鹿島建設は、エッジコンピューティング技術を活用して建物設備をAIで最適制御するシステム「K-BOX」を開発した。空調機などの設備機器に小型エッジコンピュータを後付けするだけで導入できることが特徴で、実証では空調エネルギー消費量を約3割削減する効果を確認した。既存建物への導入も可能で、建物のスマート化を加速する技術として注目される。

近年、建物の運用データを活用して設備を最適制御するスマートビルへの取り組みが広がっているが、従来のシステムはクラウド経由でデータを収集・分析するケースが多く、リアルタイム性やカスタマイズ性、情報セキュリティの面で課題があった。特に既存ビルでは設備機器をクラウドと接続するための通信環境整備やセキュリティ対策が必要となり、導入コストや改修工事が障壁となっていた。

K-BOXは、基本ユニットと拡張ユニットの2つのシステムで構成しており、基本ユニットは外気温や室温、湿度、設備の運転情報などを収集、拡張ユニットに搭載されたAIがそれらのデータを解析し、室内環境と消費エネルギーのバランスを考慮しながら、最適な運転条件を算出して設備を自動制御する。気象予報サービスとの連携にも対応しており、天候変化を見越した先読み制御も可能だ。
実証では同社の自社施設に設置した空調機(エアハンドリングユニット)に適用し、AIが1時間ごとに快適性を維持できる温湿度範囲内で最も省エネルギーとなる条件を探索し、自動制御を行った。従来運転と比較して中間期で28%、夏季で32%、冬季で33%のエネルギー削減効果を確認し、年間を通じて約3割の省エネルギー化が可能であることもわかったという。
注目されるのは、導入のしやすさだ。K-BOXは既存の汎用設備機器に後付けでき、設備本体の改造を必要としない。オフィスビルだけでなく工場や住宅など幅広い用途に対応できるほか、フロア単位やテナント単位で制御内容を変更することも可能としている。システムに障害が発生した場合でも、自動的に従来運転へ切り替わるフェイルセーフ機能を備えており、設備運用の安全性にも配慮している。
建設DXはこれまで設計や施工の効率化が中心だったが、近年は建物完成後の運用データを活用し、ライフサイクル全体で価値を創出する方向へ進化しつつある。特にBIMやデジタルツインの普及によって、建物運用データと設計・施工データを連携させる取り組みが加速している。K-BOXは設備制御という運用フェーズにAIを直接組み込むソリューションとして注目される
同社は今後、空調制御にとどまらず、建物利用者の快適性やウェルネス向上に寄与する機能開発を進める方針だ。