「勝負の年」。DataLabsの田尻大介CEOは、そう決意をにじませる。満を持して市場投入したBIM/CIMモデル自動生成クラウドサービス「Framy(フレイミー)」は、国土交通省が2027年度から本格導入する3次元モデル契約図書化やBIM/CIM積算の流れを見据えたものだ。「これからは現場がモデルをつくる理由がより明確になってくる」。BIM/CIMデータ活用の流れが新たなステージに入ろうとする中で、同社は事業のアクセルを力強く踏み込もうとしている。
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)で衛星データ活用の部門に従事し、テラドローンでは3次元計測事業の責任者を務めるなど多彩な経歴をもつ田尻氏が、共同創業者の常信敦嗣取締役とDataLabsを設立したのは20年7月。当初は「ドローン測量などで日銭を稼ぎ、それを研究開発に充てる」日々が続いた。21年12月に国土交通省中部地方整備局から「配筋検査を簡易にする技術実証」に採択され、その成果が同社の代名詞となる3次元配筋検査システム「Modely(モデリー)」につながった。「商品ができてようやく会社が回り始めた」という田尻氏は、Modelyをリリースした23年4月10日を「第2の誕生日」と位置付けている。
3人一組で数時間かける配筋検査は、現場での作業後にオフィスに戻ってから報告書にまとめるプロセスが常態化している。ModelyはLiDAR付のiPadなどで対象物をスキャンし、その点群データを3次元モデルに変換した上で検査項目の実測値を自動で帳票化する。点群をモデル化することで、鉄筋ピッチや本数を正確に抽出でき、設計値と比べた合否判定もできる。モデル上でかぶり厚や重ね継手長も計測できるため、施工者と発注者間でクラウド上にデータを共有し、遠隔管理を可能にする点も特徴だ。

配筋検査システムは数多く商品化されているが、2次元ベースが中心となり、局所的にしか撮影できない課題があった。Modelyは後発の製品ではあるが、点群データから生成した鉄筋モデルを使った効率的な検査を実現できる優位性から、現場の活用効果が認められるNETIS-VE技術の登録を受けるなど、導入現場からの高い支持を得ている。
「ようやく事業が軌道に乗ってきた」。田尻氏は主軸のModelyがリリースから3年で導入企業が350社を超えたことへの手応えをつかんでいる。3Dインフラ補修工検査システム「Hatsuly」や3Dインフラ点検システム「Markly」もラインアップに加えており、現場のニーズに見合った製品基盤を着実に整えてきたことも背景にある。
BIM/CIM見据え「Framy」市場投入
「2026年度は当社にとっての勝負の年になる」。将来のBIM/CIMのあるべき姿を見据えた基盤システムとして開発を進めてきたFramyの市場投入は、まさに同社が次のステージを見据えて新たな一歩を踏み出す転換点になる。

田尻氏はテラドローン時代に3次元計測事業を指揮する中で「取得した点群データをBIM/CIMモデルに変換することの難しさ」を実感していた。「これを自動化できれば既存構造物のBIM/CIMモデル化が進展し、インフラの保全事業をデジタルツイン化できる」。創業前から思い描いていた構想がFramyとして形になった。
技術開発が動き出したのは24年1月のことだ。国土交通省の令和4年度第二次補正予算「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)」に採択され、デジタルツインを活用した公共構造物の維持管理手法の技術開発・実証を進めてきた。点群データや2次元CAD図面からIFC形式のBIM/CIMモデルをわずか数分で自動生成するFramyは、その研究成果を基盤にもつ。既に鉄道分野などの主要なインフラ事業者と精度検証を実行しており、鉄道高架橋や橋梁などでの実用性を確認済みだ。

鉄道事業者の中にはMMSを使った路線のデジタルツイン化を進めている動きがあるものの、費用が膨大になるため、Framyの活用に注目している。田尻氏は「取得した点群を1分ほどでIFCの3次元モデルに作成でき、そこに属性情報などを入れることで点検の統合管理が可能になる。点群だけでなく図面データも同様にアップロードできる点もFramyの強み」と付け加える。
国土交通省ではBIM/CIMの原則適用が4年目に入った。27年度からは3次元モデルの契約図書化に加え、数量データと積算システムを連携するBIM/CIM積算も本格導入になる。受注者の3次元モデル作成費用は発注者が負担する流れになるため、一気にモデル化のニーズが高まる可能性がある。
「3次元をIFCにして次の工程に引き継ぐ流れが今後重要になってくる」。同社が目指すのは測量から設計、施工、維持管理(点検)までの流れの中で、Framyが3次元納品物の「自動生成工場」として、受発注者をつなぐ存在になっていくことだ。「当社は各工程を横串で支える存在として活動していきたい。特に3次元モデルの契約図書化ではIFCへの変換ツールとしてFramyを活用してもらいたい」と力を込める。

その先には積算データとの連携も視野に入れている。3次元モデルには体積や数量や寸法などが入っていることから、そこからXMLのテキストファイルを出して積算ソフトなどに連携させることで「3次元モデルが工事原価を出す手段として存在感を示せる。歩掛かりとの紐付けができれば、受注者にとっての経営ツールとしても進化させることができる」と手応えをつかんでいる。
BIM/CIMデータ活用で重要になるのは「属性情報の検索性を高め、次なる業務に引き継いでいくこと」と焦点を絞り込む。国土交通省では27年度から3次元モデルの契約図書化やBIM/CIM積算が本格導入される。「受注者がモデルをつくる理由が明確になり、調査から設計、施工、維持管理へとつながるBIM/CIMのスパイラルが回り始める」と先を見据えている。
「3次元データで建設業を変革する」というミッションを掲げる同社の挑戦は、Framyの投入によって、新たなフェーズに入ろうとしている。

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