「設計を軸にしたBIMの展開が新たな領域に広がり始めた」。そう手応えを口にするのはixrea(鹿児島市)の吉田浩司代表取締役だ。グラフィソフトのBIMソフト『Archicad』を軸に意匠設計事務所として精力的に活動する中で、近年はBIMコンサル活動の業績が本業の設計業務と同じくらいに成長してきた。3年前に「感動空間」を創造するサンタスサンエフシーホールディングス(大阪市堺市)の一員となったことも「活動の幅を広げる」きっかけになっている。

コロナ禍を通じて同社の立ち位置は徐々に変わり始めた。意匠設計者としてBIMをフル活用する中で、構造設計や設備設計へのBIMデータ連携が思うように進まず、施工段階のBIMデータ活用も一向に進展しない状況に直面する中で「BIMを普及させなければ、この現状を変えることができない」という思いを強くし、日本建築士会連合会などを通じたBIM推進の対外的な活動にも力を注いでいる。
近年は建設会社や設計事務所からBIM導入コンサルティングを求められるケースも多くなった。BIMの基礎から教えてほしいという要求だけでなく、モデリングや教育のあり方を求める依頼も増え、新たな柱としてBIMコンサルティング事業が成長してきた。2024年にはモデリングの協力先としてフィリピンの3Dポケット社との連携もスタートした。

サンタスサンエフシーホールディングスへの参画も転換点の一つとなった。グループは内装、看板、特殊造形などの専門会社で構成しており、「ものづくりにデジタルデータをつないでほしい」というグループの思いに賛同し参加を決めた。テーマパーク内に樹木の造形物を設置するケースではBIMモデルを使った鉄骨の組み方をノウハウとして提供するなど「当社がBIMを通じて蓄積してきたデータ連携のノウハウをグループ内に提供する」役割も担っている。内装分野ではBIM導入の流れが広がりつつあり、グループ内でのBIM連携も今後拡大する見通しだ。
本業の設計業務では、介護施設や葬祭場、障害者施設、店舗など民間プロジェクトを中心に精力的な活動を続ける中で、近年は受注プロジェクトが大型化しているゼネコンへの設計協力も増え、ArchicadによるBIMの強みが仕事の幅を広げている。25年4月には東京拠点も開設し、鹿児島の本社を軸に東京、札幌、宮城、京都にもサテライトオフィスを構える体制を確立した。
「実は、自作でArchicadアドインの開発も進めている」と、吉田氏は明かす。Archicadに組み込まれているPython APIを使い、確認申請の法規チェック機能などの開発も進めている。「私の知識ではPythonコードを書くことができなかったが、AIを活用することで思い描いたツール開発ができるようになった」と強調する。

4月から社内の情報共有プラットフォームとして独自のCDE(共通データ環境)も吉田氏自身が2週間ほどで構築した。社内の業務進捗に加え、図面類を管理しているオンラインストレージサービスとも連携を図った。今後はArchicadの共同作業プラットフォーム「BIMcloud」との連携も計画中で、契約関連の書類を自動作成できるような機能も付加していく予定だ。「ニーズがあれば当社と同じような規模の設計事務所にも提供していければ」とも考えている。
動き出したBIM図面審査にも迅速な対応を見せる。意匠設計を手がける木造2階建て延べ約500㎡の施設を対象に、Archicadで構造部材まで細かくモデル化する高尾設計一級建築士事務所(福岡県中間市)と連携する形で「近く申請に乗り出す」予定だ。独自にBIM図面審査用のテンプレートも作成しており、「当社が意匠設計を手がける案件ではできるだけBIM図面審査に対応していきたい」と強調する。
吉田氏が目指すのは企画から設計、施工、維持管理まで一貫してデータがつながるBIMの実現だ。「AIの活用によってわれわれ設計者自身でも安価にシステム開発ができるようになった。今後はIFCデータ活用によるopenBIMの流れが一気に広がり、Archicadを使いこなす当社の強みをより発揮できる時代になる」としっかりと先を見据えている。
この記事は 建設通信新聞 特集「BIM2026」からの転載です