中で、フォトラクションだけがAIへのアプローチを模索していた」。AIで建設業を変えたいという思いを伝え、インターンシップとして働き始め、AI開発チームの発足に合わせ、リーダーに抜擢された。「フォトラクションに所属した5年間が私自身の土台を形成した」と振り返る。
退社後はフリーランスとして活動しながら、温めていたアイデアを形にしていった。「BIM導入が思うように進まない要因の1つには、BIMソフトを使いこなすまでに時間がかかる導入の壁がある。生成AIを使って誰もが簡単にBIMモデルをつくれるようになれば、BIMはもっと普及していく」。プロトタイプを完成させ、「これならいける」と手応えをつかんだタイミングで起業したのは、2024年9月のことだ。

複雑な操作が必要なBIMソフトが「heavyBIM」とすれば、チャットによる対話で簡単に3次元モデルを生成するACIMUSは「LiteBIM」と、菊池氏は例える。2025年3月にβ版をリリースし、同年6月から正式販売に乗り出した。この1年間で300社を超える企業から問い合わせがあった。JR東日本が主催するJR東日本スタートアップにも採択され、インフラ施設の維持管理に向けたツールしても評価を得た。
ゼネコンにとっては営業提案の段階でいかに早くBIMモデルを示すことができるかが受注競争力の1つになる。「提案の段階ではLOD(モデル詳細度)が高い必要はなく、概算コストを導き出せることが重要になってくる。BIMソフトにデータを引き継ぐつなぎ役として、当社はプロジェクトの初期段階を担うLiteBIMのポジションを確立していく」と強調する。
現在複数のゼネコン、インフラ会社、ハウスメーカーなどとPoC(概念検証)に取り組んでいる。業務プロセスの中にACIMUSがどのようにフィットするかを検証している段階だ。「当社には建設業界にBIMをしっかりと根付かせたいという目標を持っている。そのためにもBIMのハードルを下げ、一歩踏み出しやすくするきっかけとして、ACIMUSを軸にLiteBIMの考え方を普及させていきたい」
ACIMUSで作成したBIMモデルはIFC形式でエクスポートができ、RevitやArchicadなどとの連携が可能だ。「計画立案の初期段階にACIMUSを使い、その後にBIMソフトにつなげていく共存の関係性によってBIMの普及を後押ししていく。最初からBIMソフトを使っていく導入の壁を打開するきっかけにしたい」と思いを込める。

ユーザーは、ゼネコンや地域建設会社に加え、オフィス系内装工事会社、リフォームイノベーション会社、デベロッパー、ハウスメーカーなど多岐に渡る。インフラ事業者や施設管理を担う企業も導入を決めており、プロジェクトの川上段階だけでなく、維持管理段階への活用にも可能性を広げようとしている。社内へのBIM普及ツールとして活用を決めた建設会社があるように、営業部門への導入事例も出てきた。
JR東日本スタートアッププログラムでは、CADオペレーターが図面からBIMモデル化した場合と作業量を比較検証したところ、ACIMUSを使った場合には7割もの時短が実現した。専門のオペレーターでなくてもBIM化できる点で、人件費を含めたコスト比較では9割近くの削減効果が見いだせるという。
ACIMUSの標準ライセンス料金は 月 12,000円(税別)。「今はユーザー数を増やすよりも、ACIMUSを知ってもらい、LiteBIMの有効性を感じてもらうことに力を注いでいる」。企業とPoCを進める中で具現化した機能を組み込みながら、ACIMUSは日々進化している。年内には音声入力機能も追加する計画だ。
ユーザーの要望を受けて迅速に機能更新する開発力も、同社の強みだ。「小さな機能まで含めれば週2、3件のペースで新たな仕掛けを組み込んでいる」。BIM上で配管類を直感的に配置できる建築設備(MEP)系の機能はJR東日本との実証実験での成果を機能として具現化した。今年に入ってからは建物ボリュームに対してAIが最適な空間レイアウトを自動提案する「AI自動プランニング」や、ユーザーがアップロードした画像から3Dモデルを生成できる機能も追加した。

システム開発は現在3人体制。チャット機能部分とセキュリティ・インフラ部分にそれぞれ専任のエンジニアを置き、菊池氏が全体コントロールとフロント部分を担っている。「ハイペースで機能更新できているのも、システム開発の部分にAIを効果的に取り入れているからであり、従来の手法で開発するのであれば、おそらく20~30人の体制を確保する必要があったかもしれない」と付け加える。
菊池氏が描くのは、BIM+AIが「当たり前」になる世界だ。AIとの対話によって手軽にBIMモデルが形成されていく流れを作ることで「建設DXは一つ上のステージで進化していける」と確信している。LiteBIMの普及が日本のBIMステージをさらに押し上げる原動力になることができるか。ACIMUSの挑戦は始まったばかりだ。

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